第13話 それぞれの旅立ち
六人が
偉丈夫な父鬼、美しい母鬼、気丈な鬼の娘、小さな古那、そして傷だらけの弁慶、緊張気味の三郎。
母鬼と弁慶の闘いの決着を古那が
以外な母鬼の一言でこの
古那の持つ
一方、母鬼は
鬼の
六人が座る円卓には、所狭しと豪華な料理や果物が並べられていた。
配下である魔物の下女たちが入れ替わり立ち替わり給仕をする。
甘い酒の香が辺りに漂った。
父鬼が百年来の友をもてなす様に古那の
「次は必ず貴様を打倒すぞっ」
ゴキッゴキッと力強く握られた岩の様な拳が古那に差し出される。
返答するかのように古那の小さな拳が向けられた拳を打ち返す。
そして銀槍で
二人はニヤリと笑いもう一度拳を合わせた。
二人の間にちょこんと座る着飾った鬼の娘が、何やら言いたげにモジモジとしているのに気付き、古那が鬼の娘に向かって片目をつぶる。
鬼の娘は、意を決した様に大声で
「わっ私も早う強うなって貴様を倒す!」
と高らかに宣言する。
「ガッハハハッ」
父鬼が
「よしっ。では待ってるぞ」
と、また古那が片目をつぶって見せた。
この
「こいつら一体……まだ
母鬼が側らに置いていた大太刀を持ち上げ弁慶に差し出す。
二人の闘いで弁慶が貸し与えられた大太刀である。
「弁慶よ。お主にこの『鬼切の太刀』やろう」
「ほれっ受け取れ」
「本来、この太刀は、我ら鬼族には
「この太刀もお主が使い手なら
弁慶は大きく深呼吸をする。
そして母鬼から差し出された大太刀をガシリと
差し出された太刀越しに母鬼の漆黒の瞳が光る。
暗い洞窟の中で明々と照らされた部屋には、見たこと事の無い魔物の踊りや聞いた事が無い音楽が流れ、魔物たちの不思議な
◇◆◇◆ それぞれの旅立ち
羅刹の鬼との闘いから数日後、傷の
僧兵の法衣に身を包み、首には大玉の数珠をさげ、手には
腰には 羅刹の母鬼から
「古那殿。儂は決めた」
「諸国をまわり、苦しむ人々を助けたい」
「己が一人の力量では何ができるか判らぬが、共にゆく仲間を探し、この国の安寧を導く礎となる」
◆
古那が
庭先の
静香が古那の顔を
気付いた古那は、体を起こし、縁側に
静香も古那の横にゆっくりと座る。
「古那様、どうしました?」
静香が優しく問う。
「俺は……帝都に行こうと思う」
「羅刹の母鬼が言っていたのだ」
「遥か昔、鬼族の伝承の中に何でも願いを
「しかし、その宝を巡って鬼や魔物、人間たちの争いが起こった」
「最後に勝ち残った最強の鬼がその宝を手にし、今、その宝を受け継ぐ者が帝都に居るらしい」
「その宝で元の姿に戻り、己が力を取り戻す」
静香は、古那の言葉を聞きながら、山向こうの空を見上げた。
そして、横に座る古那を両方の
「このまま、
と
「…………」
静香の小さな肩が震えているのが
古那は、震える静香の左小指を両手でつかむ。
そして、腰に巻いた銀の帯から竜髭糸を一本取り出すと、静香の小指に巻き付けた。
すると不思議な事に小指に巻き付けられた竜髭糸が見る見る白銀の指輪に形を変えた。
「静香よ。この糸は竜髭糸と言って、強い霊力を
「これを身に着けていれば、大概の魔物は恐れて、お前に寄っては来ない」
「これは俺の封印を解いてくれた御礼だ」
静香は、左小指の白銀の指輪を大事そうに触れ、
「…………」
サクランボの様な小さな
「…………」
古那は、静香の白玉の様な
「
「暫く、そなたの美しい
静香は、濡れた瞳を何度も何度も
第二章・帝都編へつづく……
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