第4話「あくをくだすあくとなるのだ」
折角ルシファーが保有してるイチゴ畑で幸せを噛み締めてたのにそれが全部パアじゃねぇか!
怪人ヘラヘラっていういかにもヘラヘラしてそうな奴が渋谷で女子高生のパンツを覗いたらしい。
警察が駆けつけても手に負えず、途中から特殊部隊も参加したが全員パンツを晒されたようだ。
なんとも言えねぇ怪人だ。人様に恥かかせて大笑いしてやがるとは。
ぶち殺すためにルシファーを連れて渋谷に着いたが.....。
「おいルシファー?おい!何処に行った!」
俺の飛行速度が高かったのか、ルシファーの姿が何処にもなかった。
「あ、みんな見て!エルピスだ!」
一般人が空に漂う俺に気づき、指を指して叫ぶ。
すると伝染するみたいに沢山の人間が俺の方へ顔を向け出した。
「本当だ.....エルピスだ」
「助けに来てくれたんだ!」
ふん、助けるんじゃねぇさ。俺は怪人を殺しに来たんだ。
俺は怪人ヘラヘラの能力を聞くためにライフルで応戦してる特殊部隊の隊長の元へ降りる。
「おい貴様!あの怪人の能力を話せ!どんなに些細なことでもいい!」
「エルピスか!君が来るのを待っていたよ.....。奴の名前は怪人ヘラヘラ。最初は自分の手で女性の下着を覗いていたが、対処しようとした途端に半径10メートル以内にいた私達のズボンがひとりでに脱げてしまった」
「つまり10メートル以内にいる人間のズボンを脱がせてパンツを晒す能力ってことだな」
「そうだと思う。それ以外にこれといった能力はみられない、君なら勝てるか?」
俺なら勝てるか?はっ、愚問だな。どんな手を使ってでも勝つさ。
ルシファーには悪いがさっさと終わらせてイチゴ畑に帰ろう。
歩道を囲むように大勢の特殊部隊が重火器で撃ち殺そうと試みているが殆どがパンツを晒している。
その中心にはお目当ての怪人が笑いながら銃弾を躱していた。
俺は空気を取り込み、足裏へ流し込む。タイミングを見計らって一気に放出した。
ジェット機みたいに俺は飛び出して怪人ヘラヘラの頭を掴み、コンクリの地面へ叩きつけた。
「ぷっぎゃっぁああ!!!!!!」
「はっはぁ!存分にパンツを眺められただろう怪人ヘラヘラ!次拝むのは自分の履いてる下着だぜ!」
起き上がる直前に腹部を蹴りつける。肉体に沈み込む感触と一緒にコンクリの地面もひび割れた。
「や、止めて...ください!!私はただ.....健全な女子高生のパンツが見たかっただけです!」
「だったら服屋の下着コーナーにでもいって思う存分愉しめばいいだろうが!」
「NOTHING!!!!お子ちゃまには分からない大人の話です!私は逃げま」
なんか逃げようとしてたから両足をぶった切ってやった。
するとまた叫び出して蜘蛛みたいに腕をカサカサさせて動き出した。
「いやだから何処に行くんだよ」
音速で動いたからちょっと驚いたけど髪を掴んで近くのビルに移動する。
ここなら見晴らしもいいし、このまま頭を潰せば駆除完了だ。
「い、痛いです!やめてください!痛い痛い痛い!痛いぃいいいいいいい!!!!!!」
パギョッ!!!!!!
クルミを割るみたいに頭を握りつぶす。よし、あとの処理は警察に任せて俺は退散するとしよう。
「やっと見つけた!正義の怪人、エルピス!」
「誰が正義の怪...貴様等は」
両手にメリケンサックならぬ「マジカル変身装置」を装着した少女が俺を見上げていた。
間違いない。奴は魔法少女ワンワンだ。あの阿呆面は死んでもわすれねぇからな。
久しぶりに顔見たからちょっと嬉しい気もするけど、ワンワンの他にスカーとフェニックスの二人も遅れて登場した。
「エルピス様.....もう争いは終わりに致しましょう!貴方のためにも、この世界のためにも!」
「争いを終わりにしよう?馬鹿が、貴様等正義がいる限り、俺のような純粋な悪がいることを忘れるな」
魔法少女達を見下し、俺は不敵に嗤う。
「争いを止めたいなら、俺を殺すんだな」
目には目を、歯には歯をと同じ原理だ。所詮戦争は力でしか止められない。
俺と貴様達の殺し合いも。犠牲があって初めて終わる。
貴様らの死を持って終わりの鐘を鳴らそう。
正義の怪人は階段を踏み降りるようにビルから足を下ろした。
ふわっ。
首に巻いていたマフラーが左右に揺れる。髪が流動する。
地面に足先が着いた瞬間、怪人は口を開く。
「一瞬だけ、苦しむだけだ」
荒ぶように風が吹きつける。魔法少女達は身構えるも、戦闘態勢に入るぞという脳内の切り替えよりも遥かに速くフェニックスの腹部に強烈な一撃が貫いた。
「かひゅっ.....」
肺から酸素が漏れ、腹部の筋肉繊維が何本も千切れる音が耳の奥へ届く。
フェニックスは歯を食いしばり、己の能力を開放する。
「ブリザード・サン!!!!」
空気中の水分が凍結。剣山のようにエルピスへ放出された。
「フェニックス、大丈夫!」
「心配ありませんわ.....スカーさん。わたくし、こう見えても打たれ強いですのよ?」
痛そうにお腹をさすりつつもフェニックスは氷に呑まれたエルピスを眺めた。
空へ向けて放出された大規模な氷は蒼く煌めいている。
これが魔法少女フェニックスの能力。名を「ブリザード」。
氷天を凍てす絶対零度は触れただけでも致命傷となる。
「ブリザード・サン」はフェニックスの必殺技であり、これで数々の怪人を凍死させてきた。
故に必殺技が効かなければ打つ手が無くなる。
必殺技はエルピスが腹部を殴った際に、腕が伸び切った所を狙って放った。
手応えはある。殺すつもりはないが大ダメージは確実に与えられたはず。
「お二人とも。確保する準備を始めてくださいまし」
氷の剣山が砕かれた。
「ワンワンさん!彼の動きを止めなさい!」
「あいあいさー!行っくよぉー!!」
魔法少女ワンワンの能力は両手に装着している「マジカル変身装置」から発電された電力を用いたもの。
通称「ボルテニックス」。
常に発電される電力エネルギーを全身に循環させて身体能力を極限まで高め戦うのが彼女の基本戦法。
怪人を拳で殴って殺す彼女の戦いぶりは魔法少女というより拳闘士が似合っているかもしれない。
地面を軽く蹴っただけでコンクリは爆ぜ、エルピスへ一直線に跳ぶ。
「ボルテニックゥ......」
生産される全ての電力を左拳に集中し、凝縮。
雷鳴のような鋭く大きな音が鳴り響き、左拳から大量の稲妻が迸った。
放たれる速度は音速を超える。当たれば致命傷は免れない。
避けられた先の事は考えない。ワンワンは自分を信じて、思いっきり拳を突き出す。
「パーーーーーーーーンチーーーーーー!!!!!!!!!!!!!」
渋谷が白黒の光に包まれた。鼓膜が裂けるほどの爆音が立ち並ぶビルを震わせる。
窓が粉々に砕け散り、衝撃波が地面を抉りながら広がった。
砂塵が舞う。フェニックスとスカーは「ボルテニックパンチ」が直撃したと顔を見合わせた。
だが、ワンワンは違った表情を浮かべていた。
「そんなもんかよ」
砂塵が晴れた。ワンワンの全力の必殺技は、片手だけで受け止められていた。
外傷は見られない。
「ブリザード・サン」、「ボルテニック・パンチ」の二つを受けてダメージゼロ。
以前戦った時はそれなりの傷を負っていたのに。
「あの時よりも.....急激に強くなりましたの!?」
「ワンワン!逃げなさい!」
「図に乗るなよ。魔法少女」
掴んだ拳を引いてワンワンの首にチョップを撃つ。
ワンワンは撃たれる直前にありったけの電力を放出して電磁バリアを展開するも、ミキサーのように粉砕されてしまう。
「スカーレット・ アロー!!!」
スカーが背中に背負っていた大剣型のマジカル変身装置「バスターソード」を振り抜き、紅蓮の一矢を放つ。
魔法少女スカーが持つ能力「スカーレット・アロー」は煉獄の如き炎が一矢となって対象に飛んでいく。直撃すれば一瞬で炭となり、命すらも焼き尽くす。
エルピスはワンワンから手を離し、翼を形成して煉獄の一矢が迫るよりも疾く右側にあるビルへ飛翔する。
「ワンワン、無事?」
「うん.....けどどうして私達の必殺技が効いてないんだろう」
エルピスは魔法少女を見下ろせる適当な階で静止した。
正直に言うとワンワンの雷の拳は受け止められるとは思っていなかった。
ダメージもないし傷も付いていない。なんやかの理由で奴等が弱くなったのか、俺が強くなり過ぎたか?。
まあ絶対俺が強くなったからだろうな。今日こそコイツ等に引導を渡して二度と魔法少女になれないようにしてやる。
そうすれば........きっとしあ、さっさと殺ろう。
「どうやら俺は恐ろしいまでに強くなったようだ。貴様等に見せてやるぜ。この俺の、真なる姿をな」
うろたえる魔法少女達を映す瞳の瞳孔が縦に伸びた。
眼が紅く光る。
「貴方は本当は誰も傷つけたくないはずです!そうでしょうエルピス様!」
突然、フェニックスが語りかけた。
「急に何を言うかと思えば。俺は誰も傷つけやしないさ。世界を傷付ける。それだけだ」
「わたくしは知っています!。貴方は、貴方はただ、愛を欲しているだけなのだと!」
「怪人が誰も傷つけたくない?ちゃんちゃら笑える話は?」
えっ?。今アイツなんて言った?愛を欲してるだけだって言ったか?。
「愛.....愛ね。知るかよそんなこと」
いや別に誰かに愛されたいなんて思ったこと一度もないぞ。
それに愛情がなんなのかよく分からねぇし。誰かを助けたあとの安堵した表情を俺は割と好きだから欲しているとするなら......うん、やっぱり人間の笑顔だな。
「何か勘違いしてないか?俺が欲してるのは愛なんかじゃない。俺は貴様等人間の心の底からの笑顔を欲しているんだ!決して、愛なんか求めてなんかいない!!」
「いいえ!幼い頃に大切な両親を目の前で失った貴方が、愛を欲していないわけがないのです.....心の底ではきっと、誰かに愛されたいと願っているはずですわ!!!!!」
下らねぇことをべらべらと話すフェニックスに痺れを切らした俺は日本全域に届くほどの声量で叫んだ。
「俺は五歳のときに拉致られて人体改造を受けた!そのせいか記憶がねぇんだよ!分かるか!?思い出したくても、思い出せねぇ.....家族が居たんだろうな俺にも。姉ちゃんが居たんだろうなぁきっと......」
「家族に愛されていたかも分からねぇまま今まで生きてきた!ここにいる貴様等とは違う!愛を欲する以前の問題だ。俺にはそもそも、誰かに愛される資格なんてないんだよぉお!!!」
思ったことをそのまま口にした。なのにこいつ等と周りの人間たちは皆絶句したような顔でいやがる。
ん?ちょっと待て。俺の親って死んでんの?。
しかも目の前で?マジでわけ分からん。ていうかなんでそんな大切なことをフェニックスが知ってんだよ。
「お、おい。貴様、俺の何を知ってる?」
「貴方は五歳の頃、悪の秘密結社に拐われてしまいました。そして目の前で親を、兄妹を殺されてしまったのです」
あー......アバドンがボスのときに俺は拉致られたからな、家族は殺されてもおかしくなかっただろう。
「そして貴方は無理矢理人体改造を受けさせられ、なりたくもなかった怪人となった。罪に手を染めなければならない。人をこの手に掛けなければならない。まだ五歳だったエルピス様にとって、どんなにお辛かったことでしょう」
エルピスは怪人になりたての頃にピーピー泣きじゃくってたことを思い出した。
「貴方は人の笑顔が見たいがために自分を犠牲にして、怪人故にどれだけ心を傷ませたのでしょうか」
「いや、別にそんなこと思ったことねえし」
顔挙げたまま話すと首が痛くなるだろうし、俺はフェニックスと対面するように降りた。
すると俺の目の前にまで急に歩み寄って来やがった。
「わ、お、おい」
「誠実で、清らかで、優しい貴方が.....人を傷つけることが出来るはずありません。わたくしは、そんな貴方のことを」
愛しの怪人の頬に触れて、フェニックスは捧げるように言った。
「愛しています」
ッ!!??!?!????!????!!!!!!!!!!!??!!!!!!!?!!??!!??!!?!?!!!!!!!!!!!!!!!!!!??!!!!!
「わたくしと、結婚を前提にお付き合いして下さいますか?」
「あ、いや、うん!断わ」
「みんな拍手ー!!!!!!」
なんか聞き覚えのある声が人間達に拍手を促した。
人間達はなんか嬉しそうな表情で拍手してる。
なんでだ?
「キース!キース!キスだよー!!!!」
沢山集まってる群衆のなかに、ルシファーがいた。
え?アイツ魔法少女の本拠地にスパイとしてたまに働きに行ってるよな?
ということは当然コイツ等とも交流があるわけだ。
じっとルシファーの顔を見つめていると......表情をこんなふうに変えた。
「(๑・ω-)~♥”」
お前ぇえええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!
ルシファーのキスって言葉を群衆が一緒になって連呼し始めた。
ワンワンとスカーも加わり、いつの間にかカメラ持った連中も今か今かと待機してやがる。
「ここに!今ここに魔法少女と怪人のカップルが誕生しました!悪と光が合わさった歴史的瞬間です!これは後世に残る伝説となるでしょう!」
「なっ、ば、馬鹿!誰かカップルだ!あとキスはしねぇ」
ガッ!!(両手で頭を抑えられた)
「んぉっ!?」
そのまま唇に柔らかな感触が伝わった。
フェニックスは顔を赤らめて、恥ずかしそうに微笑んだ。
「こ、これがキスですか.....。エルピス様、貴方はわたくしが愛します。そして幸せにします。だから、わたくしのことを愛してください」
お前......内気な性格は何処行ったんだよ。
やばっ、視点が低くなっていく!。無意識に身体操作を誤ったか!
フェニックスが抱きしめていたエルピスの姿がみるみる内に小さくなっていく。
数秒すると1メートルにも満たない幼い子供へと変貌した。
「え、エルピス.....様?」
「あ、えと、その、おぼえてやがれ!フェニックス!」
もとのすがたにもどっちゃったおれはこのばからたいさんした。
うしろからはたぶんげんきょうとだとおもうルシファーがついてきてた。
「あ、ルシファーきさま!またホラふきやがったな!」
「うんゴメンね!けど反省はしないよ!ははっ!」
ブチころすぞきさまぁああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
クズな友人が魔法少女の一人にホラ吹いたせいで求婚されてます 桂ピッピ二世 @ke318
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