第86話 エグゼクティ部!!

 ついに、この日が来てしまった……


『名染伊太学園球技大会』


 基本的にはクラス対抗で男子は『ソフトボール』女子は『バレーボール』で争う事になるんだが……


「はーい、みんないいかな~!? 『球技大会』を行う前に、まずは肩慣らしで『砲丸投げ』を全員にやってもらうから、出席番号順に並んでね~っ!!」


 『砲丸投げ』本当にあったのかよ!?


 あれは、舞奈に対して何か誤魔化す為に美代部長が咄嗟に言った言葉じゃ無かったのか!? マジで『砲丸投げ』をやるなんて思ってもみなかったぞ!!


 さすがは謎だらけの『名染伊太学園』主催の『球技大会』といったところだな。


 まぁそんな事よりも今回の『名染伊太学園球技大会』はメイン競技のはずのソフトボールやバレーボールの盛り上がりが、さほど良くないらしい……


 それは何故かって?


 それは勿論、生徒会主催による、俺達ネガティ部とエグゼクティ部での『四大茶部』の座を賭けた『ドッジボール対決』が行われることから学園の生徒達はそれが気になり自分の競技に集中できないからさ。


 生徒会の影響力が強いからなのか2つの部が有名だからなのかはよく分からないが……


 いつの間にか、噂が噂を呼びどんどん外野の方から盛り上がっていって、挙句の果てには『アーカイ部』による実況中継までやる事になってしまったんだ。更に言うと、地元の『ケーブルテレビ』まで取材に来る始末だ。


 取材するほどのネタなのか!?

 マジで意味が分からん!!


 そして各学年が行う競技は全て終わり残すは本日のメインイベント?

 『ネガティ部』対『エグゼクティ部』の『ドッジボール対決』だけとなった。



「さぁ、皆さんお待たせしました!! 只今よりネガティ部対エグゼクティ部による『四大茶部』の座を賭けた『ドッジボール対決』が始まりまーす!! この様な戦いの実況をする事が出来て、私はとても幸せ者です!! あっ、紹介が遅くなりましたねぇ? 本日、実況担当を任されました『アーカイ部・アナウンス部門責任者』で2年の『宝曽信也ほうそしんや』と申します。皆様、どうぞ宜しくお願いしまーす!!」


 『ほうそ・しんや』だと?

 逆に呼んだら……


 『深夜放送』じゃねぇかっ!!


 試合前から疲れるっちゅうねんっ!!


「そして本日、解説をして頂くのは我らが『アーカイ部部長』の『亀羅馬千畳かめらませんじょう』さんです。亀羅馬部長、一言いただけますかぁ!?」


 亀羅馬部長ってあの『世紀末覇者』みたいな人だよな?


「ええ、俺は解説じゃなくて、この血沸き肉躍る『戦場』のカメラマンをやりたかったぞーっ!!」


 ここは『戦場』じゃねぇよ!!

 球技大会ごときで血が沸いたり肉が躍るなんて怖すぎるだろ!!


「おい、モブオ!! お前んトコのアーカイ部も変な人達ばかりだよなぁ!?」


「えっ、そうかなぁ? 皆さんとても良い人達ばかりだぜぇ。っていうか『お前んトコも』って事はフツオもネガティ部部員の事を変な人達だって思っているってことだよなぁ?」(ニヤッ)


「うっ!! そ、それは違う!! 俺はそんな事は……」


 少しは思っているけどな。ヤバい、話を変えなければ……


「そ、それにしてもアーカイ部っていうのは実況やら解説もやるんだな?」


「そうだぜ。うちの部は何でもやる部でお馴染みなんだ。聞くところによると数年前に『放送部』が『アーカイ部』に吸収合併されたらしいけどなぁ……他に『写真部』や『新聞部』なども吸収されたんだよ」


「へぇ、そうなのかぁ」


 そう言えば『クリエイティ部』も色んな部を吸収しているって菜弥美先輩が言っていたよな。『美術部』は勿論のこと『書道部』や『華道部』『茶道部』なんかも。




「それでは海藤会長よりドッジボール対決についてのルール説明をしていただきます。海藤会長宜しくお願い致します!!」


「ネガティ部、エグゼクティ部の諸君、今日はご苦労である!!」


 プッ……『ご苦労である!!』って……どこぞの親父かよ!?

 陰では卯馬副会長の事を甘えた声で『きりたん』って呼んでいる人が『ご苦労である!!』って……プププッ……笑いをこらえ過ぎてお腹が痛いぞ……


 ギロッ!!!!


「げっ!?」


 やっ、やべぇ!!

 海藤会長の後ろに立っている卯馬副会長に睨まれた様な気がしたぞ……!!



「『ドッジボール対決』のルール説明だが、ルールはいたってシンプルだ。お互いのチームの8名はコートの中に入り、残りの1名がコート外から相手チームに攻撃を行うこととする。そしてボールが当たったとしても、そのボールが地面につく前に味方がキャッチした場合はセーフとする。またよく言われる『顔面セーフ』は今回採用しない。顔面にボールが当たってもそれはアウトとだ。フフフ、その方が盛り上がるからな……」


 あ、あんた、鬼かよっ!?




 【エグゼクティ部陣営・3年生男子部員視点】


「オ~ッ、ホッホッホ~!! 遂にこの日が来たわね!! それに『顔面アウト』とは……なんて素晴らしいルールなのかしら。周りから美人美人と言われて、もてはやされているネガティ部女子達の顔をメチャクチャにできるチャンスじゃない!!」


「花持部長、あんたこぇ~な~……」


贅太ぜいた君、怖いって失礼ね!? 私はね、入学した時から、特にあの越智子美代だけは許せないのよ!! 貧乏で地味なあの女が何故か周りの男性から凄く人気があって……」


「でも、越智子さん本人は人気があるなんて気付いてないみたいだぜ」


 女の嫉妬こえぇ……

 それに越智子さんが貧乏ってのもただの決めつけじゃないのか?


「かもしれないけど、あの女は……あの女は、天翔君に毎日告白されているのよ!! それなのに毎回毎回、彼の告白を断り続けているなんて……私が尊敬している天翔君に失礼過ぎると思わない!?」


「でもタイプじゃなければ普通は断るだろぉ? 逆にフラれても諦めずに告白している天翔の方が問題だと思うんだが……」


「て、天翔君は何も悪く無いわ!! 悪いのはあんな素敵な人の告白を断っている越智子美代の方よ!!」


 はぁ……花持部長は天翔のことになると我を忘れちまうところが問題だよな。



「そういえば花持部長って天翔さんの事が好きなんですよねぇ?」


「うううう上空うえからさん!? ななな何て事言うのよ!? ああああなた勘違いしているわ!! 私はただ、あれだけ自分の事を思ってくれている人をいとも簡単にフッている越智子美代が気に入らないだけなんだから……」


 ほんと、部長は嘘が下手くそだな。それに上空うえからちゃんは見た目と違って物事をストレートに言っちゃうところがあるよなぁ……


「まぁ、そこまで言われるならそういう事にしておきますけど……でも今回、ネガティ部側に『助っ人』として入っている『ポジティ部副部長』の前妻木まえむきさんは天翔部長とは幼馴染だそうで、天翔部長の事が昔から好きでこの学園に入学したんだって『アーカイ部』の知り合いから聞いているんですよねぇ……」


「な、なんですって!?」


「でもまぁ、そんな情報なんて天翔さんの事を好きでもない花持部長には興味ないですよねぇ?」


「ちょっ、ちょっと上空さん! その話、もう少し詳しく教えていただこうかしらっ!!」


 いや花持部長、間もなく試合が始まるっていう時にそんな話を聞いている場合じゃないだろ!?

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