第3話 夢と朝
辺り一面はほんわかと明るい元居た部屋だった。
親父はいつも通りテレビを見て笑っていた。
なんだろう...俺はこういう親父の背中を追って生きていたのだろうか...
親父が逃げてからは俺の体から何かがふわっと消えていった...そんな感覚がした。
部屋にいる親父を見るだけで消えていった何かが戻る...この感覚が心地よくてずっと自分だけのものにしたい。
そんな気持ちでいると辺りが急に真っ暗となり親父が闇の中に消えて飲み込まれていった。
「親父!!」
叫んでも変わらない。
「親父!戻って来いよ!!俺と一緒に頑張ろうよ!!」
叫びは空しく(むなしく)俺はただ俺以外なんにもない空っぽの部屋はこにいた。
「あぁ...あぁぁああぁ...あああぁっ...」
涙が止まらなかった。
自分の無力さを恨んだ。
俺がもう少し頑張ったら...
俺が親父と面と向かって励ましあえてたら...
親父は裏切る...
いやもしかしたら親父は自分のところに俺を置いとくと生活できなくなるからという理由で売ったのかもしれない...
でもそんな事は起きなかったはず。
自分のせい...
自分のせい...自分のせい...
自分のせい...自分のせい...自分のせい...
そんな言葉が脳裏から離れなかった。
俺は弱いな...だからこうなるんだ...
そんな自己嫌悪の沼に俺ははまって行っているような気がした。
しかしまだ神様は俺にチャンスをくれるみたいだ。
外から何か音がする。
「...くん!......くん!!」
この声は...
そうやって目を開けると。
「漣くん!!!」
心配そうな顔をしながら起きたのがうれしかったのか泣いているミリアの顔が目に映った。
「おひゃようございます...」
情けない声を上げながら朝の挨拶をかけた。
しかしまだ朝じゃなかった。
寝起きに弱い俺は朝だと寝ぼけた挙句情けない声が出た。
恥ずかし...
「ふふっ...可愛い」
ミリアは口元がだんだん緩んでいった。
「漣君どうしたの?悪夢でも見たの?」
「いや...まぁ悪夢といったら悪夢だけど...ちょっと親父を思い出したの...やっぱり今まで親父が俺を育ててくれてたから...さ」
思い出してまた泣いてしまう。
男なのに男らしくないな...やっぱり俺は弱いな...そう思ったとき
「ふぇ?」
漣は本日二回目の情けない声が出た。
寝起きが弱いからではなく、急にミリアに抱きつかれたからだ。
ふんわりとした甘い匂いにやわらかい胸が漣を優しくまるで子供を抱くように包み込む。
漣はさっきまでの辛い思いや自己嫌悪などは一切頭から消えこの快感に身をゆだねていた。
「ミリア...おねぇちゃん...」
精神が幼児化した。
今までこの種類の優しさなど受けておらず母性を感じさせるミリアに身のすべてを託した...そんな感覚だった。
甘えてはいけない。
わかっているけど放したくない。
そんな戦いが起こってる中ミリアが一言。
「今は私に身を委ねて身も心も落ち着かせて」
優しい声にノックダウンした漣はそのまま瞼を閉ざして体の重心をミリアの方にゆだねた。
気のせいか知らないがほっぺにやわらかい何かが触れた気がしたが眠くてそんなことなんて気にしなかった。
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朝だろうか目を覚ますと隣にはすぅすぅと可愛らしい寝息を立てて寝ているミリアがいた。
起こすのもかわいそうだし立とうとすると自分の体かミリアの腕や足に絡まって抱き枕状態になっていることに気が付いた。
「れんくん......わたしがまもる...」
夢の中でも僕を剥げましたりしてくれているのだろうか...本当に彼女には助けられているばかりだ。
「れんくん...すき...」
おっとぁ?!なにか変なことを言ってないですかお嬢様?!
驚きで少し体をビクンとさせるとミリアはうぅんと言ってまた寝た。
するとドアが開いた。
「れんさm...」
隣に寝ているミリアを見て朝ご飯を伝えに来たメイドさんが申し訳ない!みたいなジェスチャーをしそのままご飯食べる?みたいなジェスチャーをした。
(朝ご飯かぁ...まぁでもいいかな)
とりあえず胸の前にばってんマークを作るとメイドさんがごゆっくりと言わんばかりに戸を閉めた。
(まだ寝とくか...)
そしてそのまま眠さに負けた瞼は自然と重くなっていった。
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