第95話 廃部は嫌だ!!

 ワッショイッ!! ワッショイッ!! ワーッショイッ!!


 もう勘弁してくれ~っ!!気持ち悪くなってきたぞ~っ!!

 俺の事なんて、どうでもいいんだよ!

 そんな事よりも負けたエグゼクティ部の連中はどんな様子なんだっ!?

 俺はそっちの方がメチャクチャ気になるんだよ~っ!!


 んっ!?


 エグゼクティ部の連中が集まっているぞ!!

 それも全員、疲れ切った顔をしているよな。ってまぁ、仕方無いよな。あれだけ俺達に『大見栄』を切って負けたんだからな。


 でも、なんか2年の双子の小さい方が花持部長に泣きながら何か叫んでいるような……一体どうしたんだ? 揉めているのかな?


――――――――――――――――――――――



「ウエ――――――――――――ンッ!!!!」


「ど、どうしたのよ、上空うえからさん!? ボールが当たったところが痛いの? でも痛いのは私の方なんだからね!! 私はあのにっくき『越智子美代』の訳の分からないアタックしたボールが顔面に直撃したんだから!!」


「ち、違います!! 痛いのは痛いですが痛くて泣いてる訳ではないです!!」


「だったら何なの!? あんなネガティ部なんかに負けて、悔しくて泣いているのかしら!?」


「ま、負けて……悔しいってのもありますが、少し違います!!」


「じゃあどうしたのよ!? ハッキリ言ってちょうだい!!」



 あの2人、やっぱり何か揉めているみたいだぞ。まぁ、そりゃあ揉めるよな。だって負けた時の条件は花持部長が勝手に決めた事だからなな……

 ってか、早く胴上げ止めてくれ~っ!!




「私、嫌なんです!! エグゼクティ部が廃部するなんて、絶対嫌なんです!!」


「!!!??」


「花持部長は別にエグゼクティ部が廃部になっても痛くもかゆくも無いっておっしゃってましたけど、私は痛いし痒いです!!」


「い、痛いのは分かるけど、痒いってのはどういう事かしら……?」


「私はエグゼクティ部が好きなんです!! エグゼクティ部の皆が大好きなんです!! だからエグゼクティ部が無くなるなんて絶っ体、嫌なんです!!」


「上空さん、あなた何を言ってるのよ!? 私はあのネガティ部の人達と約束をしたのよ!! もしその約束を破ったら、それこそ赤っ恥じゃないの!!」


「それでも良いです!! 私はネガティ部の皆さんに廃部を撤回してもらえるよう頭を下げてお願いしたいです!! だからお願いします花持部長、どうか私と一緒にあの人達に頭を下げに行っていただけませんか!?」


「いっ、嫌よっ!! ななな何で私があんな一般庶民集団に頭を下げなくちゃいけないのよ!? 私は絶対、嫌っ!! 最初は負けた部が勝った部の『傘下』になるって条件だったのを『廃部』に変更させたのも私なんだからね!! 今更、撤回だなんて……どうしてもエグゼクティ部を存続させたいならあなただけで行きなさいよ!! そして、今後はあなたが部長をやればいいわ。私は少し期間を空けてから違う部を立ち上げるんだから……」


「お~い、部長さんよ~?」


「ぜ、贅太ぜいた、何よ? あなた、いつまで割れたサングラスをかけているの!? 危ないし、凄くダサいじゃない!!」


「俺は別にダサくたって良いんだよぉ。俺はどんな時でもサングラスだけは絶対に外さない主義なんだ~っ!!」


「バッ、バカじゃないの!? そんなんだからあなた、ちゃんとボールが見えなくて、顔面でボールを受けてしまったんじゃない!! ほんと、あなたはバカとしか言いようがないわ!!」


「フンッ、俺はバカでも何でもいいんだよ。でもさ、芽仙めせんちゃんのお願いは先輩として聞いてやっても良いんじゃないか?」


「な、なんでよ!?」


「俺もさぁ、こう見えてさぁ、この2年ちょっとでエグゼクティ部に対して愛着がわいてるんだよなぁ……部長もそうじゃないのか? 結構楽しくやってきただろ?」


「そ、それは分かっているわよ!! 私だって楽しかったわよ。で、でも、約束は約束だし……」


「でもさぁ、まだ入部して1年ちょっとの芽仙ちゃんが、これだけエグゼクティ部の事を愛してくれてるんだぜ。創部した時からいる俺としては、なんかとっても嬉しくてさ……やっぱここは部の先輩として『廃部』だけは許してもらえるようにネガティ部の奴等に頭を下げても良いかな~って思ったんだよ」



「花持部長、俺からもお願いします!!」


「うわっ!? 上空士仙うえからしせん君!! あなた、ほんと名前の通り上から言ってくるわね!?」


「す、すみません……じゃあ、正座します……」


「あなた、正座をして私と同じ高さになるってどういう事よ!? なんかとても失礼だわ!!」


「オイオイ~そりゃ、部長が人一倍身長が低いんだから仕方ないじゃんか~」


「ぜ、贅太っ、おだまり!!」



「花持部長、お願いします!! 私、ネガティ部の『傘下』でも何でも構わないですから、どうかエグゼクティ部の『廃部』だけは勘弁してください!!」


「う、上空さん……」



「は、花持さん……ちょっと良いですか……?」


「おっ、越智子美代!?」


「驚かせてしまい申し訳ありません……お話の途中からこの大きな体の方の後ろでこっそりと皆さんの会話を聞かせていただいてました……」


「どうもっす。俺もいま~す」


「げっ、『諸悪の根源の普通の子』!!」


「『諸悪の根源の普通の子』って、どういう意味だ!? どいつもこいつも俺の事を『なんか凄い普通の子』だの、『異端児』だの、『諸悪の根源の普通の子』だの、訳の分からないあだ名ばっかりつけやがって!! オエッ……」


 ヤ、ヤバい!! 


 胴上げされ過ぎてなんか乗り物酔いをした時の感覚だ!!

 メチャクチャ気持ちわるい……


「最後の『オエッ』っ何なの!? 私の顔を見て『オエッ』って失礼じゃない!!」


「べ、別に花持部長の顔を見て『オエッ』ってした訳じゃないですから!! それに俺は花持部長に出会った時から性格はアレですけど小柄で意外と『可愛い系』だと思っていましたし……」


「わわわ私が可愛い系ですって!?」


「あっ、すみません。2個上の先輩に可愛い系とか言ってしまいまして……」


「べ、別にそこは謝らなくてもいいわ……ってか『性格はアレ』とか『意外』ってのは余計でしょ!!」(ポッ)


「そんな事よりも花持さん……」


「そ、そんな事って何よ、越智子美代!? 今、結構大事なところだったわよ!!」


「も、申し訳ありません。私、全然人の気持ちが読めなくて、いつも皆さんにご迷惑ばかりおかけしてしまい……」


「美代部長、謝るのは後にして早くエグゼクティ部の人達に『あの話』をしてください!!」


「えっ? あぁ、そうでしたね。すみません一矢君」


「話って何よ!? どうせアレでしょ!? 負けた方が『廃部』するっていう件でしょ!?」


「は、はい……その件についてのお話です……」


「わ、わかってるわよ!! 約束通りエグゼクティ部は『廃部』するわよ!! 『廃部』もするし、夏合宿用の別荘や一流シェフも用意するし、部費もちゃんと支払うわよ!!」


「は、花持部長!!」

「部長、別荘ってどういうこった!?」

「蘭那、一流シェフって何の事よ!?」


「花持さん、ちょっと待って下さい。お願いですから、最後まで私の話を聞いていただけないでしょうか?」


「そうですよ花持部長、美代部長の話を最後まで聞いてくださいよ」


(ポッ)「うっ、うるさいわね!! こここの『普通の女ったらし』がっ!!」



 は……?


 はぁ――――――――――――っ!!?


「何をどう見て、この俺が『女ったらし』なんですか――――――っ!?」


 っていうか、そんなところにも『普通』を入れるんじゃねぇよ!!

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