第11話 初めての実戦

 翌朝。


 俺たちは魔王領との国境付近に向けて、遂に出発した。


「まぁ移動要塞を持ってるみたいなものだよ。いざとなれば避難すればいいんだ。そんなに恐れることはない。アレスくんの実力なら、緩衝地帯のモンスターなんて難なく倒せる」


 レイカさんはそう励ましてくれたが、やはり初めての実戦は緊張する。


「ブラックウルフ二頭か」


 眼前のモンスターを見据える。片方は口に血がついている。よほど獰猛らしい。


 落ち着け。


 ルーラオム家の次男として、俺はそれなりに鍛錬してきた。その成果を見せるときだ。


 右の一匹が爪で斬りかかってくるが、俺は剣でいなし、脇腹に強烈な蹴りを入れる。次いで、怯んだ隙に首を刈り取った。


 二頭目が背後から襲いかかってきたが、振り向きざまに両眼を斬り、視界を塞いだ。同じように首を落とし、戦闘終了となった。


「なかなかできるじゃないか。これならダンジョン攻略も安心だ。あそこはゼストのドラゴンも入り込めない。私と君の剣技だけが頼りになる」


「そうですね」


 だが、考えてしまう。俺もメドロックの【星穿ち】のように強力なスキルに目覚めていれば、ダンジョンとてまるごとぶち抜いて前に進めただろう。


 いくら未来の建物を召喚できるとはいえ、所詮は一族の恥さらしなのだ。


「そろそろ休憩しよう。アレスくん、アレグレット城の召喚を頼む」


 レイカさんに頼まれ召喚し、それぞれがベッドに飛び込んだ。


 ヴィヴァーチェはなぜか俺と一緒のベッドに潜り込んできた。


「なぜお前が一緒に……年頃の男女が同衾するのは、色々と問題があると思うのだが」


「私は少女ではなく剣です。なのでお気になさらず。もっとも、アレス様がお望みならばいかがわしいことも……」


「やめてくれ」


「アハハ! 今のは大げさに言い過ぎました。すみません」


 だから誇張じゃなくて嘘なんだよな。


 そんなくだらないやり取りをしていると、突然城が揺れた。


「アレス様、これは……」


「まさか、もう勘付かれた?」


 緩衝地帯は、カルネス王国、グラム帝国、魔王国の国境となっている。当然見張りの兵士もいるから、突然城が一つ増えれば、何らかの動きはあると思っていた。


 だが、こっちは召喚と収納を繰り返しながら移動し続けているんだぞ?


 どうやって追跡したんだ? そういうスキル持ちでもいたのだろうか。

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