第二章 魔王城攻略篇

第17話 エアリアル・フォートレス

「追いつきました!」


 一時間ほど走ると、山脈の向こうで待っていてくれたレイカさんたちが見えた。


「お疲れ、少年。うまくいったようだな」


「ま、ヨコハマ要塞なんて奥の手まで用意したんだから、勝って当然だね」


 ゼストさんとレイカさんが声をかけてくれた。


「ありがとうございます。お二人のおかげでどうにか勝てました!」


「アレス様! 無事ですか? お怪我とかないですか?」


 弾丸のように飛んできたヴィヴァーチェが抱きついてくる。


「大丈夫だ。それとくっつきすぎだ。離れてくれ」


「えへへ、でもこうしていたいんです! アレス様が過去を清算できたこと、私も嬉しいので」


 過去の清算か。


 面白いことを言うと思ったが、まさにその通りだ。俺はルーラオム家との因縁にケリをつけてきた。自由になるため、鎖を一つ断ち切ってきたようなものだ。


「さて。俺はもう寝たいんだが。さっきのヨコハマ要塞を出してくれ」


「あぁそうですよね。ゼストさんには【記憶共有】まで使って頂きましたし、すぐに召喚します!」


 それからゼストさんはいち早くベッドを見つけ出し、眠ってしまった。


「このヨコハマ要塞、和国の防衛の要と呼ばれた秘密兵器でね。隠し機能がいくつかあるの」


 なぜレイカさんがそんなことを知っているのか気になったが、今は触れないでおこう。


「ここを、こうするとね」


 レイカさんはガラスの石板のようなものを操作する。すると、要塞全体が揺れた。


「な、何事です?」


「これ、空中要塞にもなるのよ。和国民はこれを【エアリアル・フォートレス】と呼んでいてね。上空を通過するたびに拝んでいたものなんだよ」


 そんな神格化されていた建物なのか。


 未来の和国の技術、すげえな。


 独特の浮遊感に身がすくむ思いがするが、新しい拠点が空中要塞とは幸先がいい。


 これなら酸の雨の中も通過できそうだ。

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