第13話 一筋の光



『あはは!』

『まってよー…………』

『うふふ、2人とも元気ねぇ』




真っ白い空間に段々と浮かび上がる景色が色づいてくる。

目の前には男女と2、3歳くらいの小さな子供が仲睦まじそうにいた。

男の方が先に駆けていくと、子供が待ってとおぼつかない足取りで追いかける。

それを女の方が後ろから見守っているのだ。


3人は家族なんだろうか…


なんだろう、この景色は。



すごく懐かしくて…無性に泣きたくなる。



胸が暖かいものでいっぱいになって、涙が溢れそうだ。


だけど、僕の目から涙が溢れることはない。



いっぱいになって行き場の失った気持ちが身体中で暴れ回る。

熱くて、痛くて、でもどうしようもなくて



嬉しい、悲しい、辛い、楽しいーーーー



いろんな感情が生まれては身体の中に積もっていく。



もう溢れる と思った時



目の前の景色が一転して真っ赤に染まった。



「あなたのせいよ…こんなことになったのは

全部、全部!」


……ごめんなさい


「お前がいなければ、穏やかに暮らせたのに」


……ごめんなさい


さっきまで優しく笑みを浮かべていた人が突然僕を非難する。

なにこれ、もう聞きたくない

さっきまで熱かったはずの身体が急速に冷えていく。

誰?あなたたちは僕のなに?

わからない。

いやだ、いやだ、身体は拒否を示すが声が頭の中に響いてくる。



「どうしてあんたが生きているの?」

「どうしてお前が生きているんだ?」



助けて…



僕は暗闇の中無我夢中で探している。

いつも隣にあって

鬱陶しいほどの熱を、安心を与えてくれる彼の温もりを……





………る

……ろ、…る





何か聞こえる…

でも、よく聞き取れない。

声が聞こえたと同時にくらやみのなかに眩しく目が眩むほどの一筋の光がさして、そこにいかないといけないと何故か思った。

近づくほどに明確になっていく

誰かが僕を呼んでる



はやく、はやく、はやく…



光が消えてしまう前にはやく

この光が消えてしまったらもう二度と会えない気がした。


どのくらい時間がたってどのくらい走ったのかわからないがやっと光のそばまで来たとき、ぐんと身体が魂が強く引っ張られる感じがした。


「起きろ、ベル!」 

「こんな声に惑わされるんじゃない!」


あぁ、ずっと僕に光を示してくれてたのはお前だったんだな…カマエル



先程まで聞こえてた声はもう聞こえない。

あれは、もしかして…

わからないことを気にしても仕方がないか。



やつの声がうるさくなってきたのでそっと

目を開くとそこには心配そうな顔を隠しもしないイケメンも台無しなほど焦った顔のやつがいた。

それでもキラッキラしているやつの顔や存在感は起き抜けの僕には毒な気がするが…

目が合うと明らかにホッとしていた。


「おかえり」

「た、だいま…」


笑みを浮かべてカマエルの言葉につい返してしまった。

なんだこの会話新婚夫婦みたいで恥ずかしいぞ


そう思ったのは僕だけじゃなかったみたいだ


「これでは新婚夫婦みたいだな」


恥ずかしげもなく堂々と言い切ったやつは先程までの姿はなりをひそめてもう通常運転だ。

耳が赤いところを見ると少しはやつも恥ずかしいのかななんて思った。



でも身の振りも気にせず目を覚さない僕を呼んでくれてたんだと思うとそんな姿に心臓がキュってした。


一瞬何かの病気かと心配したが、

それよりも心がだんだんとぽかぽかして嬉しかった。









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