第2話 サムライ少女・パメラ
「オラアッ!」
気合い一閃。
俺は両手に装備している手甲・
カタナ女は突如襲いかかって来た悪魔の俺にすかさず応戦しようとしたが、体の変調からまだ立ち直ってはいないようで、反応が遅れた。
「くっ! 何奴!」
「ボサッとしてんじゃねえ!」
女は
そんな俺の姿を見てティナがすっとんきょうな声を上げた。
「バ、バレットさん? 何してるんですか! やめて下さい!」
「やなこった!
ティナの奴がやめろやめろとギャアギャア騒いでいやがるが、構うことはねえ。
俺は
「おのれっ! 悪魔め!」
カタナ女は苦しげな表情ながらも懸命に俺の
その動きは弱々しかったが、
本気で殴りかかっているにもかかわらず、 俺の拳は女にクリーンヒットしなかった。
こいつ……近くで見るとまだ若く、その表情はどこかあどけない。
年齢はティナとそう変わらないはずだ。
そんな小娘にもかかわらず、一通りの戦闘訓練を受けているようで、動きが洗練されていた。
だが……。
「お上品な剣技だな!」
そう言うと俺は左足で足元の土を蹴り上げて刀女の顔にひっかけた。
女は土を顔に受けて思わず一瞬動きが止まる。
「くっ!」
「オラアッ!」
ここぞとばかりに俺は思い切り右の
女は刀でそれを受け止めたが、体勢が悪く左へと吹っ飛ばされた。
「くはっ!」
「まだまだぁ!
間髪入れずに俺は右足を大きく振り上げて地面を踏む。
すると吹っ飛ばされたカタナ女が手をついて何とか着地したその地面の手前に火柱が立った。
カタナ女はたまらずに顔をのけ反らせて後方に下がろうとする。
俺が装備している
こいつは何かと使い勝手がいい。
ああして敵を攻撃できるだけじゃなく、次の攻撃への
「くたばっちまえ!」
だが、俺が追撃をかけようとしたその時、後方に下がるかと思われたカタナ女は火柱の中を突っ込んで逆に反撃を仕掛けてきた。
「はあっ!」
「チッ!」
胴衣に火がつくのも構わず炎の中を潜り抜けたカタナ女が繰り出した刀の突きを、俺はギリギリのところで裂けた。
白銀の刃が俺の右即頭部のすぐ横をすり抜ける。
俺はそのまま女の胴衣を
「くうっ! は、放さぬかっ!」
カタナ女はもがいて必死に俺の体の下から抜け出そうとするが、体格で大きく勝る俺が体重をかけているため、わずかに身じろぎするのが精一杯だった。
そして悔しげに歯を食いしばるその顔は苦しげで力がイマイチ入らないようだ。
体が大きく上下していて、その口からはゼェゼェと苦しげな息が
勝負ありだった。
俺はカタナ女の体をしっかりと押さえこんだまま言った。
「てめえの負けだ。女。おまえの剣は素直すぎるんだよ」
確かにこの小娘は動きが速く洗練されている。
そして刀の切れ味が一級品とくれば、
だが、カウンターで繰り出された突きを俺が避けられたのは、こいつの
そして攻撃にせよ防御にせよ、こいつの目線や体の動きによって次の一手が読みやすい。
要するにこいつの剣技はバカ正直すぎるんだ。
だが、俺の
相手が攻勢に出ようとしたところを
「さあ小娘。どうする?」
そう言った
「何だティナ。今いいところなんだから邪魔すんな……んっ? イテッ!」
そして即座に振り向くと、そこに立つティナの手が桃色の光を放っていた。
高濃度の光属性を持つティナの
「てめえ! 何しやがる!」
「それはこっちのセリフです。いい加減にしないと怒りますよ。バレットさん」
「うるせえっ!
「だからって苦しんでいる人を攻撃するのが戦士のすることですか! 私の目の前でそんな情けない
そう言うティナは
くそっ……肩がジンジンと痛むぞ。
俺は痛みと怒りでティナを
そんな俺に構わず、ティナはカタナ女の手を取り助け起こす。
「もう大丈夫ですよ。すみません。私の
そう言うとティナは神聖魔法・
そのカタナ女はティナの言葉に
「あ、あの悪魔が天使である貴殿の
不審げに
「おかしな話ですが、こちらのバレットさんは以前に私を助けて下さいまして、以来、私たちは種族を越えた協力関係にあるんですよ。いきなりあなたに攻撃を仕掛けたので悪人かと思われたでしょうけれど、それは
うるせえ。
ティナの奴が言えば言うほど俺が
悪人で何が悪い。
俺は悪魔だぞ。
カタナ女は立ち上がると、自分の胸を手で押さえ、苦しげな表情で俺を見た。
こいつ……胸の病か何かか?
カタナ女の頭の上に表示されたライフゲージはまだ十分にライフを残していたが、その
疲労が限界まで貯まっている状態ってわけか。
カタナ女は苦しげに息を押し殺した声で俺に問う。
「そこの悪魔。なぜ
そう言うとカタナ女はじっと俺の目を見る。
まっすぐで、青臭い目だった。
それにしても
妙な言葉
「おまえ、胸を
俺がそう言うとティナの奴が
「こ、殺すとか
「うるせえぞティナ!」
「ひえっ!」
俺の怒鳴り声でティナが頭を抱えるのを見て、カタナ女は立ち上がった。
「そういうことでごさったか。
「フンッ。物足りない連中だったからてめえを相手にしようと思ったんだが、どうやら買いかぶりだったようだな」
「
聞いたことのない物言いでそう言うとカタナ女はフッと
「かたじけない。貴殿の言う通り、
そう言うとカタナ女は攻撃的な目を俺に向けてきた。
ほう。
なかなか負けん気が強いじゃねえか。
おもしれえ。
鋭く視線を交わし合う俺たちの間に
「ま、まあまあ。ここで立ち話をしてると、さっきの
ティナがそう言ってペコリと頭を下げると、カタナ女は白刃を白い
「こちらこそ失礼を。
子供っぽい声に似合わず堅苦しい口調でそう言うと、パメラはようやく胸の痛みが治まったのか、穏やかな表情で顔を上げた。
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