第20話 パーティ離散

 などと思案していると、ヴィヴァーチェがセーレに飛び掛かった。


 当然のごとく蹴りを食らい吹き飛ばされたが、セーレは何かを察知したかのように、レイカさんへの攻撃をやめる。


「何やってる、ヴィヴァーチェ!」


 俺は思わず叫んでしまう。


「ヴィヴァーチェなんて呼ばれているのね、あの剣が。私を殺した、あの剣が」


 セーレはヴィヴァーチェの髪を掴み、引き寄せる。


「痛い痛い! 助けて! アレス様!」


「とぼけるな! 私の心臓を抉り出したあの剣が、なんで魂を持って人間のように振舞っている? それが許せないから、あのとき封印したというのに」


 待て。


 今ヴィヴァーチェは人間の姿だ。なぜその正体が剣だと分かった?


 それに、『私を殺した剣』と呼んでいた。


 まさか本当に伝説通り、セーレは雨乞いのため生贄に捧げられた少女の霊なのか?


「何のことか分かりません! 助けて」


「ヴィヴァーチェに触るな」


 俺は剣を振るい、セーレの腕を斬り落とさんとする。だが、避けられた。代わりにヴィヴァーチェは解放され、地面に崩れ落ちる。


「うわあああん、アレス様ぁ!」


 ヴィヴァーチェが縋りついてくるが、俺は敢えてそのままにする。


「大丈夫だ。ヴィヴァーチェ。全員生きて、また集まろう」


「な、何をする気で……」


「【城塞召喚】・解除」


 俺は【エアリアル・フォートレス】を収納する。突然床が抜け、全員外に放り出される。


 ちょうど雨雲を抜けたところなので、外に出ても大丈夫だと判断したまでだ。

 

 レイカさんでも敵わない相手なのだ。このままでは全滅すると判断した。


 レイカさんもゼストさんもボンクラではない。必ず共に魔王を討伐できる。

 

 そう信じてのことだ。


「なっ、アレスくん!」


 乱気流に流され、俺たち一派は散り散りになった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る