第2話 一寸法師誕生
霊山 の
木々の枝に新たな
この小さな村の住人たちは、皆で二人の幸せを祝い祝福した。
二人の
清兵衛と千代は二人で連れ立ち、朝早くから村外れの小高い丘に古くから建つ神社へと向かった。
この神社の裏庭には古い
清兵衛や千代、この村で育った人々は子供の頃から何か願い事があれば、この
二人は
二人が出会い、そして将来を誓い合った時もこの祠の石碑に祈った。
今度は早く子供が授かる様にと二人は祈る。
「……」
突然。
空に鳴り響く
たちまちのうちに空一面を黒雲が
遠くに見える連なる山々の
遅れて、
「キャアッ」
千代は空を引き裂く雷の音に驚き、清兵衛にしがみついた。
二人は、近づいて来る
二人は手を取り合って小さく震えた。
空間を割く雷鳴の音が辺りに響く―――。
遅れて落雷の衝撃で地面が
「キャアッ」
二人は、恐る恐る目を開けた。
今まで鳴り響いていた
二人は驚きで息を飲んだ―――。
古びた
光る小さな玉は、飛び回る蛍の様にぼんやりと輝く。
驚きで手を取り合い身を寄せ合っていた二人。
千代は、その金色に光る玉に
光る玉は、ユラユラと千代の伸ばした手の平に近づき、ゆっくり手の平の上に優しく乗った。
千代は、光る玉を柔らかく両手で包むと大切そうに自分の胸元に寄せた。
そして光る玉を包み込んだ指に自分の唇を当て、目を閉じた。
「……とっても温かい」
突然。
合わせた手の平の中で何かが
指の隙間から光が
千代はゆっくりと包む手の平を広げた。
そして清兵衛と千代、二人は驚きの目を見開いた。
「えっ!」
広げた千代の手の平に、銀の
「……」「……」
清兵衛は千代の光に包まれた顔を静かに見た。
千代の顔は、手の平でスヤスヤと眠る小さな子供を、我が子を見る様な
「清兵衛様……これは……」
千代がゆっくりと口を開き、優し気な瞳を清兵衛に向けた。
清兵衛は何も言わず、優しく微笑む千代と、手の平でスヤスヤと眠る小さな子供をその腕に抱き寄せた。
◇◆◇◆ 小さな息子
清兵衛の実家は、村で代々続く造り酒屋を営んでいる家である。
屋敷の裏手には、酒蔵が建ち並び
霊山から
◇
「
「
母になった千代の心配そうな声が聞こえる。
「母様っ!」
「母様っ! こっちこっちぃ」
清兵衛と千代は、
不思議な運命を感じた二人は、この村を造ったという神から名前を頂いた。
古那の声のする方を目を凝らしてよく見ると、庭の木の枝に
「キャアッ」
「あ、危ないから降りてらっしゃいっ」
怒った様な心配した様な声で千代が息子の古那に注意する。
「はあーい」
仕方なく返事をすると、
木の枝によじ登ったかと思うと、木の枝からこちらに向かって跳躍した。
「キャアッ」
小さな体が部屋の畳に着地すると勢い余って前に転がり柱で止まった。
飛んだ距離、約5メートル。
「痛ててててっ」
古那は立ち上がると、先ほど木の枝に巻きついていた
この光景に見慣れた様子で千代は小さく溜息をもらす。
「もう御勉強は終わったの?」
「はいっ母様。とっくに終わってます」
「ふうっ」
呆れた顔で千代がまた溜息をもらす。
「そろそろ、お風呂に入りなさい」
千代は、お
古那は着物を脱ぎ捨て裸になるとお椀の湯に浸かる。チャプチャプと百まで大きな声で数えた。
部屋から見える霊山の絶景にお椀風呂。古那のお気に入りである。
そんな古那を千代は微笑んで見守る。
湯上りに服を着せると、授かった時に古那を包んでいた布が不思議な力を持つ銀の
◇
千代は、元気に飛び回る古那を見ながら
あの一件以来、古那は驚く程に体が丈夫になった……。
あれは空の月が氷の様に薄く夜空に浮かぶ寒い冬の晩であった。
古那が高熱を出して苦しみ始めた。
熱は三日三晩続き下がる気配がない。
千代は、小さな古那を胸元に抱き必死に看病を続けた。
しかし目に見てわかる程に日に日に体が弱っていく古那。
清兵衛と千代は
すると不思議な事に二人の頭の中に古那が光から現れた時の映像が鮮明に浮かぶ。
「そうっ! あの時、古那が大事に抱えていた
二人は御互いの顔を見合わせ、急いで屋敷に戻ると大切に保管していた小さな小さな
すると、
あれほど苦しそうに息をしていた呼吸が、だんだんと
「ああっ!」
二人は思わず声を上げ、目を合わせた。
そして古那は自ら探る様に
今まで色味を失っていた肌にだんだんと赤味がさしてくる。
二人は、泣きながら手を取り合って喜んだ。
それ以来、古那の体は
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