ここは『幻の〇〇の村』です
「ここは…えっと……」
「……?」
いけない。ここは何処だっけ。あそこに見えるのがあの山で、この川は…ああ、あの川ね。って事は、フフフーン♪ 分かった。ここは…
「ここは幻のカルジナの丘の村です」
吟遊詩人だった僕がこの幻の村の第一村人になったのは3ヶ月前。王都の広場で演奏してたら誘われたんだ。
「世界中を旅してみたくないか」って。
そりゃしてみたいさ。だってそれが僕の夢だったんだから。世界中の街の広場で手持ちのハーブを奏でて歌うんだ。
寒いところ、暑いところ、乾いたところ、雨が多いところ、活気のあるところ、閑静なところ、いろんな場所でいろんな人に向けて歌いたい。
誘いに応じた僕に届いた手紙。そこには口外無用と赤く書かれたうえで、日時と場所が詳細に書かれていた。必ずその時間、その場所に来るようにと念を押され、僕はその場所を余裕を持って訪れた。
でも指定の場所には何もない。場所を間違えたかと思って移動しようとした矢先、目の前の風景がグニャリと曲がる。そして村が現れた。
それから僕の仕事が始まった。この移動する村、『幻の〇〇の村』を紹介する第一村人だ。この幻の村には世界の珍しい品物が沢山売っている。だから多くの人がこの村との出会いを心待ちにしている。
ただ、この村、世界中のあらゆる場所に移動し続ける。2分に1度は移動するこの村は2週間かけて10000箇所を超える場所を巡り回る。そして丁度2週間後にこの同じ場所に戻ってくる。
僕は渡されてる世界地図と国ごと、地域ごとの地図を読んで読んで読み込んだ。そして、世界地図の地理を全て歌にする。歌ならどれだけ長くても覚えられる。
この村はそう『マンチェの川辺』、
ここは『ヤドラ火山の麓』、
ここは『ゲッシ平原遺跡跡』、
ここは『ラハトマの砦前』、
ここは……
もう大丈夫ただ。僕は世界中をこの村で移動する。大好きなハーブは弾けないけど、それでも歌は歌える。
そう、「ここは『幻の〇〇の村』です♪」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます