第104話 お嬢の気持ち

 俺はお嬢の隣にいた。

 目的は一つである。

 俺の固有スキルにはエッチな事をしたら、欠損部分が再生できるほどの治癒能力がある【淫欲】というスキルがある。

 

「お嬢、ちょっといいか?」

 と呼び出したのは良かった。


 現在の時刻はわかんねぇーけど、夜。

 街灯の灯が無いので闇の中。

 枯れ木に炎を灯して俺達はベンチに座っていた。

 

「なに?」

 とお嬢が尋ねて来る。

 うん、と俺は頷く。

 どういう風にエッチしてくれ、と伝えればいいんだろう?

「今日の戦いで、最後の腕もやられてしまった」

「そうみたいね。不便そう」

「相当不便」

 と俺が言う。

「この腕じゃあ、ラスボス倒しに行けねぇーんだ」

「仕方がないよね」

「日本を地球に戻す。戻し方も知ってるんだけどなーーーー」

「頑張って」

「えっ? 頑張ってじゃなくて」

「なに?」

 お姉さん、ワシ腕がないですねん。何を求めてるかわかってくれまへんか?

「別に」と俺は言った。

「何も無いんだったら、私戻るね」

「ちょっと待って」

「えっと、うん、まだ隣に座っといてください」

「なに?」

「エッチしてほしいんだけど……」

「……」

「もしかして好きな人とかできました?」

「別に」とお嬢が言った。

「それじゃあ日本を救うと思って、俺とエッチしてくれませんか?」

「……」

「俺とするのイヤ?」

「日本を救うとかじゃないんじゃない?」

 とお嬢が言い出す。

「光太郎が私のことを、どう思っているのか知りたい」

「好き」

「そんなに軽いのじゃなくて」

「わかった。大好き」

「軽すぎ」

 お嬢が立ち上がる。

「ごめん。俺の言葉が軽かった?」

「軽い。嫌い。死ね」


 日本を救う、よりも、お嬢は俺がどう思っているのかを知りたいらしい。


「お嬢のことは本当に好き。でも俺には他に好きな人がいる」と俺は言った。

「最低だろう……きっと日本が地球に戻っても俺はこの世界に残る。ラスボスを倒しても、倒せなくても、2度とお嬢には会えないと思う。だからお嬢には俺のことはどうでもいいと思っていてほしい」


 お嬢は立ち止まっていた。

 俺は彼女の背中を見た。

 揺れていた。

 もうエッチはできないかも、と思った。


「なによそれ」と振り返ったお嬢が泣いていた。

「腕を戻すためにエッチしてほしいだけじゃない」

「……そうだよ」

「私は光太郎のこと好き」

「うん」

「光太郎のこと好きなの」

 お嬢に太ももを蹴られる。

 別に痛くない。

「うん」

「もういいじゃん。幼馴染の女の子なんて、もういいじゃん」

「……」

「きっと、もう死んでるよ」

「……」

「私でいいじゃん」

「……」

「ねぇ、光太郎」

 とお嬢が言った。

「大っ嫌い」


 それから俺はお嬢に4、5発殴られた。

 別に痛くなかったけど、倒れた。

 腕が無いから立ち上がることはできずに夜空を見上げた。

 怖いぐらいに星が綺麗だった。

 

 お嬢が俺に跨った。

 タコ殴りにされるんだろう、と身構えた。

 だけと違った。

 彼女の唇が俺の唇に重なった。


「日本を元に戻すために、手伝ってあげるだけなんだからね」

 と彼女は怒った口調で言った。


 念のために完全防御カマクラを出す。

 土で半円形のモノを作り出す。

 その中に入れば外からは何も見えない。


 そして俺の腕が再生された。

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