67. Impulse buying 後編
昼は
体を動かすことで健康的な肉体を得られ、飲み会でコミュ力も格段にアップした。
なんて素晴らしいんだ、肉体労働ってやつは。
「って、違うだろ!俺達は情報収集のために、マインに立ち寄ったんだ!ダンジョンは?異世界人の作った兵器は?防衛大臣の野望を打ち砕くって俺の決意どこいった」
「あはは、手に職つけちゃったね。これなら万が一、カラーズに帰れなくなっても、二人で食べていけるや」
駆け落ちした恋人かよ、返答に困ること言いやがって。
しかし、これだけの大都市で、人手が足りないってのはどういうわけだ。
どこのどいつだ、そんな大量の金属を欲してる奴は。
「せっかくお休みもらったんだし、今日はゆっくりしようよ。ほら、ショッピングに付き合って」
「あのなぁ、ダンジョンの情報を聞きに…わかったよ、わかったから腕を引っ張るなって!」
半ば強引に引きずられ、商店街へと足を伸ばす。
トールだって女だ、オシャレもしたいのだろう。
少しぐらい、羽目を外してみるか。
"鉱業都市マイン 商業区"
「タマゴ型ヘルメットに軍手…それからこっちは安全靴ときた。実用性重視で値段も手頃だな。どうだトール、気に入ったのあったか?」
「うはぁ、見事に作業用品ばっかし。かわいい服が全然無いや。いくら鉱業都市だからって、ラインナップが
良い装備を売っていると評判の店に入ったものの、売ってる物はこの有様。
値段のわりに、性能は非常に良いものばかりなのだが。
労働者むけのホームセンターだって、もう少しオシャレなの売ってるぞ。
「あ、でもこのツナギ、ウサギさんのワッペン入ってて可愛いかも。ちょっと試着してくるね」
そう言うとトールは、試着室へと向かった。
ウサギが付いたくらいで、ツナギが可愛くなるとは思えないが。
そもそも、ちょっと子供っぽくないだろうか。
「おまたせ。こんな感じだけど、どうかな?」
ずぎゅぅぅぅぅん!!
試着を終え、出てきたトールの姿に
下は普通に履きつつ、
可愛いよりもカッコイイと言うべきか、そもそもけしからん。
「いやそれ真夏の炎天下でドカタの方が暑くなってする着こなしー!今は真冬だぞ、普通に着ろ普通に!」
「スタイリッシュに決まったと思ったのに。似合ってないかぁ…」
「別に似合ってないとは言わないが、そんな格好で歩いて、トールがジロジロ見られるのは……何か嫌だ」
何を言ってんだ俺は、顔が熱い。
それを聞いたトールは、ちょっと満足したような表情。
結局、ウサギワッペンのツナギを購入して、ウキウキで店を出るのだった。
【お買い上げ金額3980マニー】
何をやってんだ俺達は、サンキュッパでおっ得ー!じゃねぇわ。
もっと
聞き込みだ、ダンジョンの聞き込みをしなければ。
「やぁ、そこのお兄さん、ちょっと見ていかないか?色々と取り揃えているよ」
歩いていると、何とも渋い声の、
だから今は買い物してる場合じゃ…ん?
「どうしたのタスク、そんな真剣な顔して」
「この美しい
露天商を侮るなかれ、中々の品揃えだ。
「そいつか?ダマクラカス鋼を使った三徳包丁だな。独特な模様が特徴で、切れ味は抜群だ」
欲しい、この出会いは運命かもしれんぞ。
こういうの使うと、料理する時にテンション上がるんだよな。
「よし、これを買おう!いくらだ?」
「ちょっとタスク!これ買っても、自由に使えるキッチンが無いじゃない。それに、ダマクラカスって名前が怪しいし。今は壁画のダンジョンについて調べるんでしょ?」
自分は買い物を楽しんでたくせに。
こんな掘り出し物を前に、指を
確かに無駄な買い物は、極力避けるべきなのだが。
「ほう、壁画のダンジョンを探しているのか?」
「知ってるのか!あんたいったい、何者だ?」
「色んな場所を巡る仕事をしているからね。申し遅れた、私は行商人のジョン・ドゥーエ。世界を飛び回り、あらゆる物をあらゆる場所で売買する。必要ならば魂すらも売りさばく、それが私の信条だ」
何だこの迫力は、目がマジなんだが。
自己紹介の口上なのだろうが、この人が言うと実際に魂まで商品にしてしまいそうだ。
体格もゴツいし、本当にただの行商人なのだろうか。
「ふっ、悪い悪い、ただの冗談だ。それで、ダンジョンの事だったな」
「そうだ!壁画のあるダンジョンを探しているんだ。知っているなら教えてほしい」
「ふぅむ、いいだろう。だが私も商いをしている最中なのだよ。まずは何か買ってもらいたいものだ」
「ダマクラカス包丁を購入させていただきます!」
【お買い上げ金額3980マニー】
この包丁が、さっきのウサちゃんツナギと同じ値段だってのか。
超お買得だ、良い買い物をした。
これでダンジョンの場所まで聞けるんだから、言う事無しだ。
「そのダンジョンは、芸術を追い求める者を
財宝ザックザク、魅惑のダンジョンってわけか。
そこにリアの見た壁画があるに違いない。
そして、お宝に手を出すと罠が起動して
引っ掛かってたまるか、お宝には手を出さない、良し。
「値打ちものが手に入るかもしれん。私も同行させて頂こうと思うが、良いかな?」
「この商売人がぁ!いいかジョン、お宝に手を出したら罠に掛かって、逆さに吊られて、くすぐり棒で散々くすぐられ、最終的に呼吸困難で死に至るんだぞ!ダンジョンのトラップを舐めるな!」
「タスクの罠に対する概念のほうが舐めてない?もっとこう、
トールの考える罠がガチすぎて怖い。
「商売にはリスクが付きもの。君達は勇敢なワーカーだ。商人一人守るくらい、ワケは無いだろう。それとも、ダンジョンは諦めるかね?」
「そりゃあ……ぐぬぬ、わかったよ!案内を頼む」
なんだか上手いこと丸め込まれた気がする。
人を惹き付ける迫力と、ダンディな声。
こいつは只者じゃないと見た。
【行商人のジョンが同行することになった】
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