第3話 ティナの目に映るもの
岩山を越えて
先頭を歩く俺の後方から小娘2人が着いてくるという奇妙な一行だ。
ティナと会話しながら歩いているのは、森の中で
「パメラさんはよそのゲームから来られた方なんですね」
俺たちがいるこのアメイジア大陸は
陸地の国境線もあれば、内海を挟んだ国境線もある。
そしてこのゲームの主な住人は天使と悪魔と
時折、人間を見かけることがあるが、そいつらは皆、他のゲームから移住してきた転籍組か一時的な旅行者と決まっている。
このパメラという人間の女もそのどちらかだろう。
「
「素晴らしい腕前でしたね。
そう言うとティナは
そんなティナにパメラは自嘲気味な笑みを浮かべた。
「いや、あのザマでござったから、お2人に助けていただかなければ、今頃はあえなくゲームオーバーとなっていたでござるよ」
「その……肺の病を薬で治すことは出来ないのですか?」
そう言うティナはつい今しがた、神聖魔法・
だが、傷やライフを回復させることは出来ても、パメラがその身に抱える肺病までは治せないようだった。
「この病は
発作が出ている間は各種能力値が下がるってことか。
難儀なもんだ。
たまにいる。
病気持ちの設定だったり、初めから片腕の設定だったりするNPCが。
高い戦闘能力を持ちながら、その能力
いわゆる仕様ってやつだな。
俺が下級種であり、ステータスが一定以上上昇しない仕様はそういう奴らと比べれはマシなほうだ。
「このアメイジア大陸では疲労度が関係する仕様になっているようで、疲労度のゲージが赤く染まると肺病が発症して、まともに刀を振るえぬ体になってしまうでござるよ。情けない限りでござるが」
「そうなんですか……悔しいですね」
そう言うティナだが、パメラはキッパリと首を横に振った。
「いや、その病のおかげで
短時間で戦いに勝つには攻撃力と瞬発力が重要だ。
一撃必殺の破壊力で相手に反撃させる間もなく倒してしまう。
それこそが
初志貫徹してそうした強さだけを追求し続ければ、そいつは間違いなく強くなる。
万能ではなくても、自分の得意とする戦いおいてはほぼ無敵と言えるほどに。
こいつが全力で刀を振るったら、どんな力を見せるんだろうか。
そのことを想像すると、俺はますます全力でこいつとやり合いたくなってきた。
強敵とのケンカを前に腕がムズムズする感じだ。
そんな気持ちが俺の視線に出ていたのか、パメラはあえて俺から目を
「ところで、お2人はどこに向かわれているのでござるか?」
「あてのない旅なので特に行き先はないんです。つい先ほどこの
「
「依頼?」
パメラの話によるとその農村は
そこでパメラに白羽の矢が立ったという話だが……。
「何で天使どもは一介の旅人に過ぎねえおまえに目をつけたんだ?」
「実は……
「武術大会だと?」
「最近、この
ティナの話にパメラは笑顔で
「
「そうだったんですか。でも声をかけられるってことは、パメラさんはすごく優秀な成績を収められたのでは?」
ティナの問いにパメラは
「一応、優勝することが出来たでござるよ」
「優勝? すごいじゃないですか! ねえバレットさん! 優勝ですって!」
ティナの奴は目を
「フンッ。肺病でヘロヘロのくせによく優勝できたもんだな」
「バレットさん! 失礼ですよ! そんな言い方して!」
ティナの奴が目を吊り上げて金切り声を上げる。
コロコロと表情を変えるティナのウザい様子にパメラは苦笑しながら言った。
「大会は1ラウンド3分の3ラウンド制で先に2ラウンド取った方の勝利でござるから、
ま、そうだろうな。
そういう試合形式なら、こいつは力を
そこからティナとパメラは大会のことをあれこれと楽しげに話しながら俺の後をついて来る。
チッ。
小娘どもが慣れ合いやがって。
背中がムズ
「
「そうだったんですか。すばらしいお考えですね。尊敬します」
「ハッ。天使の農民どもなんざ助けても一文の得にもなりゃしねえだろ」
「バレットさん!」
馬鹿馬鹿しい会話に鼻を鳴らす俺をひと
「ところでパメラさん。さっきはどうして
ティナの言葉にパメラは顔を
俺はマヌケなティナの質問に鼻を鳴らす。
「フンッ。
そう言う俺にパメラは自身の腰に下げた刀の
「大会が終わった後、街を後にする頃から何者かに後をつけられている気配を感じていたのでござるよ。おそらく大会の優勝賞金を受け取った
ケッ。
せこい
その話を聞き、ティナはパメラが持っている刀に注目した。
「確かにこの国ではあまり見かけない
よほど興味を引かれたのか、ティナはじっとその刀の
そんなティナの視線を受けて、パメラは
「これは刀の中でも
「へえ~。刃に緑色の
ティナの言葉に、俺はさっきの戦いの中で見た刀の様子を思い返す。
白銀の刃に緑色の波
それにしてもティナの奴。
こんなに剣に興味を示す奴だっただろうか?
パメラの刀に妙に食いつくティナに俺は違和感を覚えた。
パメラはティナの
「その
そう言うとパメラは腰帯から
「これは
パメラの言うように
「はくろうが? 刀に名前がついているんですね」
「
「確かにすごい切れ味でしたもんね」
そう言うとティナはじっと
そんなティナの視線で俺はようやく気が付いた。
それはほんの一瞬のことですぐに消えてしまったが、俺には嫌になるほど見覚えのある光景だった。
バグッてやがる。
こいつは……不正プログラムだ。
パメラの持つ刀、
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