第15話 遅咲きの中年男 その10
1週間後……
僕は徳丸さん達と再び、海山を放置した無人島に向かう。
勿論、周囲に気付かれない様に深夜の時間帯だ。
問題無く、漁船からゴムボートで無人島に到着をする。
砂浜周辺に海山の姿は見えなかった。
「海山の奴…。奥に入って行ったか……」
「まぁ、此処じゃあ、野晒しに成るからな!」
「おい、山本!」
「お前は此処に居ろ!!」
「海山が奇襲を掛けて来るかも知れないからな!」
「分かりました。徳丸さん!」
(そんな体力、海山には無いと思うがな…)
(普通だったら、生きているのがやっとの筈だ…)
徳丸さんはそう言いながら、無人島の森林地帯に懐中電灯を照らしながら入って行く。
徳丸さんの舎弟や漁師の助手も、同じ様に海山の捜索に入り出す。
小さな島だから、大型の獣は居ないと思うが、その前に海山は生きているだろうか?
……
10数分後……
海山が徳丸さんの舎弟と漁師の助手に連れられて、無人島の森林地帯から出て来た。
薄暗くて分かりにくいが、海山は生きている様だった。
徳丸さんの舎弟と漁師の助手が海山を砂浜に下ろす。
「はぁ、はぁ、―――」
海山は肩で呼吸をしており、大分疲弊している感じだった。
頬の肉も“げっそり”と落ちていて、数日間は食べ物を口にしていない感じだ。
1週間だが、無人島生活の地獄をさぞかし味わっただろう。
徳丸さんは海山のその姿を、懐中電灯で照らしながら“まじまじ”と見ていた。
「おぅ!」
「意外にに元気だな。海山!!」
「ふっ…、ふざけるな……」
フレンドリーに声を掛ける徳丸さんだが、今にも、消え入りそうな声で喋る海山。
海山が居た場所は偶然良く出来た、
「さて、海山!」
「無人島生活はこれでお終いだ。良かったな!!」
「生きていて良かったよ!!」
徳丸さんが海山に笑顔でそう言うと、海山は恨めしそうに言う。
「こんな目に遭わせやがって……お前ら、絶対に警察に通報するからな」
海山は僕や徳丸さん達を睨み付ける。
「んっ……しても良いけど、海山……覚悟、有るんだよな!」
「悪いが俺は……堅気の人間では無いぞ…」
「ひぃ!!」
徳丸さんが脅し掛けると、海山は直ぐに萎縮する。
徳丸さんは話を続ける。
「
「なっ、何で……お前が、そんな事を知っているのだ!?」
当然、海山は仰天しながら言う。
「そんなの……こっちの世界の人間なら、お前の情報何て、直ぐに仕入れられるんだよ」
「……」
海山は唖然としていた。
「……取り敢えず、今からまた眠って貰うけど、海山さんに最後伝えたい事が有るんだわ!」
徳丸さんは海山を急に“さん”付けする。
遂にアレを言う時が来たか……
「なっ、何だ……。まだ何かするつもりか!?」
「いや、もう済んだ事だ!」
「海山さんはとても裕福な家だから、恵まれない子達の為に、海山さんの資産を少し寄付させて貰ったよ!」
「海山さんの家に有った現金・預貯金全額と、金目に成りそうな家電製品・家具等を全て売って、そのお金も寄付させて貰ったよ!」
「いや~~、海山さん。有り難う!」
「これで、かなりの恵まれない子達が助かると思うよ!!」
「俺も鼻が高いよ!!」
徳丸さんは“にこにこ”笑顔で海山に向けて話す。
今まで生気を失っていた海山だが、資産の殆どが無く成った事で、海山に一気に生気が戻り、怒りも瞬時に頂点に達する。
「ふっ、ふざけるな。てめぇーー」
「何、俺の金、勝手に寄付しとるんだーー」
「舐めた事してんじゃねぇぞ!!」
「……ふざけてないよ、海山さん」
「海山さんお金の、一部を寄付しただけだよ!」
「あっ、後、海山さん自宅も担保にして、それで得たお金も寄付したからね♪」
「赤○字とかの担当者が凄く喜んでいたよ!!」
海山を
「お前。預貯金全部と家具・家電売っておいて、何言っているんだよ!!」
「それに家も担保にしやがって、どうやってこの先、俺に生きて行けと言うんだよ!!」
「海山……それが、お前の罪滅ぼしなんだよ」
「お前が、馬鹿な事をしなければ良かったんだよ…」
「うっ……」
徳丸さんは此処で
その姿を見て、再度萎縮する海山。
(この男、本当の素人だったんだな……。反グレでも多少は抵抗するからな)
(親が死んで大金を得て、金さえ積めば、若い女が簡単に買える事を知っちまっただけか……まぁ、中年男に真面な恋愛何て出来る訳無いしな……)
僕はそんな事を思いながら、徳丸の兄貴と海山を眺めていた。
……
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