第5話
考えるというのは、悪霊を切ることによる
期末考査や学校行事など重要な出来事に
そうして決行は明後日の土曜日午後一時に決まった。相沢の所属するサッカー部の練習試合が終わった後、悪霊の魂を切る。相沢が寝込むまでの過程を世界がどのように上手く処理することになるのか武蔵に意見を求めてみたが、武蔵
さて、俺も計画しなければならない。悪霊がいじめの原因だと聞かされたときは取り乱してしまったが、時間を置いた今では、それはそれで「悪くない」気がしていた。できれば武蔵とはこれからも友好な関係を築いていきたいものだが、万が一ということもある。覚悟はしておかなければならない。
――武蔵に殺される覚悟を。
土曜日の昼下がり。俺はグラウンド横の
武蔵はと言えば、俺の隣で立って練習試合を眺めていた。「今のはシュートだろう」、「パスだ、パス」など試合観戦に熱くなっており、暑さを感じている様子はなかった。肌に
グラウンドから一際大きな歓声が聞こえた。目をやると、相沢がチームメイトから
武蔵の姿が視えているので、相沢に憑いている悪霊も視えるのではと思っていたが、全く視えなかった。武蔵にその話をすると、「波長の違いだな。生者が知覚できるのは、波長の近い幽霊に限られる。お主が我を視認できるのは、互いの波長が近いからだ。不本意ではあるが、相性と言い換えてもいい。お主とあの悪霊の相性がよくないため、お主には視えない」とのことだった。考えてみれば、相沢のいじめの
試合終了のホイッスルが鳴る。「相沢、中々上手いではないか」と腕を組む武蔵を見て、ひょっとすると相沢に
グラウンドを突っ切る武蔵とは対照的に、俺は物陰に身を隠しながらベンチへと近づいていく。「おい、何をしている。さっさと来い」という武蔵の声に急かされながら、ベンチ近くの茂みに辿り着いた。
「もっと堂々としていればいいだろう。お主もここの生徒なのだから」
相沢はドヤ顔で「見たかよ、最後の俺のシュート。キレッキレだったろ」とチームメイトに
それは
武蔵と視線を交わし、相沢の後をつける。
自販機の周りに人気はなかった。
事は一瞬。
風のごとく接近した武蔵は、腰の刀に手を添えると、流れるような一太刀を
武蔵の一太刀が不気味に黒く光る魂を真っ二つに切り
糸が切れたように倒れる相沢を片腕で受け止めると、武蔵はその体を近くのベンチに寝かせた。
武蔵のことが視えない人には今の光景がどのように映っていたのだろうと、どうでもいいことを考えながら、横たわる相沢に近づく。
息はしているようだ。軽い意識障害みたいなものだろうか。
「念のために救急車を呼んでくれないか」
確かに万が一のことがあっては大変だ。
携帯を取り出して、「一、一、――」と番号をプッシュしていると、「おいおい、今日はどうしたんだよ。もしかして、練習?」と声が飛んできた。見れば、いつも相沢とつるんでいたサッカー部の二人が笑いながらこちらに近づいてくる。
これはまずい。
ベンチの背が
相沢は死んでおらず数日後に目を覚ますことが唯一の救いと言ってもよかったが、いずれにせよ疑いの目が向けられ、俺が不利益を被るのは
何とか切り抜ける方法はないだろうか。
周囲に視線を走らせるが、
「相沢じゃん、いたのかよ――おい、待て。どこ行くんだよ」
二人は校舎の陰に消えた武蔵と相沢の後を追っていった。彼らの目には相沢が一人で走っていくように映ったのだろう。
しばらくすると、校舎の上から武蔵が飛び降りてきた。
「彼は置いてきた。あとは二人が連絡してくれるだろう」
……幽霊ってほんと便利だな。
やっぱり、ほんのちょっとだけ、彼の体質を
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