第88話 ゴブリンの全校朝礼 ー神田英二視点5ー
なにかとんでもないことになってますぜ。
俺は知らん。
知らん、と言わせてください。
みんな修行しまくって、ゴブリンもビックリの戦闘力を持つようになった。
ゴブリンのくせに体もゴツいし、数も多い。
冒険者から取った武器を持っている奴もいる。
ソイツ等が集まっていた。
下級の魔物のくせに、全校朝礼でもするように綺麗に整列している。俺の前で。
「主人様、バンザーイ」と大声で叫んでる。
近所迷惑だから止めてほしい。
近所って誰もいない。
主に俺が迷惑しているから止めてほしい。
しかも俺の前で整列するもんだから、俺が校長先生みたいになっている。
ワシがお前等に有り難くない長い話を聞かしたろっか?
終業式や入学式の校長先生の話が長いのは三つの項目を喋らないといけないからである。
生徒に対して、保護者に対して、PTAに対して。
リーダーには説明義務が生じるのだ。
だから生徒はしょーもない話に聞かされる。だって生徒には関係ない話も混じっているから。
俺が言いたいのはココで喋ることを求められても、ゴブリンに対しての説明義務を俺がおわないといけないのか? ということである。
ちなみに、なぜゴブリン達がテンション上げ上げで絶叫しているのかと言うと、ゴブリンの長のウンコ野郎が修行が終わったと自分の腐った頭で考えて勝手に『地球を侵略しますか?』という脳内の声にイエスと答えてしまったからである。
何を勝手に決めているんだ。
一度、リーダーに相談しろ。
長がイエスと答えた瞬間から、ダンジョンの出入り口が消えて、地面が黒くなっている。
ダンジョンの渦巻く黒が、和紙に墨汁をこぼすように広がっていた。
広がるスピードを見ると1時間もすればダンジョン内の魔物は、渦巻く黒に飲み込まれるだろう。
ちなみに、みんなが修行に明け暮れている時に俺が何をしていたのか?
ダンジョンのシステムから説明します。
我々、地球人が(自分のことを地球人と言わさせてもらいます。ツッコまないでね)ダンジョンと呼んでいる場所は、結界の中である。
結界、とは何か?
入って来た冒険者を異世界の外に出さないための壁である。
それじゃあダンジョン内の魔物は外に出れるのか?
そりゃあ出れます。
だってココでゴブリン達が生活している訳じゃないもん。
よく見なされ。メスのゴブリンおらんやろう。
ゴブリン達にとってダンジョンというのは、……魔族達がなんか守れって言ってるわ、守ったら領土貰えるらしいわ、アイツ等の言うこと聞いとかな殺されるから聞いとこう、ぐらいのモノらしい。
もちろん冒険者が来たら全力で倒す。
倒す、というか捕らえる。
女冒険者とか彼等にとっては好物なのだ。
さすが性欲モンスター。
それで結界内から抜け出る扉がある。
扉って言っても見えん。
この木と木の間を抜けると外に出れますじゃ。
ダンジョンの近くにはゴブリンの町があった。
木を重ねて作った家。
その町のゴブリン達も俺は使役した。
そして俺は木で作られた1軒の家を借りた。
俺の世話はメスゴブリン達がしてくれた。
4人のメスゴブリン。
冒険者との交配で出来た美しいゴブリンが選抜されたらしい。
美しい、って言っても女子プロレスラーを全身緑色に塗った感じである。
しかも性欲モンスターで、俺とエッチがしたいらしく、事あるごとにセクハラをしてくる。
こっちはそんな気がないから滅入る。
ゴブリン達が修行に励んでいる時に、俺は緑色の女子プロレスラーに世話されながら考えていた。
何を考えていたかって?
それは今後についてのことだ。
まずは一通り前世の悪行を恥じた。
悶絶した。
魔王になると思ってオゴっていた自分を殺したいと思った。
酷いことをした人達に謝りたいと思った。
殺した人達も大勢いる。
罪を問われなくても、自分がした悪行は、いつか自分を責めるもんなんだ。
神様は見ていなくても、いつでも自分は見ている。
だから自分の中身が変わった時、鋭利な刃物になって思い出達が突き刺さってくるもんなんだ。
一通り前世の悪行に悶絶してから、それじゃあ俺はどうしたらいい? と考える。
異世界に帰るか? 地球に帰るか?
答えは出ん。
そしてゴブリンのバカ長が喜んで、地球侵略しますかって声にイエスって言っちゃったと報告して来て、ダンジョンに行ってみると地面に黒い渦が出来ていることを確認。
ゴブリン達が俺の前に整列して今に至る。
地球を侵略したいと思っている彼等に俺は何て言えばいい?
つーか、俺が何かを言わなくちゃいけないのか?
俺、知らん。
それじゃあダメなのか?
リーダーの声を待っているっぽい。
お前等は俺をリーダーだと思っているけど、お前等のリーダーだと俺は思ってねぇーからな。
本当は地球なんて侵略すんじゃねぇー、と言いたい。
言いたいけど、そんな事を言ったら暴動が起きる。
「まぁ、頑張れよ」
と俺は一言だけ言った。
みんな奇声を発して盛り上がった。
やべぇーなコイツ等。
ゴブリン達が黒い渦に自分の意思で飛び込んで行く。
「アソコに飛び込めば地球に行けます」
と長が言う。
ダメじゃん。
なんつーことしてくれているの?
「我々ゴブリンチームが全滅せずに8時間、地球を侵略したら、我々は地球の領土を貰えます」
最悪じゃん。
なにそのルール。
「主人様のおかげです」
と長が言う。
俺は何もしてねぇーよ。
「主人様が修行するように言ってくださったから、きっと我々は全滅することなく、地球の領土を貰えます」
全滅しろよ。勝手に。
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