第42話 カエルの子はやはりカエルだな

「あっ、もしもし母さん? 急で悪いんだけど今から部活の人達がうちに来るから!! えっ? あぁ、五人かな? あぁ、うん、そうそう……皆で一緒に勉強するんだ。えっ? うん、そうそう。それじゃぁ悪いけどよろしくね?」


 ピッ


 はぁ……母さんが快く受け入れてくれて良かったよ。


「ほぉぉ、5人という事は私を入れて5人ってことだな?」


「バッ、バカな事を言うな!! 何でルイルイまでうちに来る必要があるんだ!? 5人目は舞奈だよ!!」


 ガラッ、ガラガラッ!!


「そっ、そうですよ!! 私が部室に来ていない間に皆で一矢のおうちに行く事が決まっていたなんてビックリよ!! もう少しで私、仲間外れになるところだったわ!! ルイルイ先生、5人目は私に決まっているじゃないですか!! でも、男の子のお部屋なんて今まで入った事無いから、ちょっと楽しみだなぁ……」(ニコッ)


 舞奈……


 今更だけど、やっぱお前は『ビッチ』じゃ無くて『ボッチ』なんだな?

 ずっと心の奥底で疑っていたけど、なんかゴメン……


「フフフ……マイマイ、部屋に入って驚くがいい!! きっとお前にとって凄いものがたくさんあるはずだ!!」


「えっ、凄いもの??」


「ルイルイ、余計な事を言うんじゃねぇよ!! っていうか、す、凄いものなんいし!!」


「わ、私もとても楽しみです。男の子のお部屋ってどんな感じなんでしょうね? 菜弥美ちゃんはご存じですか?」


「えっ、わ、わ、私ですか!? わ、私が知っている訳無いじゃないですか!! ひっ、一矢君、変な誤解しないでね!? 私は絶対知らないから!! もし私を疑うのなら私はどうやって一矢君の誤解を解いたら良いのかをずっと考えて悩み続けるから!!」


 菜弥美先輩、そこは別に焦らなくても悩まなくても良いですから!!


「私は知ってる……」


 え?


「テッ、テルマ先輩!? せ、先輩は男の子の部屋に入った事があるんですか!?」


「あるわよ。でも弟の部屋だけどね」(ニコッ)


 はぁぁ……


 ビックリするじゃないか!!

 今度は俺の方が焦っちまったぜ!!

 し、しかし良かったぁ~弟さんの部屋かよ~驚かさないでくださいよぉ……


 それにテルマ先輩、それを言った後のあの『ニコッ』ってのは何なんだ?

 …ハッ!?

 もしかして、今のはワ、ワザと言ったんじゃ!?


 これはテルマ先輩的には可愛い後輩をからかっているつもりなのか!?

 よ、よ~し、それなら……

 もっと俺のことを心行くまでからかってくれーっ!! って、俺は変態か!?



「僕も一矢君の家に行けるなんて、とても楽しみだよ」


「子龍先輩は男なんですし、別に楽しみにする必要は無いんじゃないですか?」


「そ、そんな事は無いよ。だって、僕が男子の部屋に行くなんて小学校4年生なんだから。それも大阪に住んでいる頃なんだよぉ。東京に越してから初めて友達の家に……ほんと、ここまで来るのに長い時間掛かかったなぁ……グスン……」


 ワ―――ッ!?


 子龍先輩、悲しい過去を思い出させてしまってスミマセン!!


「さぁ皆さん、そろそろ俺の家に行きましょうか? ただ先に言っておきますが、あくまでも勉強会ですからね!! 皆さんは俺に勉強を教えてくれるんですよね!? 遊びに来る訳では無いので、くれぐれもソコらへんはお間違えの無いようにお願いしますよ!?」


「フッ……ヒトヤン、勉強を教えてもらう立場で『留年間近』のお前がよくそんな偉そうな事を言うよな!?」


「うるせぇ、ルイルイ!! 誰が『留年間近』だ!?  まだ一度もテストをやっていない俺に訳の分からない事を言うんじゃねぇよ!! そんな事より今日の部活はもう終わりだからとっとと帰ってくれ!? 明日も本業は早いんだろ!?」


「ハッハッハッハ!! ほんとヒトヤンの『突っ込み』はいつ聞いても最高だな!! 明日も部活に来るのが楽しみだよ!! ハァッ~ハッハッハッハ!!」


 べっ、別に来なくても良いわ!!


――――――――――――――――――――――――


【布津野宅】


「母さん、ただいま……み、皆を連れて来たよ……」


「 「 「 「 「こんにちは~今日は宜しくお願いします!!」 」 」 」 」


「わぁ~皆さん、いらっしゃい。よくこんな『普通』の家なんかに来てくれたわねぇ? おばさん、とても嬉しいわ~それに皆さん美男美女ばかりよね!? それに比べてうちの子は……はぁぁあああ……『普通』ね……」


「かっ、母さん、『普通、普通』ってうるさいよ!! そして頼むからこの人達と俺を見比べるのは止めてくれないか!? 俺だって言われなくても分かっているからさ!!」


 逆に普通に産んだ責任を取ってくれ!!


「ひ、一矢君のお母様……私は部活の部長をしております、『越智子美代おちこみよ』と申します。いつも一矢君にはお世話になりっぱなしで……わ、私はそんな一矢君をとても尊敬しております。それに比べて私はブスで、ノロマで、面白くなくて本当にいつも一矢君にご迷惑ばかりおかけしてしまって……私なんて部長失格なんです。本当に申し訳ありません……」


 しっ、しまった~っ!!


 いきなり美代部長が『ネガティブ発言』をしてしまったぞ!!

 母さんにはまだ俺が何部に入部したのか話していないからめちゃくちゃ驚いているんじゃ……


「……あなた、越智子さんと言ったわね?」


「あっ、はい……」


「あなた、良いわ~ホント良いわ~もしかして皆さんも越智子さんみたいな『ボケ』のセンスがある子達ばかりなのかしら~? もしそうだったら一矢……」


「なっ、何だよ、母さん…」

 それに今、美代部長のネガティブ発言を『ボケ』って言ったよな?


「もしかしてあんた、この子達に対して凄く突っ込み甲斐があって毎日学校行くのがとても楽しいんじゃない? 私だったら、こんな『ボケ』のセンスがある子達に囲まれたら、喜んで毎日突っ込まくりだわ〜っ!!」


 はぁ!?・・・・・・


 か、母さん……


 日頃は親父の『ボケキャラ』が余りにも濃過ぎて目立たなかったけどさ……もしかして母さんは……


 俺の『突っ込み』の血は母さんから受け継いだのか!!!??

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