2. can be anything 前編

『小説家』とは、物語を創作し小説を執筆する人のこと。

 小説には恋愛・推理・ファンタジー等、様々なジャンルが存在し、多くの人に夢や感動を与える仕事である。

 昨今、インターネットの普及により、web上で作品を発表する小説家も増えてきたことで、より活躍の場が広がってきている。

 しかし......


◇◆◇◆◇◆


 俺の能力から適合するジョブを選んでもらった結果は『小説家』だそうです。

 確かに小説を書いていたのだから、間違ってはいない...でもここは異世界だ!納得いくはずがない。

 クレームを入れるため、職員に詰め寄った。


「もっと他にないのか!そこに座ってる魔法使い風の男だったり、あっちで話してる剣士っぽい3人組みたいなジョブがいいんだが」


 大声で指さしてしまったため、当人達が気付き立ち上がってこっちを見ている。

 なぜかビキニパンツのマッチョまで振り向いてしまった。


「魔法使いに剣士ですか?そういったものはちょっと...ですが彼らのジョブに興味があるなら説明させていただきますね」


 そう言うと職員は、オレンジのローブの男に視線を向ける。


「彼のジョブは『消防士』です。固有アビリティ『耐火服』により火属性攻撃への絶対的な耐性を持ちます。また、強力な水属性魔法を操ることができ、特定の場面や相手に対し圧倒的な強さを誇ります」


 ちょっと何言ってるかわからない。

 消防士さんも、こちらに敬礼しなくていいんですよ。


「あちらの3人は商店街の3傑と呼ばれる方々で、専用装備の牛刀を持つ『肉屋』柳葉を持つ『魚屋』菜切りを持つ『八百屋』です。動物系・水棲系・植物系モンスターに、それぞれ特攻を持っているのが特徴ですね」


 3傑は背負っていた包丁を掲げ、先端を重ねる。

 人がいる場所では危ないのでやめましょう。

 一応、この世界にはモンスターがいる、ということはわかった。


「そして、自己強化系最高峰のジョブ『ボディビルダー』のフランキーさんです。極限まで自身を鍛え、更に魅了系のスキルで相手を惹きつけます」


 いちいちポーズをキメてくる。

 こいつの説明は求めていない。


「そして貴方は、表現系ジョブ『小説家』です。固有アビリティ『執筆』は文章を書き出し、スキルに乗せて放つことができます。頑張ってくださいね」


 何なんだ、このバグついた職業設定は。

 ツッコミどころしか無い。

 もしかして、こんなのばっかりなのだろうか。

 どこいった?俺の異世界ライフ。


「それでは特典装備をお渡ししますね。100万回使っても折れない匠の逸品『ミリオンペンディング』小説家専用の...えーっと、槍です!」


 違う......サイズは槍だけど、形状は万年筆だよ。

 ちょっと説明迷ってたし。

 しかもペンディングって、保留とかって意味じゃなかっただろうか。


「槍...なんですか?」


「あ、いえ...実はよくわかりません。このジョブに就く方はあまりいませんので」


 ギルドでさえ把握できないようなマイナーなジョブなのだろうか。

 早くも辞めてしまいたい。


「それからワーカーライセンスの説明をしますね」


 ワーカーライセンスは、ギルドでクエストを受けるための免許のようなものらしい。

 ギルドからのクエストを受けて生活する者を『ワーカー』つまり、他で言う冒険者というところか。


 ライセンスにはランクがあり、現在は仮免。

 簡単な採取クエストしか受けることが出来ないが、ランクアップすると討伐クエストや、ジョブに対応したクエストも受けれるようだ。


「今期の昇級クエストは本日が最終受付日です。受けられますか?これを逃すと次は4ヶ月後となりますが」


「今日で最終!?...う、受けます」


 4ヶ月もの間、チマチマと草摘みするような生活はしたくない。

 ぶっつけ本番になるが、説明を聞く限り仮免では食っていくことも厳しそうだし。

 ここは受けるしかない。


【ワーカーとしての一歩を踏み出した】

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