第25話




イーストシティ出て二日目の朝、俺は硬い地面の上で目が覚めた。



「あぁ……ベッドが恋しい」



そんなどうしようもない願望がつい漏れてしまう。大概の荷物はイチジクの持つ唯一無二のスキ【アイテムボックス】で運んでもらえているが、ベッドなどの大きな荷物は運べないそうなのだ。





「寝袋があるだけよかったと思ってください」




隣で僅かに火の残った焚き木を踏む音が聞こえる。消火してるのだろうが、メイドさんがこんなことしているのは、なかなかにシュールだった。




「あーぁ、昨日見つけたあの大っきめの町で一晩過ごせば良かったな……」




俺は起き上がって大きく伸びをする。ところどころ痛むのは、硬い地面に寝たせいか、二日前の戦いで痛めたせいか……




そんなの、どっちでもいいか。



消火が終わったのか、スカートをはたきながら、イチジクが冷たい言葉を飛ばしてくる。





「そう提案した私に、『野宿って、やってみたくない?』とか言ったのはマスターですよ?」





うっ……痛いところを

いや、違うんだ……あの頃はまだ若かったんだって!!……昨日の俺だけど!!





俺は、ため息ひとつとともに言った。





「今度からはイチジクの言うこと聞くって」


「っといっても私もこの辺の町については知りませんから、次はいつベッドで眠れるか分かりませんよ」




そんなご無体な……




「今はさっさと道を進んで次の町を見つけることが先決です」


「はぁ……そうだな、行くか」





凝り固まった体をほぐした俺は、先に準備が完了したアンの横に並ぶ。道の両脇に広がる草原は、ずっと向こうまで続き、その先には山がそびえていた。





「こんなのどかなのも久しぶりだな……」


「そうですね、私もずっと胃の中にいたので、こんな景色は久しいです」






それほど急ぐ旅でもない俺たちは、途中珍しい花や岩を見つけては立ち止まっていた。そんな他愛もない時間は、こちらの世界を初めて漫喫しているように感じさせてくれる。






イチジクは、摘み取った花を顔に近づけながら隣を歩く。




「花の匂いはこんなに良いものだったのですね」




そうか、オートマタに憑いていたことで感覚が身について、味覚や聴覚、嗅覚まで感じられているのか……






俺は、スンスンと花の匂いを嗅ぐイチジクを見ながら、聞いてみる。




「オートマタになって良かったと思えるか?」





感覚が身につくということは、おそらく痛覚なども身についているのだろう。それは決して良いものではないはずだ。





そんな俺にイチジクは言う。





「そうですね……色々苦労もしますが、不満はないです。自分の見た目というものを気にすることができますし」






それなら俺もあの宝物庫でこのオートマタを選んだ甲斐があったというものだ。



俺は黙って頷いた。



にしても見た目か……そんなもの面倒臭いだけだと思うが……





「イチジク、お前、どんな見た目を目指してるんだ?」

「可愛いメイドです」




そうか……可愛いか。可愛い、可愛い……






「イチジク、お前にそんな乙女みたいなワード似合わな……」






茶化しながらイチジクの方を向くと、そこには右手をこちらに突きつけるメイドがいた。



人差し指をこちらに向け、親指を立てている。そのほかの指は曲げており、銃の形だ。





「私だって、立派な乙女ですよ?」





こいつ! 自分のその手の攻撃力知ってんのか!? 門から扉から全部破壊する兵器なんだぞ!!





俺は両手を挙げて降参の意を示す。




「分かった、分かったから!!」





するとイチジクは、俺の必死さを理解してくれたのか、その銃口を下げた。






ふぅ……この毒舌付喪神、ついに物理的にも俺に攻撃を仕掛けてこようとしやがったな。






「本当に勘弁してくれ、お前のその武器はシャレにならん」


「久しぶりにマスターと交流できて、私は楽しいですよ?」





こいつはもう、ダメかもしれない……




そんな無駄話をしながらも、俺たちの足は止まることなく、一定の動きを繰り返す。




「そういえば、二人とも無事だったから聞かなかったけど、大使館の中ってどうだったんだ?」



「どうだった……とは?」





俺の質問に質問が帰ってきた。




「ほら、結構救出に時間かかってたろ? 何があったのかなってな」




尋ねながら俺は手頃な石を蹴る。石蹴りは俺の得意分野なのだ。



学校の帰り道は石だけが友達として一緒に帰ってくれたからなぁ……時々、溝にはまって離れていくときもあったけど。





石を蹴る俺の隣で、イチジクは返事をする。




「そうですね、私たちも中で何度か戦闘がありました。幸い帽子や服が多少切れるくらいで、問題はなかったんですが……」



そういえばアンのキノコみたいな帽子無くなってたな。


まぁでも、あれが無くなってたお陰でアンは半魔族として受け入れてもらえたし、あれで良かったのだろう。





「時間がかかってしまったのは、囚われた娘たちの部屋には隠蔽魔術がかけられておりまして、見つからなかったからです」




イチジクはその周囲の地形やら人の位置やらを特定することができるはずだ。それでも見つけられないとは、なかなかに強力な魔術だったんだろう……



「じゃあどうやって見つけたんだ?」




そう言って俺は目線だけをイチジクに向ける。





「アンと手分けして、物理的に片っ端から壁を壊して回ったんです。そして、アンの方が先に見つけて救出したというわけです」





こいつら脳筋か?  どこに、部屋がないからって壁を壊して進むやつがいるんだよ……




あっ、ここにいるのか。





「思いのほかアグレッシブだな」


「……一人であんな大立ち回りをした人には言われたくありません」






大立回りとは、大使館の前でサウス王国の連中やら第三騎士団を相手取った時のことだろう。





「俺だって、やりたくてやったんじゃない」





「どのみち、マスターもアグレッシブ……攻撃的です」




 まぁ、たしかにそう言われればそうだが……




「乙女と言い張る割には脳筋だな」




「……はて、何か?」





 イチジクは、腕を上げながらこちらを見る。




「なんでもないです」





俺が敬語でそう言うと、イチジクは静かにその手を引っ込めるのだった。





まったく! この付喪神、照れ隠しまでアグレッシブだから始末に負えない。





 にしても……




「そのオートマタ、スペック高すぎないか?」





イチジクはすでに分かっているものだけで、門を破壊したバズーカ的ななにか、【アイテムボックス】、エリア探知が使えるのだ。その能力の限界は、底が知れない。






「このオートマタ自体のスキルは【アイテムボックス】なんだろ? なら、それ以外の力は単純に兵器を使った力なのか?」




「はい、その認識で間違いありません」





 珍しい道具にのみ時々付いているスキル……それがこのオートマタの場合【アイテムボックス】らしい。





 それで、残りの力は純粋なる兵器によるものだと……


 



「俺が知らないものだと、他に何が出来るんだ?」




一旦落ち着いた俺は、イチジクの前に回り込んで、興味津々に尋ねる。


男なら誰だってロボットが大好きなのだ! もちろん俺だって例外じゃない。





「そうですね……ちょうど向こうからやってくる獲物がいるので見ていてください」





そう言って道の先を指差す。すると、確かに指の先には、かなり遠くて見えにくいが、馬のような魔物が群れでこちらに向かって走ってきていた。






もしかして、この位置から仕留められるのか!?





イチジクを見ると、右手にはめたメイドグローブの人差し指を左手でつまみ、引き抜いた。





次第にメイドグローブは外れ、それに覆われていた腕が見える。その腕はいかにも機械です! と言った感じで、イチジクがただの人でないことを証明している。






「マスター、ワクワクしているのは分かりますが、少し離れてください」





おっと、鋼色の腕に魅入ってしまっていたらしい。知らないうちに肩が触れ合う位置まで来ていた。




俺は悪い悪いと言って少しイチジクから離れる。






「マスター、他の子にも同じようにしてはダメですよ? 私だから良かったものの、訴えられるレベルです」





なん、だと……この世界では女の子に近づくだけで訴えられるのか!? さすがの日本でもそこまで厳しくはないぞ……





「そ、そうなのか……それより、以後気をつけるから! 早く性能を見してくれ!!」





早く早くと焦らせながらイチジクの方を見る。

もう興奮が収まらないんだよ!! 早くその立派なものから出される技を見してくれ!





「……はぁ、本当にマスターは子供ですね。ではまずはあの時見せた荷電粒子砲から」





荷電粒子砲? あの時見せたと言うのだから、門を壊したときのビーム砲のことだろう。

すると、イチジクは右手を魔物に向けると、左足を一歩前に出してバランスをとった。






「では、いきます」






その言葉とともに、鋼の手である右手の手のひらの部分に円形の穴が空いた。カメラのレンズが開いたようなそこに、光の粒子が集まってくる。





その光は次第に強くなっていき……三秒後





ビュンッ!






という音とともに、光の塊が獲物に向かって……それこそ、光速で飛んで行った。



意識していなければ目で追えない速さで飛んだそれは、見事に一頭の馬の魔物に命中する。





その瞬間、狙われた馬の頭は完全に吹き飛び、後方の岩の塊が木っ端微塵に破裂した。






「な、何回見ても凄まじいな」






俺は一筋の汗を流しながらイチジクの顔と腕を交互に見る。



一度は見たことがあったはずだが、改めてみるとその破壊力には脱帽だ。






「驚くのはまだ早いですよ、マスター」





得意げな顔でそう言ったイチジクは、手のひらに開いた穴を閉じ、今度は人差し指を、今の爆発で俺たちの左右に展開しようとしている群れの一頭に定める。




まさか、あんな動き回って走る馬の魔物を狙って撃てるのか!?




狙う相手は、距離にして五百メートルは離れている。それに、さっきとは違い一直線上におらず、高度な射撃技術が必要だろう。





しかし、イチジクはやるようだ、片目を閉じて狙いを定めている。






「……いきます」






ポツリとそう呟いたイチジクの人差し指の先から光が飛び出した。その光は荷電粒子砲のものと似ていたが、その大きさは十分の一程度で、豆電球くらいのものだった。






のだが……





「速さが桁違いだ……」



荷電粒子砲の光の玉はなんとか目で追えたが、こっちの……






「イチジク、さっきのなんて名前なんだ?」

「そうですね……手銃でしょうか?」






……なんか違う気もするが、まぁいい。


その手銃による攻撃は、目に見えない一瞬のものだった。威力は荷電粒子砲に劣るが、予備動作がほとんど必要ない上、しっかりと馬の首筋を射抜くほどの威力は携えていた。






魔物を指一本で迎撃できんのかよ……






その時だ、感心する俺のもとに一頭の馬の魔物が迫ってくるのが見えた。群れの一頭と思われるそいつは、戦意むき出しで迫ってくる。






「イチジク! 頼んだ」






俺はすぐにイチジクに任せるという選択肢をとった。あれだけすごいのだから、俺ごときがどうこうする必要はないと判断したのだ。決してびびったとかではない。





イチジクは俺の方を呆れたような眼差しで見ると、口を開いた。





「マスター、女の子に戦わせて自分はその後ろに隠れるとは……それでも男なのですか?」



「安心しろ、手がビーム砲になる女の子はいない」



「では、スカートの下から自立浮遊型マシンが出てくる女の子なら……?」





すると、そう言ったイチジクのメイド服のスカートの下から、フラフラと何かが出てきた。



ドローンのような見た目のそれは、次から次に出てきて今では六機になり、どういう原理か分からないが、イチジクの周囲をふわふわしていた。





「な、なんじゃこりゃ……ドローン、いや、銃を搭載したドローンなんて見たことないな」






イチジクは、驚く俺を見てして若干口角を上げると、手をまっすぐに振り上げ、それを迫り来る馬に向かって振り下ろした。






その姿は、さながら部隊に指示を出す隊長のようだった。





次の瞬間……






「ヒィィイイイン……」




魔物の断末魔が野花の咲き乱れるのどかな地に響く。






……す、すげぇ、一瞬で殺ったのか?





そう、俺では対処に困ったであろう魔物を、あの浮遊する機械は瞬殺したのだ。

イチジクの命令で素早く魔物の周囲まで移動すると、その銃口にあたる部分から何発ものビームを噴射し、登場から十秒足らずで魔物の息の根を止めた。





三体の魔物の死体が転がる草原に気持ちの良い風が吹いた。少し長い俺の前髪がふわりと揺れる。





これが帝国の最高傑作にして最大の失敗作の力か……






「すげぇ……いや、ほんと期待以上にすごかったわ」






俺は腕を組んで頷きながら、素直に感心する。これだけ戦えるなら、たしかにこのオートマタ一体で町の一つや二つ破壊しそうなものだ。




「その自立浮遊型マシンってのは、どうなってるんだ? どういう仕組みで動いてるんだ? 充電とかしてんのか?」






あんなものを見せられては俺の興奮も冷めやらない。次から次に浮かぶ質問をイチジクに投げかける。




「落ち着いてください、時間はたっぷりあります。歩きながらゆっくりと話しましょう」




眉を少し傾けてやれやれといったようなその表情を見る限り、彼女がもともと命のない機械だとは思えなかった。





それを見て思考を切り替える。





おっと、そうだな。冷静に、クールに行こうじゃないか。


こうして俺とイチジクは再び北に続く道に沿って歩き始めた。






ではさっそく……





「それで? まずその動くエネルギー的なのは何でまかなっているんだ? 俺の予想は魔術の類だと思ってるんだがどうだ?……」




クールな思考というものを完全に忘れた俺は、マシンガンのように質問を繰り出す。




「マスター……」





イチジクはその後でハァ、と呆れたような息を漏らしながら続けた。





「ええそうです、概ねその考え方で間違いありません。これが動くのは私の脚に展開された魔術式によるものです」






そう言いながら、小鳥を手のひらに乗せる感覚で、周りをフヨフヨ飛んでいるマシンを手のひらに着陸させた。





やっぱりか……でも、魔術って生物問わず使えるものなのか?





俺はそのままの質問をイチジクにぶつけると、横を歩くイチジクがめがねの縁をクイッとあげた。




「魔術に必要なもの、それは魔術が宿る回路と燃料となる魔力、さらに魔術を発動させるためのワード……呪文です」



「それさえ揃っていれば、問題なく魔術を発動可能というわけか」





俺の言葉にイチジクが肯定の意を示す。





「……あれ? でもさっきイチジクは呪文唱えてないよな?」


「私の場合、体内に呪文を発動するための口に準ずる器官がありすので、無詠唱に見えるだけです」





……さすがオートマタということだけある。

確かに無詠唱なら敵の意表をつくことも可能だろう。





しかし、そこでひとつの考えに至ってしまった。





その三つが揃えば発動可能というわけか! それなら俺にでも……






「などと思ったかもしれませんが、それは不可能です。魔術回路は生まれた段階で体に埋め込まれているものですから。ちなみにその質の違いこそが才能の有無になるのです」




「つまり、俺には体内の回路がないから才能なくて無理ってことなのか? 」




「はい」





にしてもこいつ、また俺の考えを読みやがったな……オートマタになってもエスパーは健在のようだ。





もともと大した期待はしていなかったため、傷つきはしないが、何か才能がないと言われて、悲しい気持ちになってくる。






そんな俺のことは構わずにイチジクは続ける。





「ですが、マスターに魔術回路が無いことなど、些細な問題です。実際そんな人たくさんいますから……あの自警団の団長とか」




「自警団の団長……ジャニーか!? いや、でもこの前風を操って……あっ、あれは確か武器のスキルだったな」




確かに言われてみればあいつが魔術を使った姿を見たことなかったな……






彼女は、話す。





「この世界には魔術回路の代替品など山ほどあるのです。例えば、魔術回路の埋め込まれた武器や魔石などが挙げられます」





私の体も、埋め込まれた魔術回路によって攻撃が可能になっています。と、メイド服を着たオートマタは付け加えた。





「あぁ、そういえばこっちの世界で初めて見た魔術もその魔石を使ったものだったな」




かつてのキッチンを思い出す。



だが、イチジクは俺が魔術回路を持たないのは些細な問題だといった。





「で? 言い方的にそれすら俺は使えないんだろ?」


「はい」






イチジクは、気遣う様子もなくあっけらかっんと言った。






「普通、どんな生物も魔力を持つはずなのですが、マスターに魔力がないからです」






イチジクいわく、普通魔力は体を動かすように、出したいときに体内から出すことができるものらしい。使いすぎると疲れるが、時間とともに回復するそうだ。





俺はため息混じりに空を見上げる。




心とは対照的に雲ひとつない空には、地球と変わらぬ太陽があった。






「じゃあ俺は攻撃の魔術はおろか、魔石とかも使えないのか」





俺って、本当にただただ丈夫なだけなんだな……この刀がなければこの残酷な世界で生きていけないだろう。





そんなことを思いながら、これまでなんども命を助けてくれた刀に目をやる。







「本当ダメダメだよなぁ」


「そうですね、本当にダメです」






うっ……同意が胸に刺さる。






アンならそんなことないです! って励ましてくれるだろうに……

もう離れ離れになった半魔族の女の子を思い出して胸が痛くなる。







「ですが…………」


イチジクは、歩く俺の前まで進むとくるりと半回転してこちらを向いた。周りをふよふよしていたロボがスカートの中に戻っていく。




突然なんだ?





前にイチジクがいるためこちらも足を止める。


目が合うと、イチジクは口を開いた。






「そんないつもボーッとしていて、女好きで、そのくせへたれなマスターに私は助けられたのです」





顔はオートマタらしく真顔だが、少しだけ、ほんの少しだけ笑っているようにも見えた。





な、なんだ……? イチジクがキャラじゃないのとをおっしゃってるぞ!?





「お前……素直に褒めることもできないのか」





だが、もし仮にイチジクが助かったと言うのなら、それは全くの偶然だ。俺は別にイチジクを助けようとドラゴンに食べられたわけでもないし、助ける気もなかった。強いて言うなら勝手にイチジクが助かったのだ。





イチジクは、眉を少しだけ困らせてまた口を開いた。







「こんなことを言えば『それは偶然だ』『たまたまお前が助かっただけだ』とか思うのでしょう」






こいつ、本当にエスパーだろ! たしかに長い間、片時も離れず一緒にいたが、ここまでわかるものなのか?




彼女は続ける。





「それでも、私はマスターのおかげで助かったのです」




しつこく念を押すと、イチジクはこれだけは言わせてくださいと言って頭を下げた。





「ありがとう、ございます」






綺麗な黒色の前髪が前に垂れ、その表情を隠す。しかし、そのお辞儀は記録に残らないのがもったいないと思えるほどに美しかった。





「わ、わかったよ……」





俺は髪の後ろを掻きながら目線をイチジクから逸らす。




ホント、いつもは罵詈雑言を浴びせてくる人が突然感謝してくるとか、対応しきれん!



俺は基本的にぼっちで過ごしてきた人間だ。正直、この手のアドリブは勘弁してほしい……







そこで、俺は話を逸らそうと頼みごとをする。




「あっ! そうだ、じゃあスカートの中見してくれよ! それでチャラにするからさ!」





あのフヨフヨメカたちがスカートの中でどうなっているのか非常に気になっていたのだ。俺は爛々と目を輝かせてイチジクの方を見る。





「…………これだから、ブタ、鍋ブ……鍋蓋は」





さっきまでの表情はなんだったのか、目を細めてじっとこちらを睨む。






「おい、また言いやがったな! 前半の数回悪意こもりすぎだろ!」



「仕方ないでしょう? 私の中では割といい話をしたような気がしたのですが、その結果がスカートの中を見せろですよ?」





……ん????






そこで、自分の発言を振り返ってみる。

スカート中、見してくれよ……?




何言ってんだ俺……





「いや、違うんだって! 俺はただあのロボが……」





こうしてのどかな風景に溶け込んだ二人……いや、正確には一つと一体は反乱収まらぬ町ペイジブルに進むのだった。

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