第9話 遅咲きの中年男 その4

 午後○○時……


 いよいよ、海山の確保開始だ!

 海山がプロ女性(風俗)を指定した時間通り、海山宅のインターホンをプロ女性が押す。


『ピンポーン♪』


 しばらくすると、インターホンから声が聞こえてくる。

 これが海山の声か。


『はい……』


「こんばんは~~♪」

「ファッション学園高○部から来ました。めるちゃんです~~♪」


 プロ女性は子供の様な陽気声で、インターホン越しで海山に話す。

 素か演技かは知らないが大した者だ!


『めるちゃーん!』

『待ってましたーー。今開けるね~♪』


 海山も相手がプロ女性だと分かると嬉しそうな声で言う。

 キモい男だ……中年に成るとこう成るのか?


 僕はこの“める(ちゃん)”と事前打ち合わせをしており『家に入る前に外で“ぎゅっ”として』と、言う様にして有る。

 この“める”と海山が抱きついている間、僕は背後から海山を襲う。


 今回は敏行も連れて来ている。

 俺1人で十分だが、海山を確保する時に“める”に万が一が有ると、只では済まないからだ。


 事が大きくなると、海山確保失敗にも成るし“める”に傷が付いてしまうと、徳丸さんだけの責任で負えなくなる恐れも有る。

 僕は静かに、海山が外に出て来るのを死角で待っていた。


“める”との会話後、直ぐに玄関の扉が開いて、海山が出て来た。


(彼奴が海山か……)

(“がたい”が良いと言うより、小太りの中年男性にしか見えないな…)


 海山の体型は筋肉質体型では無く、普通の腹の出掛けた中年男性に見えた。


(こんな男でも、若い女は金品で目が眩んで、性行為をしてしまうのか……言うまでも無いな)


 現に一部の馬鹿女は欲の為に、春を売って金を稼いでいる。

 この“める”だって、同類項だ。個人経営か組織が関わるかの差で有る。


 組織の場合、組織に売り上げをピンハネがされるが、身の安全は有る程度保証してくれる。

 それに、店の上位に食い込めば待遇も良くなる。


 この“める”って子は、童顔と低身長を売りにした子だ。俗に言うロリ系だ。

 店のランキングも上位に入って居るらしく、店も大事にしているし、“める”も楽しんで仕事をしている!?


(だからこそ、かすり傷すら付ける事は許されないのだよな…)


「めるちゃん~~。元気♪」


「うん! 元気だよ!!」

「海山さん♪」


「今日も、いっぱい楽しもうね!」

「めるちゃん!!」


「うん!」

「たくさん、良い事しようね、海山さん♪」


(海山の奴…。子供ガキと変わらんな)

(服装も、イエロー系のパーカにジャージズボン。近所のおっさんに依頼者の息子は負けた訳か…)


(自殺する様な奴だから、腕力に自信は無かったのだろうな…)

(こんなおっさんに、好きな女を譲る気が起きないのだけは同感は出来る)


「うん!」

「…でもね、海山さん♪」

「海山さんのおうちに入る前に、お外でハグして欲しいな♪」


「もぅ~~、めるちゃんは甘えん坊屋さんだな~~」


「うん!」

「甘えん坊屋さん!///」


「ここじゃぁ、ハグにしにくいからこっち来て、海山さん!!」


(やっと、動くか…)


“める”は海山の玄関前から道路側に出て、僕が確保しやすい線上まで歩き、海山もそれに付いてくる。

 これから己が、確保される事も知らずに……


「これだけ、広い場所なら良いね!」

「良いよ! 海山さん!!」


「めるちゃん~~~♪」


 海山は“でれでれ”した、くそキモい顔をしながら“める”に抱きつく。


「めるちゃんの身体、何時抱いてもキュートだね❤」


「うん、うん、海山さんもっと抱いてね❤」

「良い子、良い子もして上げる~~♪」


「めるちゃん~~❤」


“める”はそう言いながら海山の頭を撫で、そして僕の方を見る。

“める”からのOKのサインだった……


(頭を撫でている間、奴は100%無防備に成るからな!)

(“める”って女……実は賢い子なのか!?)


 僕は頭を撫でる指示までは出していない。

“める”が自発的にやった。

 僕は敏行と目配せをして、一気に海山に襲いかかった!

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