第97話 人間のコロニー
「どこ行ったか俺には検討もつかん」
「私には検討がつくよ」
「天才じゃないっすか」
「そんな事ないよ。たぶん、みんな考えることは同じだと思う」
「さぁ、どこ行ったか答えよ」
「周りを見渡してごらん」
「瓦礫しか無いっすよ」
「そうよ。ほとんどの建物は壊れているわね。イフリートのせいで」
「それじゃあ遠くまで行った」
「その可能性もあるわね」
「他の可能性もあるんっすか?」
「〇〇市ってバーストしたじゃん。同じパーティーに〇〇市に身内がいた奴がいるのよ。もしかしたら見に行ったのかもしれない。そこに〇〇市があったら? 人間がコロニーを作っていたら? シェルターの中にいたら食料はジリ貧。アイツ等なら人間のコロニーがあると気づいたら行くんじゃないかな?」
俺のパーティーにも〇〇市に身内がいたメンバーがいる。
もしかしたら同じような発想で3人も〇〇市に向かったかも、と思った。
「すげぇー。名推理」
「推測の域を越さないけど」
と内藤さんが言う。
「たぶん間違いないっすよ。行きましょう〇〇市」
「そこ魔物」
俺は内藤さんと繋いでいた手を離す。
そして茶玉を出して攻撃。
ギュン、と生き物が潰れる音。
手を握り直す。
「この手はいつまで握るんでしょう?」
内藤さんが尋ねてきた。
「エッチしてくれたら離しますよ」
「させる気はないから」
「減るもんじゃないんだからエッチしましょうよ。むしろ増えますよ」
「そんなにエッチしたいんだったら、他の子を見つけて」
「この状態で言いますか? 俺、エッチしないと欠損部分が治らないんっすよ。もし強い敵が来たら俺達死にますよ?」
「出会わないように誘導するから大丈夫」
「俺の言う強い敵って、そこらの魔物の強い敵じゃなくて、魔族のことっすよ」
「……」
とにかく俺達は〇〇市に向かって歩いた。
地形は若干変わってるみたい。
変なところに林があるし、湖がある。
魔物がいっぱいいそうなので遠回りして行く。
俺にとって魔物は敵じゃない。
だけど今の状態で囲まれたらヤバい。
片手しか使えないし、羽が無いから機動力もない。
弱い魔物でも取り囲まれたら負けるかもしれない。
俺が倒されなくても、彼女は守りきれない。
だいたい同じ場所に〇〇市があった。
ココからがバーストして奪われた〇〇市です、とわかるように大きなひび割れがあった。
つぎはぎしてつなぎ合わせた感じである。
〇〇市に入る。
「よっ、名探偵」
内藤さんの推理は合っていた。
「なによ」と彼女が言う。
「たしかに建物の中は荒らされているけど壊れていないっすね。ココなら人間がコロニーを作っていてもおかしくない」
内藤さんが迷いなくスタスタと歩く。
「コロニーの場所わかるんっすか?」
「わかんないわよ」
「何となく歩いているんっすか?」
「っな訳ないでしょう」
「どこ向かってるんですか?」
「光太郎君ってバカなの?」
「バカっていうか、天才型なんでしょうね。感覚で生きてます」
「わかったバカなのね」
と彼女が納得する。
「〇〇市には避難所になっている公園があるのよ。アソコなら公園の周りに壁もあるし、体育館のような建物もあるし、シェルターもある。コロニーを作るには最適だし、避難して来る人間の拠点になりそうだから、そこを目指しましょう」
「天才っすね」
「君がバカなだけだと思うよ。他に大勢の人間を収容できる場所が無いのよ」
と彼女が言う。
「もしかしたら、みんなバラバラに散って隠れているかもしれないけど」
と彼女が言う。
「でも数人の冒険者がいて、魔物の脅威からみんなを守ることができるのなら一箇所に集まって守った方が効率的だし」
「賢いんっすね」
「そんな事、無いわよ。私みたいなサポート系のスキルは頭を使えなくちゃ死んじゃうのよ」
またしても推理はピッタンコカンカン。
公園の周りの壁を瓦礫などで強化している。
これは、どっからどう見ても、人間の作業っす。
「手を離しましょう」
「嫌だ」と俺は駄々をこねてみる。
「コロニーの中に女の子がいるかもしれないわよ。私達が手を握っていたらどう思うかしら? エッチから遠のくんじゃない?」
手を離した。
公園の出入り口。
学校の校門みたいな門。
そこに門番を務める人間が2人立っていた。
「頼もぉーー」と俺は言った。
恥ずかしいからやめて、と隣の内藤さんが呟いた。
「アナタ達は?」
門の向こう側にいるおばさんが尋ねた。
ボロボロの服。手にはお手製の槍が握られている。
このおばさん、俺は知っている。
嫌な汗が背中に流れた。
「私達を見捨てて、どこに行ってたのよ」
とおばさんが呟く。
おばちゃん教頭先生だった。
でも表情がやつれている。
「まぁいいわ」とおばちゃん教頭先生が呟いた。
「冒険者がいてくれたら私達も安心だから」
俺、このコロニーに入りたくない。
シェルターの人間がココに逃げて来たんなら、ココにもおばちゃん教頭先生がいてもおかしくない。
「門を開けましょう」
おばちゃん教頭先生が門番を務めていた相方に言って、門を開けてくれた。
「どうもっす」
と俺は頭を下げた。
「怪我してるみたいね」
とおばちゃん教頭先生が言った。
「聖人様が中におられるから、治してもらいなさい」
「聖人様?」
「ココの人はみんな聖人様に癒されているのよ。もしかしたらアナタの腕も治るかもしれないわよ」
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