第22話 女心と秋の……いやまだ春だ
「一矢~、そろそろ部活行こっ?」
「あぁそうだな。でもまだ教科書をカバンに入れて無いから、少しだけ待ってくれないか舞奈?」
舞奈は最近『ネガティ部』の部室に行くのが毎日楽しみで仕方が無いらしい。
まぁ、そうだよな。教室にいても話し相手は俺だけだし……部室に行けば他に四人も話し相手がいるんだからな。
でもなぁ、そろそろ……
「おーい、お二人さん。今から部活かぁ?」
「何だ、モブオか。ああそうだ。今から部活に行くところだ」
「何だとは何だよ!? しっかしお二人さんは仲が良いよねぇ? どう見たって付き合っている様に見えるけど、本当にに付き合って無いの??」
「ま、前にも言っただろ!? そうだ、俺達は付き合ってねぇよ!! なっ、舞奈!?」
プイッ
えっ?
今の『プイッ』は何かな、舞奈さん??
あぁ~そういう事か。モブオとも話はしたくないってか?
でもなぁ、せめて俺の親友なんだから、少しくらい会話してくれても良いじゃんか。
「モブオも今から部活だろ?」
「あぁ、そうだよ。でもその前に今日は、野球部の取材をしてから部室に行くって感じかな」
さすが『情報屋』のモブオだ。今までみたいにコソコソ調べなくて良いから、こいつには『新聞部』がピッタリだな。堂々と本人達に色々と質問出来るし……
「ちなみに今年の野球部はかなり強いらしいぜ。甲子園も夢じゃないらしいぞ」
「マ、マジかっ!? それは凄いな!!」
しかし、やはりさっきから舞奈の奴、全然俺達の会話に見向きもしないよな。
ホントにこれで大丈夫なのか?
毎年初春に先輩達は卒業していくんだぞ。2年後は俺達だけになってしまうんだぞ……
「じゃあ俺、取材に行ってくるよ。また明日な!!」
「おお、また明日!!」
「ひ、一矢……?」
「えっ、何?」
「あのぉぉ……今の子の名前何だっけ?」
「ああ、モブオ……いや、多田野がどうかしたのか? っていうか、クラスの奴の名前覚えてないのかよ!?」
「だ、だって仕方無いじゃない!! 私、まだ登校してからあまり日も経って無いし……覚える気も無いし……」
「イヤイヤイヤッ、少しは覚える気になれよ!!」
「で、でも……さっきの多田野君だったら、何だか喋れそうな気がするような、しないような……見たところ彼って表裏無さそうな性格のような気がしたし……」
「おーっ、それは良かった!! 凄く良い傾向だぞ!! 俺もさ、舞奈には、せめてモブオとだけでも会話して欲しいと思ってたんだ。前に言っていた通り、俺が休んでも話し相手がいれば舞奈も助かるだろ? ん、でも待てよ? じゃあ何でさっきモブオが俺達に話し掛けてきた途中で舞奈は『プイッ』と顔を横に向けたんだ?」
「えっ? あ、あれはそのぉぉ……様子を伺っていただけよ。べ、別に大した理由なんてないわ!! ひ、一矢はそこまで気にしなくて良いの!!」
な、何なんだ?
女子ってよく分からんなぁぁ……
特に超マイナス思考の舞奈の気持ちは全然分からん!!
「そ、そんな事より、早く部室に行きましょうよ!?」
「お、おぉ……」
――――――――――――――――――――――――
【ネガティ部部室】
ガラッ、ガラガラ~
「お疲れ様で~す」
「皆さん、こんにちは~」
どよ~~~~ん……
なっ、何だ、この久しぶりに感じる『どよ~~~~ん』とした空気は!?
「あのぉぉ、美代部長、どうかしたんですか?」
「あ、こんにちは一矢君……じ、実はですね……」
「ひっ、一矢君!! つつ、遂に…遂に、『この日』が来てしまったんだよ!!」
あちゃーっ!!
菜弥美先輩、また美代部長のセリフを奪っちゃいましたね!?
美代部長、凄く喋りたそうな顔をしてますよ!!
喋れない寂しさで、もう既に半泣きになってますから!!
「菜弥美先輩、『この日』って何の事ですか?」
「こ、『この日』というのは……うちの部の……ネガティ部の顧問が遂に海外旅行から帰って来る日なんだ!! そしてその事は『菜弥美の悩み事ランキング第2位』でもあるって事なのよ!!」
「え―――っ!? あ、あのランキング2位のヤツですか!? って、俺何も詳しい事教えてもらってませんけど……でも顧問が帰って来るだけで悩み事ランキング2位ってどういう事っすか!? っていうか顧問なのに入学式から今日まで海外旅行に行ってたなんて……嫌な予感しかしないんですけど。それと今更ですがうちの部にも、やっぱ顧問っていたんですね!?」
「ひ、一矢……その『菜弥美の悩み事ランキング』って何? 私、全然知らないんだけど!?」
「わ、私もその『なんちゃらランキング』って知らなかったですよ。ひ、一矢君、私にも教えて頂けませんか?」
わっ、何!?
急に舞奈と美代部長が『菜弥美の悩み事ランキング』に食い付いて来たぞ!!
それに、二人とも何だか体が微かに震えている様に見えるんだが気のせいか?
でも俺は、そんな事よりも顧問の事を聞きたいんだけどなぁ……
「あっそれはですね……毎晩、菜弥美先輩から送られて来るメールのタイトルで、そのタイトルが『菜弥美の悩み事ランキング』って言うんです。でも今まで第3位から第9位までしか教えて貰っていませんけどね。ハハハ……」
「そ、そうだったんですね。一矢君に毎晩メールをしていたのは私だけではなく、菜弥美ちゃんもされていたんですね? し、知りませんでした……そうだっんですかぁ……? 私だけがメールをしていたわけでは無かったのですね……」
えっ?
ちょっと美代部長……段々声が小さくなって聞き取りにくいんですけど!?
「そ、そうだったんですね!? 毎晩、美代部長と菜弥美先輩は一矢にメールされてるんですね!? 全然知りませんでしたよ!! っていうか私、一矢とメアドの交換してないんだけど!! それは私の事はまだ部員として認めていないとか、実は友達とも思っていないとか、今まで私に優しく接してくれたのは全て演技だったとか、ブツブツブツ……」
オイオイ舞奈!?
マイナス思考が炸裂しているぞ!!
それに最後の方は何かもう『ブツブツブツ』しか聞こえてないし!!
っていうか何なんだこの二人は?
一体何が言いたいんだろう?
女心はよく分からん!!
ガクガクブルブ ガクガクブル ガクガクブルブル.
ん?
何の音だ??
!!??
テ、テルマ先輩と子龍先輩!!??
二人共、いないなぁって思ったらそんな部室の隅っこに隠れて何を……
テルマ先輩は小さい体を更に小さくして隠れているし、子龍先輩は何でガクガクブルブル震えているんですか――――――っ!!??
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