第15話 メドロックへのリベンジ

「着いたぞ。ダンジョンの入り口だ」


 ゼストさんはウラニアを急降下させ、俺たちは山脈の麓に降り立った。


「さて、久々のダンジョン攻略! 張り切っていきま……」


「【星穿ち】」


 刹那、天空竜ウラニアの頭が弾け飛んだ。ウラニアはそのまま地面に倒れ込む。幸い、頭部はまだ繋がっているし、原形もとどめている。脳震盪を起こしているだけのようだ。


「貴様……俺のドラゴンによくも!」


 ゼストさんの見据える先には、あの男がいた。


 メドロック・ルーラオムだ。


「黙れ。薄汚い冒険者は口を利くな。それよりアレス。お前が住んでいたという城塞はどこだ? 場所を教えれば、少なくともカルネス王国の市民権だけは与えてやる。ルーラオム家の小間使いとして使ってやってもいい」


 どこまでも上から目線な男だ。


「断る。教えない。俺がお前の指図を受けることなど、二度とない」


 俺がそう言い放つと、メドロック顔を歪めた。


「『お前』だと? 誰のことだ? アレス?」


「メドロック。お前のことだよ。お前以外に誰がいる?」


 もう俺は、こいつのことを兄だとは思わない。名前で呼ぶ価値すらない。


「そうか。ならばここで死ね。【星穿ち・弐の段】」


 メドロックは弓を構える。


 以前はレイカさんに弾いてもらったが、もう自分一人でどうにかする。


「【城塞召喚】アレグレット城!」


 次の瞬間、メドロックの眼前に三重の城壁が現れた。


 俺はメドロックが怯んだ隙に横へ飛び、どうにか矢を避けた。


 矢は容易く城壁を破壊し、ダンジョンの入り口に直撃する。次いで、矢は轟音を立てて山脈を貫いた。


 これは、攻略の手間が省けたな。もう向こう側へ通じる道が開けてしまった。


「命乞いをするなら今のうちだぞ? 向こう側に逃げれば、魔王領だ。俺たちはもう追跡できない。だが、これ以上私の視界に入り続けるようなら、叩き斬る」


「俺は逃げない。お前を倒すまではな」


「アレスくん!」


 レイカさんは俺のもとに駆け寄ってくる。


「すいませんレイカさん。先に行っててください」


「大丈夫なのか?」


「えぇ、俺はこんなところで死ぬつもりはありません」


「信じるよ、君の言葉。山脈の向こうで会おう!」


 レイカさんはポンと肩を叩いて去っていった。


「アレス様! 私もお側にいます!」


 ヴィヴァーチェが縋りついてくるが、俺は引き剥がした。


「いいからレイカさんと行くんだ。また人質にとられても困るしな」


「うぅ、ですが心配です。アレス様、絶対に私のところへ戻って来てくださいね!」


「もちろんそのつもりだ」


 ヴィヴァーチェもレイカさんの後を追う。


「少年。ここが勝負どころだな。例の策の準備は済んでいる。存分に奴をぶちのめしてくれ! ウラニアの分まで!」


「はい! 行ってきます!」


 ゼストさんと固い握手を交わし、俺はメドロックの方へ向き直る。

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