第19話 俺、辞めます
何なんだよ、皆揃って普通普通ってよぉ……
俺が何か悪い事したのか!?
『普通』で俺が誰かに迷惑かけたのか!?
あぁ、もういいや……
お陰で吹っ切れた……
そうだよ。『ネガティ部』は俺にとって場違いな所だったんだよ……
そうに違いない!! だから……
「あの~寿志光さん、俺のお願いを聞いてくれるかな? 俺の『モノ』になってくれってヤツなんだけどさ……」
「えっ? お互いに友達になったんだから布津野君も死ななくて済むんだしそれで良いんじゃないの?」
「ま、まぁそうなんだけどさ、俺の中での『モノ』は別にあってさ……出来れば寿志光さんにも俺が入っている部活『ネガティ部』に入部して欲しいんだ。どうかな? 皆、とても良い人達だよ」
「一矢君、良い人達だなんて凄く照れるじゃな~い!! でもさ、お陰で私の悩み事の一つだつた『自分は悪い人間じゃないのか?』という悩みが消えて嬉しいよ!!」
菜弥美先輩の悩み事って、意味が分からん悩み事ばかりだな!!
「『ネガティ部』? 変わった名前の部活だね? なんか面白そうだけど、私みたいな性格の人間が部活に入っても皆さんに迷惑をかけるだけだと思うし……」
いや、皆似たような性格だぞって言いたいけど、先輩達の前でそれは言いにくいなぁ……違う角度から攻めた方がいいよな?
寿志光さんには悪いけど、そのマイナス思考な性格を利用させてもらうか?
「あのさ寿志光さん、これからの学園生活を想像して欲しいんだけどさ……もし俺が体調を崩して学園を休んだとしたら……それが仮に長引いて、一週間くらい休んだらどうなるだろう……?」
「えっ? 布津野君が学園を休んだらですって……うーん……はっ!!」
おっ、何か気付いたみたいだな。
「友達は布津野君だけでいいって言ったけど、もし布津野君が学園を休んだ時は私、一日中一人ぼっちだよね? もし仮に布津野君が入院なんかしてしまったら、私ずーっと一人ぼっちだわ!! そうなれば私が学園で会話をする人は先生か食堂のおばさんくらいになってしまう……さすがにそれはストレスが溜まる様な……今更、クラスの女子達と友達になんてなりたくないし……でもずっと誰とも会話をしないのは辛いかもしれない……」
俺の期待通りの発想だぞ。
「だろう? その為にもネガティ部っていうのは寿志光さんにとって、うってつけの部活だと思うぞ。みんな寿志光さんみたいに自分から積極的に話かけるタイプじゃない人達ばかりだから気持ちもよく分かってくれるだろうし、まして先輩だしさ。とても大事にしてくれると思うぞ。ね、美代部長?」
「は、はい……そうですね。私は舞奈ちゃんと一緒に部活動がしたいです」
「美代お姉ちゃん……わ、分かった。布津野君や美代お姉ちゃんがそこまで言ってくれるのなら私、ネガティ部に入部させていただきます!!」
よし、作戦成功だ!!
「ってことなんですが皆さん、寿志光さんの入部を認めていただけますか?」
「私は苗字の事を聞かず、私の事をジロジロ見なかったら全然構わないわよ」
「テルマ先輩、ありがとうございます!!」
「よろしくお願いします、テルマ先輩!! ずっと思っていんですが、テルマってお名前とても素敵ですね? それって下のお名前ですよね? 苗字は何ていうんですか?」
え――――――――――っ!!??
言うてるそばからイキナリ苗字聞いとるがなっ!!
天然なのか!?
それとも、わざとなのかっ!?
「うん、木西っていうの。よろしくね、舞奈ちゃん」
えぇ―――っ!?
テルマ先輩、今普通に苗字教えとるがな――――――っ!!
もしかしてテルマ先輩、苗字の事を自分の持ちネタにしてるんじゃないだろうな?
う~ん、な〜んか怪しいなぁ……
「ぼ、僕も全然構わないよ。むしろ大歓迎さ。お話出来る人が一人でも増えるのは、僕にとっては凄く貴重だしね」
子龍先輩、何だか悲し過ぎるよ!!
誰か、子龍先輩のお友達になってあげて~!!
「舞奈ちゃん、これからよろしくね。私は副部長の大石菜弥美っていうんだ。部室は別館にあるから後で案内するよ。それと、うちの部は全員下の名前で呼び合うルールになっているから、私の事はこれから菜弥美って呼んでね?」
「はい、ありがとうございます!! な、弥美先輩!! これからよろしくお願いします!! 美代お姉ちゃん、ほんと、皆良い人達よね!? こんな素敵な人達に囲まれている美代お姉ちゃんがとても羨ましいわ」
「あ、ありがとうございます舞奈ちゃん。そうですね、私もそう思います。私みたいな『ブス』で、『ノロマ』で……」
「ハイハイハイ、美代部長ストップストップ!! せっかくおめでたい場面なのに、暗くなる話はそれくらいにしておきましょうよ!?」
「は、はい……そうですね。すみません一矢君……」
相変わらずこの謝った時の美代先輩の表情はたまらないくらい素敵だな!!
それに他の先輩達も基本良い人達ばかりで、突っ込み甲斐もあって……
この1週間で、この人達とずっと一緒にいたいという気持ちになりかけていたんだけど……でも……
「俺から皆さんにお伝えしなければならない事があります!!」
「おっ? いきなり改まってどうしたんだい、一矢君?」
「はい……ずっと考えてたんですが……今日、寿志光さんがネガティ部に入部してくれたお陰で、決心がつきました。たった今正式な部員が5名になりましたよね? という事は、『仮入部』中の俺が今この部を辞めても部の廃止は免れると思いますので、俺はここらへんで退部させて頂こうかと思いまして……あっ、違いますよ。皆さんが嫌とかじゃないんですよ!! どうもネガティ部は俺にとっては場違いじゃないかと思いまして……このまま俺がいても、皆さんにご迷惑をおかけするんじゃないかと……」
そ、うなんだ!!
こんな美男美女の集団に俺みたいな……
認めたくは無いけど『普通』と言われている俺がいると、どうもバランスがおかしくなるんだよ……俺だけ浮いてしまうんだよ。
だ、だから俺なんか……
俺なんかがこの部にいてはダメなんだよ!!
「ひっ、一矢君、ちょっと待って下さい!!」
えっ? 今の大きな声、美代部長の声ですか!?
「ひ、一矢君……お、お願いですから、私の許から離れないで下さい!! 絶対に離れないで下さい!!」
え、え、え――――――っ!?
何、それってまた、俺が勘違いしてしまう系ですか!?
「じゃ、じゃないと……私も一矢君も、死んでしまいますから――――――――――――っ!!!」
「み、美代部長……もしかして美代部長は蠍座の次の射手座なんですか―――――――――――っ!!??」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます