この世に出なかった言葉、結婚の条件、神の顕現。


【この小説は、性的な表現があったため、コンプライアンスに準じる形で修正を加えました】


自分でも、妥協したのだな、と思う。【土俵】に眠るさえない男を見て、そう思う。適齢期というモノもあるのかも知れない。ただ、結婚の市場は、想像以上に過酷で、能力が高ければ、容姿がよければ、お金があれば…そのいくらかを満たしていれば、結婚できるほど甘くなかった。


自分が高いスペックの人間とは思えないが、出合う人の中で、尊敬できる人・見下す人の数で言えば、後者の方が多い。学歴とか否定する一方で『比の概念』を持ってない人は、それなりに見下すことができる。可愛くても、この人はアホだ。


好きな人もいた。相手も好きだったと思う。しかし、その人とは結婚できなかった。何が悪かったか分からない。ただ、この人が最後の人ではない、という慢心があったのかも知れない。そして、世の中の男は、思った以上に見る目がなかった…という言い方は僅かな自尊心を守ろうとしすぎか。


結局、結婚という意味では、「自分のことを愛してくれる」ということが一番大事なのかも知れない。めっきりハゲてきた、【土俵の上で稽古する】男を見て思う。出合って数年の間にみるみるとハゲて、結婚する前に、ハゲ散らかしていたから、これは詐欺ではなく、不良物件なのだと思う。


一緒に住むには、条件が悪すぎる物件。見下すタイプの人間だけど、それでも愛してくれるというのは、大事なのかもしれない。このハゲの良いところはそこしかないし、私が欲したモノを与えてくれるのは、この男しかいなかったのだ。


天井の上から、声がした。


「願いをかなえてやろう。そのオトコの魂を捧げることで、お前がかつて愛した男とお前は結婚させてやろう。男は今、お前よりも5歳年下の女と結婚して、子どもも一人いるが、そのあたりは因果律を調節して全て『なかった』ことにする。気を病むことはない。もしも、考える時間が必要なら、明け方まで…。」


「捧げてください!すぐに捧げてください!むしろ、明日の朝になるのが待ち遠しいです!すぐにお願いします!」


後に聞いた話では、神の言葉に食い気味で答えたのは、私がはじめてだったらしい。明日の朝には、隣に広がる荒野が森林になっている。もしも、その物件も荒野だとしても、豊穣なる大地。他の部分がきっと補ってくれる。だって、私は彼のことを愛しているのだから。


※はてなグループ(サービス終了)で「DATE: 09/17/2013」に公開されてました。ああー……こりゃ、当時、失恋した思い出か何かを引きずってるな、こりゃ。当時、私を悩ませた人間模様がモチーフになっているので、笑えない奴です。


【2021年12月13日にカクヨム運営により公開停止となりました】

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