ここは『お洒落の街アキバラ』です

 はあ、次はこの服ですか…


 今日、わたくしが着る制服は『クノイチ』という服だそうです。


 黒い着物に赤い帯。首にも赤い布を巻いて髪は黒髪長髪、赤いバンドで前髪を上げる。わたくしはマジックパックに収められた制服に3秒で着替えます。そして街の入口に急ぎます。



「ここはお洒落の街アキバラてす」


 街の入口でわたくしはなんとなくポーズを取りながら街名を発します。すると、すでにその場所でわたくしを待っていたふくよかな男の方々から歓声があがります。


 この方々は毎日この場所にいるのです。このような事を言うのは大変失礼なのですが、彼らの視線は気持ちの良いものではありません。喩えるなら獲物を狙う野獣の目。ああ、ゴブリンという魔物がいますが、ああいった視線でわたくしを見るのです。


 これでもわたくしは教会のシスターでした。「街の健全な運営の為に貴女のお力が必要なのです」と誘われて、今のこのお仕事をお受けしました。


 でも本当にこんなことがこの街のためになるのでしょうか?


 入り口を通る人は、最近はわたくしに話しかけるどころか素通りされていきます。わたくしはこの目の前の男性たちではなく、この街を訪れてくれた人々に心からの感謝と歓迎の心を伝えたいのです。


 ああ、あと10分で今日の12回めの制服替えの時間になってしまいます。どうか、目の前の男性たちが立ち去り、期待と喜びを持って訪れる方々に伝えられますように。


「ここはお洒落の街アキバラてす」と。



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