Bさんの場合
メッセージの返信に、時間がかかるようになってきた。天気も悪いし、彼も疲れが出てきているのだろうと思ってはいても、不安な気持ちを拭えない。
そうだ、何かをしようと思い立った。気を紛らわせたい時、私はいつもお菓子を焼く。キッチンに立ち、材料を並べる。シフォンケーキを焼こうと決めた。
彼は昔から甘いものが好きだった。疲れているだろうから、きっと喜んでくれると思う。私に出来ることは全部やりたい。私の人生で一番美味しいシフォンケーキを焼くのだ。私は夢中になってケーキ作りに没頭した。
彼が着く頃に焼きあがるのが理想だったが、焼きあがっても彼は来ない。私は時計を見ては一人焦る。もう夕方だ。間に合わなかったらどうしよう。
メッセージのやりとりは続けているものの、急かしてしまう気がして彼の現在地を聞くことが出来ずにいた。
例え間に合わなくても、間に合うと信じて死にたい。
甘い匂いの漂う部屋で、待つ事しか出来ない自分を再び呪い出した時、ずっと待っていたメッセージが届いた。
『着いたよ』
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