第13話 情報屋の悪友
あ~疲れたあぁぁぁ……
『ネガティ部』に仮入部してからまだ一週間だけど……
俺って結構頑張ってるよな?
いや、ホント俺頑張ってるわ!!
先輩達、俺の提案を素直に聞き入れてくれたのは良いけど、早速全員のスマホ購入に付き合わされて……ネガティブな人ってこういう時に面倒だよな?
それで、ようやく全員、スマホを購入できたかと思えば、今度は……
「使い方が分かりません」……
美代部長、ショップ店員の説明をちゃんと聞いていなかったんですか!?
ショップのお姉さんも困った表情で丁寧に説明してくれていたじゃないですか!?
でもあれは困っていたというよりも緊張していたのかもしれないな?
目の前に超絶美男美女達がズラッと座っているんだからな。
ただ時折、俺の顔を見てホッとしていたのは俺としては悲しかったけどな。
あと、「難しくて悩み事が増える」ってどういう意味ですかね!?
これから菜弥美先輩の悩みが減っていったとして、逆に俺の悩み事が増えるんじゃないのか!?
それと「着信拒否のやり方教えて」……
テルマ先輩、まだ誰からもかかってないでしょ!?
着信拒否は誰かからかかってこないと出来ないので!!
そして極めつけは「画面が見づらい」……
子龍先輩、それはあんたが常に顔を横に向けてるからだろっ!!
とは誰にも突っ込めず、ストレスだけが溜まる一方だ。
あぁ、今日はホント疲れたなぁ……
あ、そうだった。グループを作るのも一苦労したんだよ。
ホント俺、このまま『ネガティ部』の部員でいられるのだろうか?
今ならまだ『仮入部』だし、辞めやすいよな??
でもなぁ……冷静によ~く考えたら俺は今、性格はともかくとして学年一の美男美女達と同じ部活で更にメル友でもあるんだよなぁ……
これを手放すのは何か勿体無さ過ぎるような気もするし。
う――――――――――ん!! 悩ましいぜ!!
「おいフツオ、何を深刻そうな顔してんだよ?」
「だ、誰がフツオだ!? そういうお前こそモブオだろうが!!」
「うるせ~フツオ!! 俺はノブオだ!!」
こいつの名前は『
こんな謎めいた『名染伊太学園』には俺くらいしか行かないだろうと思っていたら、何故かこいつも受験していたんだ。
ホント変な奴だせ。あっ、俺もかな!?
ちなみにこいつは性格も明るくて人当りも良く、生まれ持った才能なのか『情報収集』に長けている。
俺も今までこいつの情報のお陰で色々助かった面がある。
しかし、こいつにも笑顔が消えることがある。
それはこいつの名前をいじって『只のモブ』って言うとめちゃくちゃ怒る。
まぁ俺が『普通の人やん』って言われるのが嫌なのと同じって事さ。
でも俺達二人の間だけはお互いに『フツオ』『モブオ』と言ってもそれはじゃれ合っている感覚でなんやかんやと許し合っているところがある。
まぁ、それが『親友』ってもんだろ? いや、悪友だったな。
そんな『モブオ』が俺に話しかけてきた。
「そう言えばどうなんだ、お前が『仮入部』している部活は? 『ネガティ部』だったよな? その『ネガティ部』って言えばさ、この学園では色々な意味でかなり有名みたいだぞ?」
「えっ、そうなのか? それは知らなかったよ。でも、あのメンバーなら有名になってもおかしくないかもな」
「そ、そうなんだよ!! 俺が調べたところによると3年の部長さんは見た目は地味で大人しそうだけど、髪型や服装を今風に変えれば、絶対に学園一の美少女になると言われているらしいぞ!!」
や、やはりそうなんだ!!
俺も初めて美代部長と出会った時にそう感じたからな。
その情報はメチャクチャ納得だわ。
「それと、2年の副部長さんも部長に負けず劣らずの美少女で、本人は全然気付いていないと思うけど、2年の男子の中では『人気投票』1、2位を争っているらしいぜっ!!」
まぁ、当然だな。
弥美先輩は性格が『あんな感じ』なだけで見た目も今風の感じだし、本人が自覚さえすれば学園のアイドルにもきっとなれると思う。イヤ、冗談抜きで。
「そして、そしてだ一矢っ!! その副部長さんと『人気投票』1、2位を争っているのが、何を隠そう同じ『ネガティ部部員』の『金髪ハーフ美少女』なのさっ!!」
おいおいモブオ、説明している内に段々興奮していないか? 大丈夫かよこいつ。
「最後に登場するのが2年ではあるが学園一の『超絶イケメン』誰も近付けない男、別名『沈黙の45度』だ!!」
な、何だよその『沈黙の45度』って!?
ん? もしかしてあれか? 首の事かっ!?
プッ、だ……誰だ、そんなウマイ『異名』を考えたのは!?
「以上が、俺の調べた最新の情報だけど、これで合ってるいか!?」
「ああ、まぁそんな感じかな。『沈黙の45度』だけは、今初めて知ったけどな。それ本人は知ってるのかな? まぁ知らない方が本人の為には良いとは思うけどな」
「いずれにしてもだ。お前はそんな超有名人達がいる部活に『仮入部』したわけだっ!! お前みたいな何も取り柄の無い『超普通』のお前がなっ!!」
「お前、メチャクチャ失礼な奴だな!! 俺にだって一つくらい取り柄はあるんだぜっ!!」
「ほぉ~、それはどんな取り柄かな~言ってみろよ〜?」
「お前だって知ってるだろ!? 俺が突っ込みが得意だって事は? この人達はかなり突っ込み甲斐があるぞ。まぁ、大抵が心の中ではあるけどさ。でもこの一週間で口に出した突っ込みと心の中での突っ込みを合わせたらどれだけの数になるか。それが理由で俺は今、超絶お疲れ中なんだよ」
「あっ!! ところでさ……」
「急に話を変えるなよな!? で、何だよ!?」
「いや実はさ、この間から気になっていたんだが、お前の席の隣の子の事なんだけどさ、入学式当日に病気になって欠席してから、まだ一度も学園に登校してないよなぁと思ってさ」
「ああ、そう言えばそうだな。えーっと、名前はなんだっけな? なんか難しそうな苗字だったよな気がしたけど……」
「フフフ……そこはこの『情報や』の俺に任せてくれよ。その子の苗字は『寿』『志』『光』この3つを合わせて『
「それくらい分かるわ!!」
ん? でも待てよ?
『すしこう まいな』……
「……おいモブオ?」
「ん、なんだ?」
「悪い、ちょっと窓の外に向かって大きな声で突っ込み入れるけど良いか?」
「は? 別に良いけどさ、急にどうしたんだよ?」
俺はモブオに何も言わず静かに窓の方に近づいて行く。
そして窓の外にゆっくりと顔を出し、こう叫ぶのだった。
「どう考えても嫌な予感しかしねぇ――――――――――よっっ!!!!」
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