第3話
「生者の
俺の頼みは、
ぎろりと
「……お主こそが人でなしだ」と言って、武蔵は再び本に目を落とした。
俺が人でなしだって?
以前「切れるのは死者の魂だけなのか?」と聞いたときに首を横に振っていたから頼んでいるわけだが、先ほどから
仕方がないので、勝手に話し始めることにした。
「クラスでいじめられている奴がいるんだ。そいつに対するいじめがかなり悪質で、教科書をビリビリに破いてゴミ箱に投げ捨てたり、毎日体育館裏に呼び出して集団リンチしたり――ほんと見ていられない。いじめを
俺は正義の味方。悪に
「ならば、お主が自らの手で殺せばいい」
「そんなことをしたら捕まっちまうだろうが。中学生だから
「……本当に、人の心を持たぬようだな。人の道から外れているからこそ、
そう言って、彼は笑った。
「しかし、これからも読書の
閉じた本を机の上に置くと、彼は立ち上がる。
彼は別に図書館の外に出られない
思い通りに事が進んでいるとは言えないが、悪くない
人生、悪くないだけで十分だ。
文字通り宙に浮かんで図書館を出ていく武蔵を玄関ホールまで見送って、俺は先ほどまで彼が座っていた席に戻った。
机の上にあったはずの本はすでに消えていた。
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