帰り道
授業のほとんどを寝て過ごした俺は学校での記憶なんてほとんどなく帰路についていた。勉強のことなんて少しも頭になく、家に帰ってゲームでもしようかと考えていたら「佐々木君~」という声が聞こえた。
だが、自分の名を呼ぶような友達もいないから同性同名だろう。と、考えているとその声の主は俺の隣にきた。
…?俺の隣にきた?
「佐々木君?何で無視するの?」
「……誰?」
自分の記憶を探っても見つからない…。いや知ってるけど、なかったことにしたいから取り敢えず知らない振りを装っておく。マジで記憶から抹消したい。
すると電話が鳴った。俺に電話をかけてくる相手なんていない上に名前が非通知だったため即切った。
「何で出てくれないの?」
「正体お前かよ。てか、何で俺の電話番号知ってんだよ」
「企業秘密です」
そいつはあざとくそう言った。少しドキッとしたが普通に怖くね?名前は知られててもわかるけど、電話番号はどうやって知った。俺の電話帳には家族の名前しかない…。
俺が頭に「?」を浮かべているとそいつが口を開いた。
「ねぇ、佐々木君?私の名前はお前じゃないよ?」
「いや、そもそもお前の名前を知らない。お前が俺を置いて一人で逃げたからな」
そう、俺はこいつの名前を知らない。だから、お前とかこいつとかで呼ぶしかないのだ。まぁ、名前を知ってたとして呼ぶ気もないけど。
「確かにそうだね。私の名前は死神。よろしく」
「……本名は教えないのか」
「え?これが私の本名だよ」
「は?」
素っ頓狂な声をあげてしまったが、普通におかしくね?問い詰めようかと思ったがこの自称死神は「これが私の本名だよ?」という目をしている。
「はぁ。で、死神は何の用だ?」
「彼氏彼女だから一緒に帰るのは当然じゃない?」
彼氏彼女という言葉に反応して周りの人の視線が集まった。初めは周りから妬みを感じた。波風立てたくないので歩く足を少し早めた。
「何で先行こうとするの」
俺はそれに対して無言を返したが、ふと死神が置いていった花を思い出した。
「そういえば、屋上に置いて行ってたぞ」
そう言って俺は白い花をポケットから出す。さっきは気付かなかったが花弁の裏に赤いシミがあった。
「それは……、君にあげるよ。その花はスノーd……じゃなくてスズランだよ。ドライ加工してあるから枯れることはないと思うよ」
「やっぱりスズランか」
そう言うと俺はスマホを取り出し、スズランの花言葉を調べた。花言葉は【幸福が再び訪れる】らしい。まぁ、死神は嫌がらせを受けていたし願掛けみたいなものか。
だが、やっぱり違和感がある。花言葉を調べたときに出てきた画像と少し違う。花弁が違う気がする……。まぁ、花についてはほとんど分からないから気のせいか。
そう考えていると答えはわかりきっているが疑問が浮かんだので死神に投げてみることにする。
「話変わるけど、死神。お前、嫌がらせっっっ」
死神が嫌がらせという言葉を聞いた瞬間に雰囲気がかわった。やばい。地雷踏んだかもしれない。こんな時は取り敢えず適当に謝ろう。そうしよう。
「その、死神?……すまん」
「……私の家こっちだから」
死神はそう言って去ってしまった。嫌われた気もするが、元より強制的に付き合わされた仲だから、これで別れるとかになったら万々歳だな。そう考えながら一人帰路を辿った。
その帰り道に、死神の雰囲気が怖かったから一応電話番号は登録しといた。本当に人間なのか疑うレベルで怖かった。正直二度と会いたくない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます