着 校

 陸上自衛隊の幹部候補生学校は福岡県の久留米市。これは今でも変わらない。着


校日前日に前乗りし、同じく入校するメンバーで宴会をした。どうしてメンバーが分


かっていたかというと、入隊予定者に対して事前に幹部候補生学校や駐屯地を研修さ


せて不安感を払しょくさせるという事業があったからである。予算等の都合ですぐ


に実施されなくなったと聞いたが、研修したうえで腹をくくるにはいい機会だと思


う。


 着校日は雨。これは今でも憶えている。一般大学卒業者は手持ちの資料を受付に提


出して基本終了だが、防衛大卒の人間は大変そうだった。途中から土砂降りになった


のだが、彼らは制服に雨衣を着て営門(駐屯地出入口)から三人一組で学校内を行


進、候補生隊舎前で教官に対して大声で着校報告しなければならない。それが教官の


お眼鏡に適わないと営門からやり直し。それを喫煙所(当時は隊舎前に置いてあっ


た。)から眺めて大変そう、ぐらいの感想だったが、すぐにわが身に降りかかってき


た。


 入校当初の最大のミッションは貸与された戦闘服(当時は迷彩ではない、いわゆ


るOD)に名前を縫い付けること。面倒くさいし時間がない、縫い付ける場所が決


まってるなどイライラすることこのうえない作業だが、入校当初の区隊長の格好良


かったらいいんだよ、と後から振り返れば基本教育とは思えないご発言で相当楽に


なった。後は営内生活に関する説明、ベッドの取り方、たたみ方、戦闘服のアイロ


ンの当て方などこまごましたことで慌ただしく時間が過ぎ去っていった。


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