第1話 イギリス貴族はコンビニ店員!?

 子鳥のさえずりと共に朝を迎える。イギリス貴族のわたくし、オリビア・アーバスノットは日本人の如月キサラギの家に止まっていた。


「オリビアちゃんおはよー!」


 寝ぼけまなこをこすり彼女の方を見ると、彼女は朝ごはんを作っていた。


「できた!さぁさぁ、オリビアちゃん。お召し上がれ」


「これは…なんて言う魚ですの?」


「これは秋刀魚さんまだよー。日本ではよく食べられているんだけど、イギリスではこういう料理ないの?」


「秋刀魚…初めて聞きましたわ。」


「そうなんだ!ちょっと食べてみてよっ」


 そう言われ恐る恐る一口食べる。


「あら…美味しいですわ……!」


 彼女が焼いた秋刀魚の味はしつこすぎず、噛めば噛むほどうま味が出てくる。私はあっという間に食べ終えてしまった。


「ごちそうさまでした。また食べたいですわ!」


「ふふ。オリビアちゃん、随分秋刀魚にハマっちゃったね。明日も秋刀魚食べる?」


「もちろんですわっ!!!」


 *


 朝ごはんを食べてしばらくすると、如月が着替え始めた。


「あら…?何をしてますの?」


「うふふ。今からオリビアちゃんについて来て欲しいところがあるの!一緒に行かない?」


「えぇ。ご一緒しますわ!」


 家から出て徒歩五分。小さな店の前で如月が立ち止まった。


「よし、着いたよ!さあ着いてきて!!」


「あのー…如月さん?ここは何のお店ですの?」


「ここはコンビニだよ。コンビニには色々なものが置いてあるんだよ!」


 コンビニ。聞いたことはあるけど、実際に行ったことは1度もなかった。果たしてこんな小さな店舗に色々なものが売ってあるのだろうか?


 ドアが自動で開くと音が鳴った。それと同時に店員の男性がこちらに話しかけてきた。


「おぉ、如月ちゃん!今日も頑張ろうねぇ。」


「え?頑張るって、何をですの?」


「ふふふ。ついてきたらわかるよ!」


 そう言われて如月について行くと、彼女は先程の男性と同じ服に着替え始めた。


「これはなんですの?」


「これは店員の制服だよー。オリビアちゃんも着てみてよ!」


 まぁ着るだけなら、と思い着てみた。変なところはないはずだ。


「可愛い!すごく似合ってるよ!ちょっとこっち来て!」


「今度はどこに行きますの!?」


 如月に手を引っ張られ、レジの前にやってきた。


「店長、連れてきました。今日のお手伝いです!」


「……はい?」


 先程の男性はどうやら店長らしい。まぁそれはどうでもいいのだが、それよりもお手伝いとはどういうことだろうか。


「あっ!オリビアちゃん、お客さんが来たよ!早くレジに入らないとっ!」


 そう言われお客さんに商品を渡される。私は何をしていいのか全くわからない。


「あの…えっと…何をすればいいのですか??」


「ここにある機械で商品のバーコードをスキャンするんだよ。さぁさぁ、やってみて!」


 如月に言われた通り商品をスキャンしていく。ピッ、ピッ、という機械音が少し気持ちいい。


「ええと…480円になりますわ。」


「じゃあ500円からでお願いします。」


「えっと…あの…」


「20円のおつりとレシートになりますっ!」


 何をしたらいいのか分からず戸惑う私を如月が助けてくれた。


「うぅ…申し訳ありませんわ。」


 私がお客さんに謝ると、お客さんはニコッと笑い私に言った。


「私は全然大丈夫よ。あなた、新人さん?お仕事頑張ってね。」


「は、はい!」


 私はその一言のおかげでこの後の仕事も頑張ろうと思った。


 *


「…客、来ませんわね。」


「ふっふっふ。甘く見てもらっちゃあ困るぜ、お手伝いちゃん!なんせここは超ド田舎だからな!」


 店長が自信満々に言った。


「それってあまりいい事じゃないのでは…」


「いやいや。田舎はいい所だぜぇ?こんな自然に囲まれたコンビニ。滅多にないんだぞ?」


 そんな話をしていると、もう外は黄昏時たそがれどきなっていた。


「あ、もうこんな時間だ。よーし、如月ちゃん、お手伝いちゃん。お疲れ様!もう上がっていいぞ!」


「如月さん、『上がる』ってなんですの?」


「今日の仕事は終わりってことだよ〜。さぁ、着替えて一緒に帰ろうよ!」


「ふぅ。やっと終わりましたのね…」


「今日は手伝ってくれてありがとうね!お礼に何か帰りに好きな物奢ってあげ…」


「秋刀魚!!秋刀魚がいいですわっ!!」


 しばらくは毎日秋刀魚を食べる生活が続きそうだ。

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