第14話 光の正体は…

少しは容体が落ち着いたとはいえ、あの悲惨な状態だったベルをどうしても外せない用事のために1人で寝かせていることに不安が募る。

本当はずっとそばにいてずっと俺が面倒を見ていたい。あの時とは違うのだ。

しかし、この用事は放っておくとどんどん傷口が膿んでいくように良いことはない。

離れがたくはあったものの今後を考えて最善を尽くす。


俺とベルが住みやすい世界を創るために。

ただ、それだけのことなのだ。

なのにそれを邪魔するものがとにかく多い。


あぁ、イライラする…





最速で用事を済ませると急いで彼の待つ家に帰った。

玄関の簡素な木製のドアを開けると、ベルの声が聞こえる。

もう、目が覚めたのかと彼の寝室へ足を踏み入れるとそこで待っていたのは明らかに何かに怯えてうなされているベルだった。


「ごめんなさい」

「僕がいなければ」


これはただごとではない。

容体が落ち着いていたはずのベルがうなされ、泣き叫んでいる。


何度も自己否定の言葉を繰り返すベルに俺は全身の血が沸き立つように怒りを覚えた。



まだあれはベルを苦しめるのか!!



「ふざけるな…」



あまりの怒りにギリと奥歯が音を鳴らす。

目の前が真っ赤になりかけたその時…


「……エル」


今にも消え入りそうな声で俺を呼ぶベルに弾けたようにそばに駆け寄った。


なによりもまずはベルのことが先決だ。

先程までの全身が燃えるような怒りはどこにいったのやら、意識がない状態でも名前を呼んでくれたそのことに胸はいっぱいになる。


実は名前を呼んでもらえたことが初めてなのだが…


そんなことはどうでもいい、

ベルが俺を頼ってくれた、俺の名前を1番に呼んだ…それだけで全身が歓喜する。


「ベル」

「起きろ、ベル!」


苦しくて無意識に強く握りしめていたのだろう彼の手を優しく解いて

彼の手のひらと俺の手のひらを重ね合わせ指を絡める。


ゆっくりと俺の神力を手のひらから流す。

その間声をかけることも忘れない。

俺の熱を、想いを込めた神力は反発することなくベル身体に流れていく。

ベルの中で暴れていた魔力が俺の神力と混ざり合い少しづつ落ち着いていくのを感じる。


ベルの特異な魔力の質の最たるものは

"神力さえも拒まない"ところだ。


これが今後彼にとって吉となるか凶となるかはわからないが今回はこのことが役に立った。


俺の神力と混ざり合ううちにベルの深層意識の状況がわかってきた。

やはり、やつが関わっていることは間違いなさそうだ。


落ち着いてきたところでもう一度声をかける


「起きろ、ベル!」

「こんな声に惑わされるんじゃない!」


彼を励ますように、こちらに戻って来られるように。


それから少しして

彼のまつ毛が震えてゆっくりと目が開いた。

深層意識での出来事といえど彼が無事でとても安堵した


「おかえり」

「た、だいま…」


無意識に口にした言葉に自分でも驚いていると。

同じく俺の言葉にびっくりしているベルだが照れ臭そうにぎこちなくただいまと言う姿に内心憤死した。


可愛すぎる。

あぁ、食べたい。


ふと、この会話新婚夫婦みたいだと思ったらそう口にしていたみたいで顔が一瞬で真っ赤に染まったベルに怒られてしまった。

俺も口に出してしまうと少し恥ずかしいものだなと思った。


ただ、ベルが嫌そうにしてないので

〔このまま食べたらダメなのか〕

〔いや、まだ俺の手に落ちてきてから出ないとだめだ〕

という俺の本能と理性のせめぎ合いが終始白熱していたことは言うまでもない。


















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