第91話 VS最強最強 ー神田英二視点8ー

 今の俺はミクにアピールしている状態なのだ。

 人間を俺は守ってます。

 だから誰も殺す気なんてなかった。


 鬼お面女が土の槍で攻撃してくる。

 俺が本気で攻撃したら殺しちゃいそうだし、でも加減したら攻撃が当たらん。

 土で作られた狼に乗った女。

 ちょこまかと動く。

 コイツはどうしたらいいんだろうか?

 適当に追い出すか?

 万有引力を放出する。

 魔力を込めず、小さい黒い玉を大量に放出する。

 そのうちの一つが当たる。

 鬼お面女の体が重たくなった。

 ちなみにお面なのに、なぜ女と認識しているのかというと、おっぱいがあるからだ。

 鬼お面女がノソノソと動く。

 俺は彼女に近づき、キック。

 ただのキックですよ。

 めっちゃ吹っ飛んだ。

 そりゃあ魔族ってステータス高いから、人間ぐらい殺すの容易いんですよ。

 いや、殺す気なんて無いんだけど。

 大丈夫か?

 起き上がって来た。大丈夫みたいです。

 土で作られた鷹がコッチに来る。

 コイツのスキルは土なんだろう。

 意外と土って何でも出来るんだな、と感心した。

 でも土で作られた鷹。俺には泥だんごですよ。

 ちょっと拳で殴ったら崩れた。

 

 鬼お面女がすげぇー量の鷹を出してくる。

 俺はシューティングゲームよろしく、小さい黒い玉を大量に出す。

 全部命中。

 もういいからコイツ帰れよ。


「去れ」と俺は言ってみる。

 去れ、って言い方は、ちょっと気取ってしまかったかな?


「お前の目的はなんだ?」

 鬼お面女が尋ねてくる。


 目的なんてねぇーよ。

 こっちは人間をゴブリンから守るのに必死なんだよ。


「お前等、人間に語る必要もないだろう」

 ちょっとふざけすぎたかな?


「お前を野放しにする訳にはいかない」


 やる気になってねぇー?


 うぉぉぉぉぉ、と鬼お面女の雄叫び。


 土の防具を体にまとっていく。


 マジかよ。本気モードっぽいけど。

 早く帰って来れよ。

 これ倒したら帰って来れよな?


 俺は飛んで、彼女に近づいて行く。

 キック。

 飛び上がった鬼お面女。

 天空に先回りして、攻撃。

 彼女が下に落ちて行く。

 コンクリートを破壊して地面にめり込む。


 殺しちゃったかな?

 これでも加減してあげてんだぜ?

 早く帰れよ。


「私はみんなを守らなくちゃいけない」

 立ち上がりながら鬼お面女が言う。


 みんなは俺が守ってあげるから帰れよ。


 パンチ。

 鬼お面女が吹っ飛ぶ。

 ビルを突き破って行く。


 さすがに立ち上がれねぇーだろう。


 地響きが聞こえた。

 

 なんだろう?

 そう思って俺は空を飛んだ。


 領域から出ていたゴブリン達が帰って来ている。


 鬼お面女に俺は近づいた。


「もう少ししたらココも終わりだ」

 と俺は言った。


 ボロボロになった鬼お面女が睨んでいた。


「あの子達」と彼女が呟いた。


 彼女が土の狼を作り、走り始めた。

 俺は彼女を追った。


 コッチに帰って来たらコイツも巻き込まれるだろうから、コッチに帰って来れないように道を潰して行く。


 防犯ブザーの音が聞こえた。

 地上に光太郎がいた。

 なんでコイツがここに?

 もしかしてミクを助けに来たのか?

 彼は炎の小さな玉を出してゴブリン達を倒していた。

 しかも、なぜか黒髪の女の子とキスしている。

 小学生も背負っている。

 女の子のサンドイッチ状態である。

 どういう状況なんだよ。


 女の子とキスしているってことは、ソイツの事が光太郎は好きなんだよね?

 ミクのことは諦めたってことなんだよね? 


 鬼お面女が光太郎達に近づいた。

 鬼お面女は大きな土が作り、放出してゴブリンを一掃した。

 その道を狼が走っていく。

 鬼お面女が光太郎達を土で作った狼に乗せた。

「俺達には行くところがあるんです」と光太郎は言った。

「今回は我々の負けだ。無駄に命を落とす必要はない」 

「助けたい人がいるんです」


 俺は彼等がコッチに来ないように黒い玉を放出して道を壊した。

 巨人が踏みつけたみたいに道がぐちゃぐちゃに壊れた。


 光太郎と目が合った。

 俺は久しぶりに会った親友に対して微笑みかけた。

 光太郎が前世の記憶を持っているとは考えられなかった。だって前世の記憶を持っているような行動は何一つ取っていない。どれだけ考えても、コイツはただのバカだった。

 

 光太郎が俺を見てビビっている。

 もしかして俺のこと気づいてない? こんな姿だから仕方がないか。

「なんでお前が?」と光太郎が呟いた。


 気づいてるのかーい。

 それじゃあ何でビビってんだよ。


 あっ、今の俺って悪者になってんじゃねぇ?


「まぬけ」

 と俺は呟いた。

 こんな風に登場したら俺は悪者じゃん。

 本当に間が抜けてる。

 タイミング悪い。


「違うんだ、光太郎。俺の話を聞いてくれ」

 と俺は言おうとした。

 でも次の瞬間には異世界に転移していた。

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