ここは『勇者様誕生の村』ですよ
「ここは『勇者様誕生の村』ですよ」
はあ、憂鬱だわ。
よりによってこの村に勇者が誕生するなんて。
この村は長閑で住み良いいい村だったんだよ。王様にあんな御告げがあるまではね。
3ヶ月前だったよ。
急に王都からお偉い人が来てね。「この村に勇者が生まれるという御告げが下った」ってさ。
それからというもの、この村の生活は変わっちまった。目のギラギラした商人がわんさかやって来ては、勇者由来だのって言って訝しい品物を売るようになった。
元の村人はあたし以外みんな村を出ていったよ。
あたし? あたしは役目があるからね。出ていく訳にはいかないんだよ。あたしはいつでもこの村の入口に立ってこう言うんだ。
「ここは『勇者誕生の村』ですよ」
ああ、嫌だ。ギラついた商人が居るのも嫌だけど、もっと嫌なのはあたしのこの言葉さ。
『勇者誕生の村』
そう、これは完全に滅びフラグさ。村人が出て行った理由は実はこっちだ。
そりゃこんなわかりやすいフラグはないからね。ここにいたら勇者が誕生する直前に魔王軍がやって来て村が廃墟になる。
そんな滅びフラグを立てる王様もどうかしてるよ。大体そういう御告げの事は秘密にしとかないと。
お陰であたしは毎日何十回も滅びフラグを言わなけりゃいけない。
おい、商人共、あんた達こんな村に店舗なんて買ってんじゃないよ。こんわかりやすいフラグもわかんないでよく商人なんかやってられるね。
全くもう。
ああ、嫌だ嫌だ。
最近は特に憂鬱でたまんないよ、もう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます