第18話 雨の魔女襲来

 レイカさんは全員屋内にいることを確認すると、要塞をひときわ分厚い雲の中に突入させた。


「すごい! 誰も寄せ付けなかった魔王領に、こうして侵入することが出来るだなんて! さすがです!」


 俺は感嘆の言葉を漏らしてしまうが、レイカさんはキョトンとしている。


「いや、どう考えてもすごいのはアレスくんのスキルの方だろう。千年後の最先端技術で作られた兵器を召喚したんだからな」


「ハハ、ありがとうございます。もう空中要塞に乗れたんですし、魔王討伐しなくてもこの世界で自由に暮らせません?」


「そうもいかない。私は魔王アドラメレクを倒してもとの時代に戻りたいし、なにより【エアリアル・フォートレス】の連続航行時間は8時間だ。燃料はこの時代では手に入らないし、短期決戦でケリをつけないといけない」


 そんな事情があったのか。


 レイカさんのことは心配だ。だが、俺としても、将来の障害になるであろう魔王と雨の魔女は潰しておきたい。


「さ、もう雨雲を抜けるよ」


 雲を抜けると、無数の浮遊島が乱立していた。それぞれが緑豊かで、地上へ滝を垂れ流している島もある。


 魔王領はこんな理想郷みたいなところだったのか。


「なんか、楽しい旅になりそうですね」


「いやいや、これから魔王討伐に行くんだぜ? 道程を楽しんでどうする」


 レイカさんがそんなツッコミを入れた次の瞬間、操作板のある部屋のドアがぶち抜かれた。かなりの厚さのあるアダマンタイト鋼の扉が宙を舞い、床に激突する。


「アダマンタイト製の要塞となると厄介だが、それ以外の部品を腐食させてしまえばどうということはない」


「あなたは?」


 濃い青色のローブを纏った若い女は、傘を折り畳み、名乗る。


「ユーグラム・セーレ。君たち凡俗には、【雨の魔女】と呼ばれている」

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