第106話 魔王城

 内藤さんとも別れの挨拶をして俺は空を飛んだ。

 それ行け! 小林光太郎。

 やべぇー、ナチュナルにそれ行け、とか書いちゃった。

 これでもパロ警察来ちゃいますかね?

 パロ警察というのはパロディーを取り締まる警察のことである。

 タイムスリップをして過去を改変したらタイム警察が来るように、パロディーをやるとパロ警察がやって来て逮捕される。

 そう言えば召喚する時に『君に決めた』みたいなことを言っていたような?

 あれもパロ警察が来ますかね?

 最終回じゃないのに反省会を始めそうになっている。

 まだ反省会は早ぇーよ。


 朝日に向かってビューーーンと飛んでいたら大きなお城が現れた。

 ザ・魔王城。

 中世のお城。

 ミクがココにいるのかもしれない。

 近づいて行く。


 うっ、近づくだけで鳥肌が立つ。

 ココにはアイツがいる。

 城のてっぺんの窓。

 牢屋のように冷たい黒い棒が並んでいる。

 彼女の横顔が見えた。


 高田ミク。


 ようやく君が目の前にいる。

 ずっと探し続けた君が目の前にいる。

 生まれる前からずっと君のことを探していた。


 殺されているんじゃないだろうか? と本当は不安で仕方がなかった。

 俺は窓に近づいて行く。

 手を伸ばせば届くような距離。

 でもコレ以上近づいたら、アイツに気づかれるかも?

 刃のような肌が痛くなるようなオーラー。

 アイツがやって来たら俺は殺される。

 今の俺では絶対に勝てない。

 

 ミク。絶対に助けてやるからな。


 俺は城を後にした。

 アイツはミクを殺さないでいてくれた。

 もしかしてアイツはミクの事が、まだ好きなんじゃないだろうか?

 ミクと英二は付き合っていた。


 どうして付き合っていたんだろう?


 それだけが疑問だった。

 もしかして今もラブラブだったら?

 よからぬ事を考えてしまった。

 

 俺はミクを助けに行こうと思っているけど、実は2人はラブラブで、俺が邪魔者だったら?


 でも前世で、英二はミクを殺している。

 前世の記憶をミクが持っていなかったら?

 普通に今の英二と付き合えるのか?

 でも今の英二って魔族だよ?

 あっ、俺も魔族だ。

 会いに行ったら怯えられないかな?


 うわぁー不安がいっぱいになってきた。

 今も英二と付き合っていたらどうしよう?

 魔族になった俺を受け入れてもらえなかったらどうしよう?

 

 そんな事はない。

 大丈夫。

 彼女は俺のことが好きだ。

 でも、それって前世の記憶じゃん。

 今世では英二と付き合ってたじゃん。

 なんで付き合ってたんだよ?

 

 魔王城を通り越して、さらに東へ東へ進んで行くと、それは見事な山が現れた。

 たまやー。

 たまやーは花火の時だったわ。

 やっほー。

 なんでやっほー何だろう? 

 たまやー、は玉屋さんっていうのを聞いたことがある。花火を製作する会社名を叫んでいるのだ。やっぱり玉屋さんはすげぇーわ。「たまやー」

 でも山にやっほーと叫ぶのは意味がわかんない。

 やっほー株式会社が山を作ったんだっけ? さすがやっほー株式会社。こんな見事な山を製作しやがって。「やっほー」

 山びこが帰ってくる。

 にくいね。やっほー株式会社はおうむ返しする山を製作してくるなんて。


 頂上付近。

 超絶に禍々しいオーラー。

 それは一目見ただけでわかった。

 伝説の魔剣。

 スーパー魔剣誰でも倒せるぜカリバーだっけ?

 やべぇー名前を付けられた魔剣。

 岩に突き刺さっている剣からは黒い煙が立ち込めていた。

 魔剣を掴もうとした。

 なんだったら、この剣を引っこ抜いて、聖獣を倒さずにラスボス戦に行こうと思っていた。

 省エネが一番。

 避けれる戦いなら避ける。

 でも剣を掴む前に、ソイツが、どこからともなく現れた。

 気づいたら俺は吹っ飛んでいた。

 木々にぶつかり、地面に落ちる。

 攻撃して来た奴を見た。

 ソイツは二足歩行だった。頭には鹿のような大きな角が生えている。

 体は白い毛に覆われていた。

 老人のような顔。枯れ木のような手。足は鹿っぽい。

 たぶんメスである。

 だって胸に大きな膨らみが二つある。


 凄いスピードで、ソイツが俺に向かって走って来ている。

 怖ぇーよ。

 めちゃくちゃ尖らした茶玉を出す。

 ソイツは避けもしなかった。

 ソイツに茶玉がぶつかったと思ったら、茶玉は消えて無くなった。

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