第2話 プレゼント

上手く話せるかな……。

そんなことを考えながら授業を聞いていた。


「橋田!橋田!話聞いとるか?」


その言葉で我に帰る。


「ごめんなさい。聞いてませんでした」


「ちゃんと聞いとけよ。ここの三角形は……」


そんなことを言われても耳に入るはずがない。

自分は1回もデートをしたことがない。

女の子と話したことすら無いのに……。


キーンコーンカーンコーン


チャイムが鳴り、やっと4時間目が終わった。

今日は真田さんと

弁当を食べる約束をしていた。

これから付き合うのだから

少しは仲良くしないと……。

僕は急いで弁当を持って屋上へと向かった。

もう待ってるかな……。

屋上への扉を開けた瞬間、

彼女は柵の向こう側に立っていた。


「お前なんか死んでも誰も悲しまないよ」


女たちが彼女を囲んで盛り上がっていた。

このままじゃ……。でも助けたら……。

火種が自分に来るのは分かっていた。

それでも足は勝手に彼女の方に向かっていた。


「やめてあげてください」


「なんだ、お前かよ」


「お前、罰ゲームで付き合ってるからって

調子乗るなよ!」


バン


頬を殴って女たちは帰って行った。

これで助かった。


「あの時と同じように助けてくれて

ありがとうございます」


「あの時?」


「やっぱり覚えてないですよね……」


彼女は語ってくれた。僕との出会いを。





2年前、まだ高校1年生の入学式から1週間が経った頃、

僕がいつも通り、教室に向かう途中、


「助けてください」


誰かの悲鳴が聞こえたので自分は急いでその声のする方に向かった。


「早く、このバケツの水を頭から被れよ」


「できません……」


その姿を見た僕は彼女の元に駆け出し、

バケツの水を頭から被った。


「何やってるの?」


「もう……やめてあげてください」


女たちは速やかに帰って行った。


「ありがとうございます」


その日からだろうか?

僕がいじめを受けるようになったのは……。





「すいませんでした。私のせいで……」


「謝らないでください。僕は大丈夫です。

それより早く食べましょう」


「はい……」


それから無言の時間が10分は続いた。

これから何を話せばいいんだろう?

何か……無いかな?


「あの……橋田君はクリスマス

欲しいものあるの?」 


彼女から僕に話しかけてくれた。

欲しいものか……。何だろうな……。


「欲しいものは別に無いな」


「本当に何も無いの?」


「まあ強いて言うなら友達かな」


「友達いないの?」


「うん」


「一緒だね」


やっぱり真田さんとはどこか

息が合いそうな気がした。


「真田さんは?」


「私は……熊のぬいぐるみかな」


「可愛らしいね」


「ありがとう」


ここで話は終わり、


「今日はありがとう」とだけ言って

僕は教室に戻った。




今日はありがとう

                こちらこそ

明日、遊園地に行きませんか?

               分かりました



このLINEの結果、

明日遊園地に行くことになった。

正真正銘の初デートだ。

気持ちが昂ってきた。

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