第17話 似た者いとこ同士

「えぇ―――っ!? お2人は従姉妹なんですか!?」


「そうなんです。舞奈ちゃんは私の母の妹の娘さんなんです。ホント、私もビックリしました。まさか舞奈ちゃんがうちの学園に入学してるなんて……そして先ほど聞いたのですが、今日初めて登校したという事も知りました」


「私もびっくりしたわ。美代お姉ちゃん、何で私にこの学園にいる事を教えてくれなかったの? 私、この学園には誰一人知り合いがいないと思ってたから入学前からとても不安で不安で……そうしたら急にお腹が痛くなって、病に院行くと急性胃潰瘍きゅうせいかいようだと診断されて……」


 なんてメンタルの弱い子なんだ!! マイナス思考が病気を引き起こしたんじゃないのか!?

 

 ってか、寿志光さんだって、美代部長にこの学園に入学する事を言ってなかったんだろ? 


 じゃあ『おあいこ』じゃん。


 それに、それだけメンタル弱いのに誰一人知り合いがいないこの学園を選んだのは自分なんだよな?


 う~ん……何だか謎めいてるよなぁ……

 まさに『名染伊太学園』にピッタリだわ!!


「私がこの学園に通っている事を舞奈ちゃんや叔母様に言わなかったのは、実はお母様の言いつけでして……すみません舞奈ちゃん……わ、私が『ブス』で、『ドジ』で、『ノロマ』で、『面白い事が全く言えなくて』、『すぐに落ち込んで』、お母様にも逆らえなくて……」


「わ~っ!! 美代部長それくらいにしておきましょう!! なんか全部出し切りましたよね!? これ以上自分を落としてしまうと更にネガティブな性格になってしまいますよ! なっ、寿志光さんもいいよな!?」


「え、えぇ……私の方こそ美代お姉ちゃんの気持ちも考えずにゴメンなさい。それに、叔母様だって私やママに隠すという事は何か大事な理由があったのだろうし……それなのに私ったら、美代お姉ちゃんを追い込むような事を言ってしまって……私は本当に相手の気持ちを全く考えない『ブス』で、『デブ』で、『最低な女』だわ!!」


 2人ともブスブスうるせ―――よっ!!

 何、超美人同士でブスブスって言い合ってるんだ!?


 学園の全女子には嫌味だぜソレ!!


 しかし寿志光さんも美代部長に負けず劣らずのネガティブっぷりだなぁ!!

 さすが親戚同士だな。


「まぁまぁ2人とも、落ち着いて落ち着いて。ここで待ち合わせた理由はそんな事を言い合う為じゃ無いだろ? 俺と寿志光さんの『命』に関わる話し合いをする為じゃないか」


「そ、そうだったね。思わず忘れてたわ。そ、それで、布津野君は私の『モノ』になる気になってくれたの? それで美代お姉ちゃんに聞きたいんだけど『モノ』になるって、どういう意味だか分かる?」


「えっ『モノ』ですか? あぁ、それはですねぇ『仲間になってください』って事じゃないでしょうか。私もそういう思いで一矢君を部活に誘いましたし」


「『仲間』? へぇ、そうなんだぁ。じゃぁ『友達』と同じ事だよね? それなら良かったぁ、何だかホッとしたわ」


 オイオイオイオイ!?

 二人とも『モノ』の意味知らなかったのか!?


 どれだけ『ウブ』なんだよ!?

 

 ってか、美代部長は『モノ』の意味を知らずに俺を部活に誘っていたの―――っ!?


 それに寿志光さんもホッとしたって……

 一矢は何だかショックです……


「それなら簡単だわ。布津野君、良かったら、いえ、死ぬのは絶対に嫌だから、何が何でも私と友達になって下さい、宜しくお願いします!!!!」


「えっ? まぁ……そ、それは別に良いんだけどさぁ……友達が俺なんかで良いの? まずはクラスの女子達と仲良くした方が良いんじゃないの?」


「ええ、それは別に構わないわ。私は何故だか分からないけど昔から同級生の女子達と友達になれなくてさ……いつの間にか皆が私の事を避けている感じになっちゃうの。初めの頃は寂しかったけどもう慣れちゃったしね。それに1週間遅れで登校したから今更グループにも入れそうにもないし、入ったところで仲良くなれる自身も無いし、逆に嫌がらせをされる可能性だってあるし……だ、だから、私の友達は布津野君だけで良いわ!!」


 うわぁあ、まさにマイナス思考的発想力……


「で、でもさ……」


「元々私は自分から声をかけることが苦手な性格なの。布津野君に声をかけたのだって命がかかっていたから一生分の勇気を振り絞って声をかけたんだよ。私から『友達になろう』なんて本来なら言えるわけないし……」


「そ、そんな、一生分の勇気って……」


 めちゃくちゃ大袈裟だな。


「それにあの目……布津野君も見てたでしょ? 私を見る女子達の目を!! あんな敵意丸出しの目で見られたら私の方から願い下げよ。クラスの女子達は私の中で敵確定だわ」


「敵って……それは考えすぎなんじゃ……」


「いいえ、今までの経験上、間違いなく彼女達は私の敵よ。だからお願い、布津野君だけは私の味方でいて欲しい……私の唯一の友達でいて欲しいの……だ、ダメかな?」


 うーっ!! そんな上目づかいで言われたら……俺の目がつい胸の方にいってしまうじゃないか……こ、このポーズは反則だぞ。


 しかしなぁ……マジで、友達は俺だけで良いのか?

 寿志光さんにとって本当にそれでいいのか?


 ただ、さっき俺の心は奈落の底に落ちたけど、まさかの再浮上ってことでもあるんだよな? うーん……どうしたものか……


 そうだ、まずは俺が友達になればそこから俺の友達とも仲良くなれるかもしれないし……うんうん、俺まで寿志光さんみたく難しく考える必要は無いよな?


 あと恐らくだけど、今まで寿志光さんが他の女子から避けられて友達が出来なかったのはネガティ部の先輩達と同じ理由じゃね?


 それを理解している俺が最初の友達になれば寿志光さんも安心かもしれないし……まぁ、これから3年もあるんだ。何とかなるだろう。


「わ、分かったよ。それじゃぁ寿志光さん……今日から俺と君は友達だ」


「あ、有難う布津野君!! これからよろしくね? ウフッ♡」


 ウグッ、何その笑顔!?


 俺の周りは美少女だらけでマジで身体に悪いぞ!!


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