第12話 城が欲しいならくれてやる

「追跡や監視、索敵のスキル持ちなんてごまんといる。ここが見つかってもおかしくない」


 俺の心を読んだかのように、レイカさんが告げた。


「少年のスキルは便利だが目立ちすぎる。いくら移動を続けていてもいずれは攻め込まれる。ここで示威行為でもしておくのが得策だろうよ」


 ゼストさんはそんなアドバイスをしてくれた。


 確かに、ここでアレグレット城を収納して逃げ回ることもできるが、それでは後手に回り続けることになる。


「分かりました。どこの国の勢力か分かりませんが、戦いましょう」


「その意気だ、アレスくん。で、ゼスト。もう空から索敵はさせているんだよな?」


 レイカさんはあっという間に戦闘モードに入った。


「あぁ。天空龍ウラニアと視覚共有してみたんだが、小規模な調査隊だ。グラム帝国の国旗を掲げている。あの旗を掲げてアレグレット城の所有を宣言するつもりだろうな」


 グラム帝国か。スキルの質はともかく、あそこはとにかく兵士の数が多い。つまりそれだけ多種多様なスキル持ちがいる。見つかってもおかしくないわけだ。


「俺が行きます!」


 二度目の揺れが城を襲うと同時に、俺はアレグレット城を飛び出した。


「出てきたか。これで砲撃スキルを使う手間も省けた」


 帝国軍のリーダーらしき人物が近づいてくる。さっきからの揺れはこいつのスキルのせいか。


「全員かかれ」


 抜剣した兵士たちが飛び掛かってくる。数は6か。ならば問題ない。一撃で片づける。


「剣技【瞬霞春嵐】」


 俺はルーラオム家秘伝の剣技で、全員分の剣を破壊した。全員驚き、尻餅をついている。


 意外と軟弱なんだな。


 剣を失っても、殴りかかってくるかと思ったのだが。


「待て、それ以上動くな!」


 振り返ると、なんとリーダーらしき帝国兵がヴィヴァーチェを人質にとっていた。なんでついてきたんだ。


「こいつがどうなってもいいのか? ルーラオム家の落ちこぼれめ」


「いいからそいつを離せ。さもなくば、お前の首を斬り落とさなきゃならなくなる」


 俺は本気で告げる。脅しではない。


「フッ、そんな偉そうな口を利いて良いのか? 【ゴミスキル】持ちが。知っているぞ。お前のスキルはゴミ屋敷の召喚! 取るに足らないスキルだとな!」


 もう他国にまで知れ渡っていたのか。


 だが、誤情報ならいくらでも流してくれて構わない。


「対して俺の砲撃スキルは、辺り一帯を吹き飛ばせる。ここでお前とこの女と、心中するころだってできるんだぜ? それが嫌なら城を明け渡しな」


「そうか。そんなにあの城が欲しいか」


「あぁ欲しいね」


「そんなに欲しいならくれてやる。悪かった、降参だ」


 俺は剣を落とし、跪く。


「それでいい。おいお前ら、さっさと城を制圧しろ!」


 ヴィヴァーチェは解放された。そこで俺はスキルを発動し、城を収納した。


「な、消え……」


「もう一度言おう。そんなに欲しいならくれてやる」


 俺はヴィヴァーチェを抱え、思い切り横に飛んだ。


 すると、リーダーらしき帝国兵がいた場所には城壁が顕現し、奴は壁に埋まっていた。


「くそ、何が起きた? ここから出せ!」


「出さない。お前らから情報を引き出すまではな。それと、ヴィヴァーチェへの謝罪はどうした?」


「へ? ヴィヴァーチェ?」


「そこの少女だ。人質に取ったこと謝罪しろ!」


「すいませんでした!」


 俺が剣の切っ先を向けて脅すと、奴はあっさりと降参した。

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