第107話 VSジャックと豆の木

 茶玉、赤玉、青玉、水玉。

 ありとあらゆる攻撃をする。

 だけどソイツには効果がなかった。

 俺の攻撃が目の前で消えてしまう。

 ガーン。

 攻撃スキル無効化持ってるじゃん。

 物理しか効きませんよ系ボスキャラじゃん。



 ソイツが近づいて来る。

 キモい。

 近づけば近づくほどキモさがわかる。

 頭に付いた大きな角。それは異様なまでに大きい。サイズ感大丈夫っすか?

 顔は老人。死にかけのお爺ちゃんみたいな顔をしている。

 なのに胸の膨らみが二つ。

 アンバランスというよりも悪ふざけ。

 体は白い毛に覆われている。線は細そう。

 キモ聖獣と物理で戦え? 触るのイヤだなぁ。


 キモ聖獣が立ち止まる。

 地面に細長い手を付けた。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ。

 地面から地響き。


 なにしてんだよ?


 何かが地面から俺を押し上げた。


『ジャックの攻撃スキル、豆の木が使用できるように成長しました』


 脳内に知識の声が響く。

 ちょっと待ってください。

 急に情報過多なんですけど。

 そう思っている最中も俺は空へ空へ押し上げられている。

 地面から豆の木が生えて俺の体を押し上げていく。


 ジャックという聖獣。

 その攻撃が豆の木。

 そして空まで貫く、この木。

 ジャックと豆の木じゃねぇーか。

 急に童話みたいな奴が出て来た。

 あのキモ聖獣は、あの童話の少年の最終形態みたいなこと?

 たまたま名前が被っているだけ? 攻撃スキルが被っているだけ?


 でも豆の木だったら俺と相性がいい。

 だって俺には『植物を操る』スキルがあるのだ。

 一直線で空に向かっていた豆の木を俺はジャックに向かわせた。


 グネッと曲がった豆の木がジャックに刺さろうとした瞬間。

 やっぱり豆の木は消えた。

 攻撃スキル無効化が発動したのか?


 ジャックが地面に手を付けた。

 ゴゴゴゴゴ、という音と共に俺の足元から豆の木がドサと生えて来る。

 バカなのかコイツ?

 もうお前の豆の木は俺には効果ねぇーんだよ。

 豆の木を操作して、ジャックに向かわせる。

 攻撃スキル無効化で豆の木が消滅。


 消滅したと同時に俺はジャックに向かって、光太郎パーンチ。

 光太郎キック。

 倒れたジャック。

 角を持って、ボキッとやっちいました。

 角を取っちゃいました。


「グギャーー」ジャックの雄叫び。


 オラオラオラ、と叫びたい気持ちを我慢して、無表情でジャックの腹に光太郎パンチを連打で打ち込む。

 ジャックの口から緑っぽい液体が飛び出す。

 殴りすぎてジャックの細い体が、ブッチっと千切れた。

 千切れたところから緑の液体。それと寄生虫みたいな内臓がドロッと溢れた。


『レベル100に成長しました』

 と知識の声が聞こえた。

 俺、もうそんなレベルになってたっけ?

 たぶん知識の声を俺は普通に聞き逃している。


 さすがに死んでいるからバグ呑みできた。

『ジャックの固有スキル、攻撃スキル無効化が使用できるように成長しました』


「キモっ」

 と俺は呟いた。

 手に付いた緑の液体を地面に擦り付けた。

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