第87話 ドッジボール対決開始!!

 【エグゼクティ部陣営・3年生男子部員視点】


 しかし花持部長はマジで天翔の事が好きなんだな?

 あんなテンション高い奴のどこが良いんだろうな?


「おい、そこのエグゼクティ部部員達、特に花持部長、私の話を聞いているのか?」


 や、やべぇ!! 海藤、めっちゃ怒ってるじゃないか。


「フンッ、き、聞いているわよ!! 学園に多額の寄付をしているパパがいる私に偉そうな口を利かないでくれるかしら~? いくら会長でも容赦しないわよぉ」


「何ですって!?」


「まぁまぁ落ち着くんだキリ、いや卯馬副会長」


「は、はい……」


 花持部長の良いところは海藤だろうが誰だろうが物怖じしないところではあるけども……


「モチモチ~!! カイカイの話を聞かないと後で後悔しちゃうぞ~!!」


「ててて天翔君!? あ、はい!! ちゃんと会長の話を聞くわ♡」


 何だこの差は!?

 ってかマジで天翔のどこに惹かれているのかが分からんぞ。


「話を続けるが、それで今回の『ドッチボール対決』で負けた部は『廃部』すると聞いているのだが双方、間違いはないかね?」


「あ…はい……そうです……」

「えぇ、そうよ!! 負けたら『廃部』するわっ!!」


「なっ!?」


「 「 「 「え―――っ!? 花持部長、ホントですかっ!? 私達何も聞いていないんですけど!!」 」 」 」


「そうだぜ、花持部長!! 勝手に決めるんじゃねぇよ!! もし負けたらどうすんだ!?」


「別に『廃部』でも良いじゃない。どうせこの部は私が暇つぶしの為に創った部なんだし。それにまた別の名前の部を創れば良いことじゃない? あっ、そうだわ。私達はお金持ちの集まりなんだから『セレ部』ってのはどうかしら? どう? とても良くない??」


 『セレ部』だけはゴメンだ。


「っていうか、この勝負に負けなければいいだけじゃないの!! 私達が勝つに決まっているんだから何も心配する必要なんてないわ!!」


 俺も負けるとは思っていないが万が一ってことがあるからなぁ……

 ネガティ部の連中は見た目は弱々しいけど実際の所はどうなのか何も分からないのも不安だしな。



「それとエグゼクティ部が負けた場合は、もれなく部費を全額、ネガティ部に収めるという事と毎年、夏合宿の為の別荘及び一流シェフによる高級料理を提供すると聞いているのだが、それも間違いはないのかな?」


「えっ……そ、そうみたいです……」

「ええ、そうよ!! その通りよ!!」



「 「 「 「え―――――――――――――――っ!!??」 」 」 」



「部長、それはやり過ぎじゃないですか!?」

「そうだぜ、部長!! 何か俺達の部だけリスクが大きく無いか!?」


「だっ、大丈夫よ!! 相手チームを見てごらんなさい!! 男子が3名いるけど、ガタイの良いのはあの『沈黙の45度』くらいじゃない!! 逆にうちはガタイの良い男子が5名もいるんだし絶対に負けないわ!! そう、全然負ける気なんてしないんだから!!」



――――――――――――――――――――――


 なんか、さっきからエグゼクティ部の連中、揉めてる様な感じだったけど、もしかしたら部自体は『一枚岩』ではないみたいだな。そこを上手く突ければ良いんだけどなぁ……



「それでは『ドッチボール対決』を始めますので選手の皆さんはコートに入ってください!」



「よしっ皆さん、頑張っていきましょう!!」

「 「 「オッ、オ――――――――――――ッ!!!!」 」 」



 外からの攻撃は前妻木先輩にお願いした。それはおそらく先輩がこのメンバーの中で一番パワーがあると思ったからだ。何故思ったかだって?


 それは前に天翔部長の首根っこを片手で掴んで引っ張って行くところを俺はハッキリと目撃したからだ。


 最初は目を疑ったけど、間違いなく先輩は握力が強いはずだ。ドッチボールも得意だと言っていたし、そんな人は外で伸び伸びとボールを投げてもらう方が良いとお考えたんだ。



 ピィ――――――――――――ッ!!!!




「ねぇねぇ、どうする? 今日こそチャンスじゃない?」

「う~ん、そうね。今日こそ子龍君を思いっきり応援できるチャンスよね!?」

「でも応援していて子龍君が私の方を振り向いたらどうしよう? 私、彼と目が合ったら絶対気絶する自信があるわ!!」

「別に気絶しても良いじゃない!。一瞬でも子龍君と目が合えるんだったら気絶する価値はあるわよ!!」

「そ、そうよね? 私、気絶しても良いわ!! それじゃ、皆で一斉に声をかけましょうよ!?」



 せ~のっ!!



「 「 「 「子龍君、頑張って―――――――――――っ!!」 」 」 」



「えっ!?」


 子龍先輩、開始早々何をキョロキョロしているんだ!?


 今、誰かが僕の名前を呼んでくれた!?


 こんな嫌われ者の僕の応援をしてくれるなんて……それも女子達からなんて信じられないぞ。もしかしてドッキリなのか!?

 


 でも……別にドッキリでもいいや……

 

 部員以外の人達から名前を呼ばれた事の無い僕にとっては彼女達の声が『天使の声』に聞こえてくるよ~


 あ~あ、何て心地の良い声なんだぁ……


「み、見て!? 子龍君が瞳を閉じながら天を仰いでいるわよ♡」

「キャー、とても素敵ね♡」



「子龍先輩、危ないっ!!」


「えっ、何が危ないんだい??」



 バシ――――――――――ッ!!!!


「フギャーッ!!」



「お――――――っと、いきなり仁見子龍君の顔面にボールが直撃したぞ――っ!! ボソッ……あいつバカなのかぁ……」



 子龍先輩、それでなくても顔が横向いててボールが見えづらいクセに、何でこんな一番大事な時に天を仰いでいたんだ!? 


 あんた、勉強以外はバカなのか!!??

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