第20話 最終回みたいだな!?

 美代部長もあの星占いを観てたのかよ!?

 

 『射手座』のあなた……『あなたの許から去って行く人を必ず引き留めてください。さもなければお互いに死ぬでしょう』……

 

 どんだけ、あの占い師は沢山の人を死なせれば気が済むんだよ!!


「一矢君、お願いです。私の許から去らないで下さい!! わ、私……まだ死にたくありません!!」


 美代部長、やっぱ信じてるのね、その占いを!?


「一矢君、私からもお願いだ。君が居なくては私も困るよ。このままだと悩み事が更に十倍になってしまって、どうにかなりそうだよ!! 私の悩み事を的確に答えてくれるのは一矢君、君だけなんだ!!」


 菜弥美先輩、なんか俺が絡むと悩み事の増え方がおかしくなってませんか!?


「ひ、一矢君……せっかく名前にコンプレックを持っている人が近くにいるから、最近あまり自分の名前の事を気にしなくなってたのに……一矢君がいなくなったら元の私に戻ってしまうじゃないの!!」


 それでさっき寿志光さんにあっさり苗字を名乗ったのか?

 

「ひ、ひ、一矢君……僕も君がいないと困るんだ。唯一話が出来る男友達が出来たと思って喜んでいたのに君がいなくなったら僕はこれから誰と話をすれば良いんだよ!?」


 子龍先輩、ここ結構大事な場面ですけど、やっぱり顔は45度のままですか!?

 せめて俺の目を見て話してくれ!!


「ひ、一矢君!! 私を部活に誘っておいて、自分はいきなり『辞める』だなんて……私、意味が分からない、どういう事なの!?」


 寿志光さん、もう俺の事名前呼びかよ!? 

 意外と順応性が高いんだな!?


 なら大丈夫だ。君は絶対『ネガティ部』の将来を背負って立っていける人だよ。


 ガヤガヤガヤ ガヤガヤガヤ……


 外野が騒ぎ出してきたな……


「おいおい、なんか『ネガティ部』の人達、あの『普通の子』を囲んで大きな声で何か言ってるぞ!!」


「何か揉め事かな? 常に大人しい人達が何か慌てた表情をしてるんだけど? 一体何があったんだろう?」


 そうなんだ……そうなんだよ……

 結局みんな……


「結局、皆さん自分の都合で俺を引き留めてるだけじゃないですか!? 俺がどうこうじゃ無いですよね!? 俺みたいなのはきっと『ネガティ部』には必要無いんですよ。俺みたいな……認めたくは無いですが『普通』の人間なんて、この部には必要無いんですよ!!」


「一矢君……」


 えっ、何!? 

 み、美代部長……いきなり俺の手を握ってどうしたんですか!?


「一矢君、私は一矢君が必要です。そして、この部にも一矢君が必要です。あなたのお陰で、この部は……ネガティ部は変わろうとしている様な気がするんです。それも良い方向に……だ、だからお願いです。辞めるなんて言わないで下さい!! 一緒にネガティ部を変えていって欲しいんです!!」


 美代部長……



「一矢君……」


 えっ、次は菜弥美先輩!?

 俺の右腕を背後から掴んで……何か柔らかいものが俺の右腕に当たって……

 うわっ!! む、む、胸が当たっていますよ菜弥美先輩!!


「一矢君、私も君がいないと困るんだ!! 本当は私の悩み事が増えるのはどうでも良いんだよ。増えるのは慣れてるしね。でもそんな事より、私は君との会話がとっても楽しくて楽しくて……そしてタマに突っ込んでくれるあの会話が好きなんだよ。そ、それにこれは皆に聞こえない様に言うけどさ……」


「え?」


「最近の個人メールのやり取りだって君は私の悩み相談を聞いてるだけだから面白くは無いだろうけど、私はすっごく楽しいんだよ。だからお願い、ネガティ部を辞めないで!!」


 菜弥美先輩……



「ひ、一矢君……」


 うわっ!?

 テルマ先輩まで……今度は俺の左腕を小さい手で強く握りしめてきたぞ!!


「一矢君……私は君が私と同じコンプレックスを持ってる『同志』だと思っているの。それに君は他の人達と違って、私と普通に接してくれているわ。去年までならあり得ない事なの。あれだけ学園に行くのが億劫おっくうだった私が、最近は学園に行くのが楽しみで仕方ないの……こんなに学校が楽しいのは一矢君のお陰よ。感謝してる、だから、私は今の関係を大切にしたい!! お願いだから部に残って!!」


 テルマ先輩……



「ひ、ひ……一矢君!!」


 ありゃ~子龍先輩まで、今度は俺の右肩に手を置いて……でも顔は横向きですね!?

 

 ただ、この場面は顔が横向きの方がに絵になるような気がするな!!


「一矢君……さっき言った、僕の唯一の男友達というのは本当だ。そして、いなくなるのが困るのも本当だよ。でもそれだけじゃないんだ。君はなんとかして僕の顔を正面に向かせて話させようと色々と頑張ってくれてるよね? 涙が出るくらい嬉しいしとても感謝してるし、そんな優しい君が……何か違う感情が芽生えてきそうなくらいに好きなんだよ。」


 子龍先輩……その感情は絶対に芽生えさせるなよ。



「ひっ、一矢っ!!」


 オイオイオイッ!?

 さっき下の名前で呼んだと思ったら、今度は呼び捨てか!?


 まぁ同い年だから別に良いんだけど……

 マイナス思考のクセに、なんでそこだけ順応性が高いんだ!?


「一緒に部活頑張りましょうよ!? ネガティ部に一矢がいないなら私は入部しないわ!! 私だって友達になるだけじゃ無くて、ネガティ部の仲間として一緒に頑張るって事も追加するんだから!!」


 寿志光さん……いや、舞奈さん……



「おい、アレ見ろよ!? あの『普通の子』の腕や肩を全員で掴んで何か泣きそうな顔をしながら言ってるぞ!! 何が起こったんだ? あれはネガティ部にとって何か大事な儀式なのか!?」



「せ、先輩達……それにま、舞奈さん、ありがとう……本当に有難うございます。俺、なんかとっても嬉しい、凄く幸せな気持ちになりました。俺みたいな何の取り柄も無い普通の人間が、皆さんの役に立ってるなんて思いもしなかったです。俺、部を辞めるのを辞めます!! そして、今日から正式に入部させて下さい!! どうぞ宜しくお願いします!!」


「 「 「 「 「一矢君、一矢!!」 」 」 」 」


「但し子龍先輩!! 決して俺に対して『何か違う感情』だけは芽生えさせないで下さいよ!? 俺、そんな趣味無いですから!!」


「ひ、一矢く~ん、有難うございま〜す!!」

「一矢君、改めてネガティ部へようこそっ!!」

「ひ、一矢君……私は信じていたわ……」

「一矢君、『何か違う感情』は持たないように努力するよ!!」

「一矢ぁ~っ!! 良かった~、辞めないでくれてありがとう〜!!」



「おい!? 今度は全員があの『普通の子』に抱き着いてるぞ!! それも今まで見た事の無い笑顔で喜んでるし、一体何があったんだ!? それにしてもあの『普通の子』あの有名人達をあんな笑顔にさせて抱き着かれるとは……絶対に只者では無いな!?」


 ワァ――――――――――ッ!! ゥワ―――――――ッ!!


「良いぞ良いぞ~、ネガティ部~っ!!!! 何だかよく分からないけど、おめでとう!!!!!!」


 えっ!? 


 一体、何が起こったんだ?


 中庭の俺達を皆が見ているし、校舎中の人達から大歓声が巻き起こっているぞ!! 


 これは一体……

 こんな学園中を巻き込んで盛り上がってしまうとは、まさにこれは……



 最終回みたいじゃないか――――――――――――――――ッ!!!!!!!!





――――――――――――――――――――――――

お読みいただきありがとうございました。

これで第1章『ネガティ部の仲間達編』は終了です。

次回から第2章が始まります。

どうぞ次回もよろしくお願いします。


尚、この作品の続きが気になる、面白いと思ってくださった方は是非、フォローや☆での評価を頂けると作者のエネルギーとなり筆も進みますので何卒、よろしくお願いします。

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