第12話 似た者同士の集まり

 子龍先輩が極度の人見知りってことが分かったのは良いけど、でもこれから俺はこんなネガティブな人達と部活動をやらなくちゃいけないのかと思うと複雑な気持ちになってしまう。


 だってさぁ……


 性格がネガティブなくせに『超』がつく程の美男美女ってさ……


 何だか普通の俺が……いやっ、普通じゃない俺が見た目だけで言えば普通だと思っていたのに……先輩達といたら普通以下に思ってしまい惨めな気持ちになってくるし……


 「どうしたの一矢君? 大丈夫?」


 うわっ、ビックリした!!

 テ、テルマ先輩、顔が近いですって!!


 それも昼寝から目を覚ました子猫のようなトロ~ンとした顔をしながら俺の事を心配してくれるなんて、マジで『惚れてまうやろー!!』


 ってか、さっきまで寝てたから本当に寝起きなんだけどな。


 そう言えばテルマ先輩は子龍先輩が人見知りになった理由を知っているんだよな?


 それなのに菜弥美先輩と同じように自分に起きている状況についての理由は分かっていないのかな? 軽く聞いてみようか……


「テルマ先輩は子龍先輩とは逆に周りからジロジロ見られて困ってるんですよね? それって、何故だかご存じなんですか?」


 するとテルマ先輩の目の色が変わった。


「わ、分かる訳ないじゃない!! 逆に私が教えて欲しいくらいよ!! まぁ私の予想だけど、金髪が眩しくてうっとおしいとか、ハーフのクセにチビで日本語しか話せないからバカにした感じでジロジロ見てるんじゃないかしら? 考えただけで腹が立ってきたわ……」


「そ、そうですかねぇ? そうでは無いと……」


「いいえ、絶対そうに違いないわ!!」


 えーっ!?

 テルマ先輩、マジでそんな風に思っているんですか!?


「みんなアナタのことがフランス人形のようにめちゃくちゃ可愛い過ぎてついつい見惚れてしまうんですよ!!」って本人に言いたいけど…… 

 

 それを言うと逆に怒られそうな気がするぞ。

 きっとそうだ。きっとこの人は自分が『可愛い過ぎる』なんて認めるようなタイプじゃなさそうだもんなぁ。


 これはテルマ先輩に限らずここの部員全員に共通する事なんだが……

 


「美代部長? ところで、今さっき思い出したんですが、俺が最初に言った質問の答えをまだ聞いてませんでしたよね?」


「えっ? 一矢君すみません……どんな質問だっだでしょうか? 私がどうしようもない『バカ』で、『ノロマ』で、『ブス』だから忘れてしまいました……」


 美代部長、「ブス」は全然関係無いし、それに俺達の前では「ブス」って言っても良いですが、このメンバー以外に『自分はブスだ』なんて絶対言っちゃダメですよ!! 

 

 きっと美代部長の周りが一斉に敵だらけになってしまいますからね!!


「一矢君、申し訳ないけど、もう一度質問の内容を言ってくれないか? じゃないと私の悩み事がまた増えそうなんだ」


「えっ!? ス、スミマセン菜弥美先輩!! すぐ、直ぐに言いますからっ!!」


 やばイ、やばイ……マジ油断してたぜ。

 菜弥美先輩の悩み事を俺が増やしてしまうところだったぞ。


「俺からの質問はですね、この『ネガティ部』は一体どんな活動をするのかって事です」


「あ、ああ、そうでしたね? うちの部の活動内容の質問でしたね。それはですね……」


「それでは私が説明しよう!!」


 え―――――――っ!?


 な、菜弥美先輩、いきなり美代部長の活躍の場を奪っちゃうんですか!?


 美代部長が泣きそうな顔してますよ!!

 っていうか、子龍先輩はいつまで顔を横に向けてるんですか!? 


 それとテルマ先輩も、また眠むそうな顔をしているんですけど大丈夫っスか!?


「ネガティ部の活動内容はいたって簡単!! そこのテーブルを囲み、皆でお茶を飲みながら自分達の今思っている事とかを口に出したり、部員に聞いてもらって心をスッキリさせて家に帰るという部活だけど何か?」


 な、『何か?』じゃねぇよ!!


 俺が「何!?」って言いたくらいだよ!!

 ん? そういえば『根我茶部ネガティブ』の『茶』って、そういうことなのか!?


「な、菜弥美先輩、マジでそれだけなんですか? 活動内容って『皆とお茶を飲みながらおしゃべりをする』本当にそれだけなんですか!?」


「ええ、そうだけど何か問題でも?」


「い、いや別に、活動内容について『仮入部』の俺がとやかく言う事ではないですけど……ただ、それだけしかやらない部活て……皆さん、楽しいんですか?」


 俺の問いかけに子龍先輩が直ぐに答える。


「ひ、一矢君!! ぼ、僕はそれだけで十分に楽しいよ。教室ではいつも一人ぼっちだからね……だから部室で皆と会話が出来るだけで、僕はとっても幸せなんだよ……」


 子龍先輩……グスン……子龍先輩にそんなこと言われたらマジ過ぎて俺、泣いてしまうじゃないですか……グスン


 でも、幸せに感じてる割には常に顔が横を向いてるっていうのはどうなんでしょうね!? どうにかして、この人の顔が正面を向く様にしたくなってきたぜ!!


「ひ、一矢君が思っている様な部活動が出来ていなくてホントに申し訳ありません……グスン、きっと私があまりにもつまらない部長だから何もアイデアが浮かばないんでしょうねぇ……ほんと私、部長失格です……」


「イヤイヤイヤッ、待って下さい美代部長!! 俺、全然気にしてないですから!! ホント、大丈夫ですから、そんなに落ち込まないで下さい!! そ、それにアレですよ。これから皆で色々と話し合って部活内容を変えていけば良いじゃないですか!?」


 落ち込んでいる美代部長も、たまらないくらい可愛く見えるけど、あまり落ち込まれると何をしでかすか分からないよな!?


 俺、この人達とは出会ったばかりで性格がネガティブなことくらいしか知らないからなぁ……もっと先輩達の事を知れば何か良いアイデアが浮かぶかもしれないけども……あ、そうだ!!


「皆さんは勿論、スマホは持ってますよね? 部活のグループメールを作りませんか? そうすれば部活外でもグループメールで色々な情報交換なんかしたり相談し合ったりもできますし……そうすればネガティ部の新しい活動内容の良いアイデアも出てくるかもしれませんし……ど、どうですかね?」


 シ――――――――――――――ン……


 あれ? 何、この沈黙は??

 俺、変なこと言ったかな?


「良いアイデアですね。ただ……す、すみません……わ、私スマホ持ってないんです……持っていないという事は私……部長失格ですよね!?」


「わ、悪い一矢君!! 私も持っていないわ。お父さんにはスマホを持ってくれってしつこく言われているけど、持てば絶対にお父さんからかかってきてウザいから……でも一矢君がそう言うのなら……」


「私、以前は持っていたんだけど……でも変なメールは来るし、たまに息の荒い声のおじさんみたいな人から電話があって……怖いし鬱陶しいから解約しちゃったの。まぁ、一矢君と会話をするのなら……」


「ぼ、僕は今まで電話やメールをする友達なんていなかったから……でも一矢君が友達になってくれるのなら……」


「・・・・・・」


 ハァ――――――ッ…………


 まぁ、何となくそんな気はしてたけどさぁ……


 まずはスマホを買うところからスタートしないといけないって事だよな!?

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