クリスマスプレゼント

緑のキツネ

第1話 王様ゲーム

「王様だれ〜だ?」


「あ、また俺だ!!

じゃあ……2番と4番がハグする」


僕は祈りながら目を開けて数字を見た。


――4――


またか……。2番は誰だろう?


「2番と4番手を挙げて」


僕は嫌々小さく手を挙げた。

その目の前で真田さんが手を挙げていた。


「早く、早く……」


真田さんが僕の近くにやってきてハグをしてくれた。

心臓の音が微かに聞こえた気がした。

耳元で


「ごめん……」


そう呟きながらハグを続けた。


「何で謝るの?」


その質問には答えず、ハグを終えて席に戻った。

男たちと女たちの盛り上がりは最高潮に達していた。


「良いねー。次を最後にしよう」


みんなが一斉に木の棒を引いていく。

僕も早く引こうと思ったが、気づけば1本になっていた。

木の棒を持っている人が数字を

見てクスクスと笑っていた。

この王様ゲームに

参加する前から気づいていた。

このゲームは八百長だと……。





僕は高校に入って友達が1人もいなかった。

そしてついたあだ名が『ぼっち』だった。

次第にいじめを受けるようになり、

机の落書きや教科書が

ゴミ箱に捨てられたり……。

そんな中、僕をいじめていた男3人、女2人に


「王様ゲームをしよう」


と誘われてしまった。

断れば命が無いかもしれない。

そう思い、参加してしまった。





「王様誰〜だ?」


「あ、今度は私だ……」


名前も知らない女が手を挙げた……。

その女は嬉しそうだった?


「じゃあ……1番と5番がクリスマスの日にデートする」


デート!?そんなの無理だよ……。

木の棒を見てみると


――1――


やっぱり僕か……。

そして相手は案の定、真田さんだった。

真田さんも僕と同じでいじめを受けていて

誘われたんだろう。


「いや……私には……無理です」


「私は女王様だから命令には従わないと……」


「分かりました……」


「あと、クリスマスまであと1ヶ月あるから

デートに1回は必ず行き、

証拠写真をLINEグループに送る事ね」


「分かりました……」


真田さんの目には涙が出ていた。

僕は申し訳なさで心が満たされてしまった。

みんなが帰った後、LINEを交換した。

それから1週間何も話さなかった。

そんなある日、一件のラインが来た。


明日、一緒にお昼を食べませんか?


                良いですよ

屋上で待ってます


その日は緊張し過ぎて眠れなかった。

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