1. change the world 後編

 ここが異世界なら、きっと面白いネタが転がっているはずだ。

 この世界で体験したことを、そのまま小説として書いていくのはどうだ。


「ヒェッヒェ、それじゃワシが、オマイサンの進む道を占ってやろう。代金は初回無料ってことでサービスしておくゾイ」


「初回無料って、ゲームとかにある当たらないガチャみたいだな。本当に当たるのか?その占い」


「序盤のナビゲーターみたいなものじゃよ。黙って占わせぃ!」


 身も蓋もないじゃないか。


 占い師は、タロットカードのような物を取り出し、頭上に放り投げる。

 それは空中でバラけ、水晶玉の上をグルグルと浮遊しはじめた。

 一枚引けと促され、適当に手を伸ばして掴んだカードを見ると、雷に撃たれ崩れていく城が描かれていた。


「ヒェッヒェ、『破壊』のカードとは面白いね」


「あんまり良いイメージが持てないんだが...引き直していいか?」


「何度引いても結果は同じじゃよ。何事も前向きに考えることじゃ。願わくば、困難な壁を破壊するようなお告げであってほしいねぇ」


『破壊』のカードはスッと水晶玉へと飛んでいき燃え尽きる。

 映し出された映像が動き始め、目的地までの道のりを示した。


「いいかい、朝になったら門をくぐり、街の中央にある『ワーカーギルド』に向かうんじゃ。そこで『自動ジョブ選定』をしてもらうんじゃぞ。きっと、良いことがあるゾイ」


 基本中の基本、まずは自分に適したジョブに就けということか。


「お茶、美味しかったよ。ごちそうさん」


「ヒェッヒェ、良き運命に導かれるとええの」


【タスクはワーカーギルドへと向かった】


 入口付近には『クーベ大陸最高峰のジョブ斡旋率あっせんりつ』とか『安心の就職率100パーセント超え』とか書かれたノボリ旗が立っている。

 クーベ大陸...カラーズの街...あまり続けて読みたくない組み合わせだな。


 いったいどんなジョブに就くことになるのか。

 剣士や魔法使いといった王道もいいが、商人や盗賊等の便利系も捨てがたい。

 期待に胸躍らせながら、ワーカーギルドの扉を開けた。


 早朝だというのに、中は多くの人で賑わっていた。

 それぞれに個性的な格好をしているが、パッと見ただけでは、どんなジョブなのか判別が難しい。


 待合の椅子には、オレンジに黄色のラインの入ったフード付きローブをまとった魔法使い風の男。

 奥のテーブル席には男が3人、それぞれ異なる形状の大剣を背負い会議をしている。

......黒いビキニパンツ一丁で、ポージングしているマッチョマンは格闘系のジョブだろうか。


 受付カウンターの一角に『自動ジョブ選定窓口』の文字を見つけた。

 占い師が言っていたのはこれか。


......そういえば、何故この世界の文字や言語は現代日本語なのだろう......


 どこか世界観がズレているようにも思えるが、俺にとっては都合が良い。


「ようこそ!ワーカーギルドへ。自動選定をご希望ですか?」


「あ、はい......それで」


「かしこまりました。自動ジョブ選定は貴方の能力から適合する職業が自動で選ばれます。さらに只今、特典キャンペーンとして、ジョブ専用装備がついてきます」


 これはツイてる、『専用装備』的なものは大抵強いと相場が決まっている。

 序盤で装備を整えるような手間も無くなるので非常に助かるキャンペーンだ。


 ハキハキと喋る職員に促されるまま、手続きが進んでいく。

 書類等は、名前だけで良いということだったので『タスク』とだけ書いて提出した。

 その後、別室に通され、床に描かれた魔法陣の上に立つように指示される。


 ついにこの世界での一歩目、一体どんなジョブが与えられるのかはわからないが、得手分野は必ずある。

 それをどこまで伸ばして活かしていけるかが勝負だ。

 さあ!何でも来い!!


 魔法陣へと踏み込んだ俺の体を、強い光が包み込んだ。


「おめでとうございます!あなたは『小説家』になりました」


「!!!!????」


なんて言ったの?


【タスクは小説家にジョブチェンジした】

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