第80話 VSイフリート

 師匠と離れて俺は地元の小学校に向かった。

 胸騒ぎがする。

 早く行かなければ、と思った。

 それじゃあ師匠とイチャイチャしてないで早く行けよ、とツッコミは当然でございます。

 だから、その分だけ急いだ。

 マッハのスピードで俺は飛ぶ。

 ある所から地上に変化があった。

 瓦礫の山が続いていた地上が、あるところから火事が多くなったのだ。

 体に悪そうな煙が上空に登っている。

 悪い予感がした。

 地元の小学校に近づけば近くほど火事が多い。



 そしてイフリートと視認した。

 全身を炎で身にまとっている大男。

 イフリートの足元は大火事になっている。

 アイツが通った道のりが火事になっていたんだろう。

 そしてイフリートに4人の冒険者? が対峙している。

 冒険者? っと首を傾げたのは4人とも私服姿だったからだ。防具を着ているわけでもない。

 ココは日本である。油断していた時にダンジョンバーストが起きてしまったんだろう。

 イフリートに近づいて行く。


 俺は4人の冒険者のことを知っていた。

 しかも、そのうちの1人は俺をココに導いた女だった。

 名前は知らない。

 鬼ヶ島に入る時に〇〇小学校に来て、と言ったお化けである。

 

 そういえば〇〇小学校はこの辺じゃねぇーか?

 瓦礫で道がわからなかったけど、たまに目印になる建物が残っていたりしたから、それを頼りに来た。

 小学校は無かった。

 少し前まで小学校だったかもしれない瓦礫があるだけだった。


 イフリートが手を上げ、頭上に大きなマグマを作り出した。

 イフリートが作り出したマグマが放出したところで俺が間に合う。

 

 一瞬、頭の中で考えた。

 攻撃を受けてスキルを覚えた方がいいんじゃないか? でも絶対にコレを受けたら死ぬよな?

 俺が死ななくても冒険者達は死ぬだろう。

 もしかしたらシェルターに直撃して、地球を抉るように避難していた人たちも死ぬかも。


『大洪水』


 俺の手から大量の水が発射される。

 それは海、と表現した方がいい量だった。

 これを使えば魔力は枯渇するかもしれない。

 海のような大量の水。

 でも発射口が手の平。小さい発射口から大量の水が出るとどうなるのか?

 槍のように強い水が大量に放出される。

 イフリートが発射したマグマが冷えて岩になり、砕けて地面に落ちる。

 そして凶器になった水がイフリートを襲う。

 イフリートの体の炎が一気に消えて行く。

 そしてイフリートの纏っていた炎が消え、大精霊が倒れた。

『レベル88に成長しました』

『レベル89に成長しました』

 と脳内で声が聞こえる。



 炎が消えたイフリートはゴツゴツとした岩の鎧のようなものを着ていた。

 俺は大精霊に近づいて触れた。


『バク呑み』


 イフリートを呑み込んだ。

『イフリートを使役しました。召喚が可能になります』


 俺は倒れた。

 大洪水は魔力を消費しすぎる。

 途中で蛇口をひねるように水を止めた。だけど魔力は少ししか残っていない。

 地面は大洪水のせいで2センチほど水が溜まっていた。


 ぽちゃぽちゃと音がした。

 誰かが近づいて来た。

 ソイツを見る。

 ボブヘアーを金色に染めて、服はジーパンとネルシャツだった。

 寒いのにジャンバー的なモノは着ていない。服はボロボロだった。破れていたり、血が付いていたりする。

 ソイツは鬼ヶ島に行く前に出会った女性のお化けだった。

 お化けじゃねぇーんだろう。

 あれはコイツのスキルなんだろう。

 彼女は剣を持っていた。

 その剣を振り上げて、俺に刺そうとした。

「ちょっとちょっとちょっと」

 と俺は叫んだ。

 女性がキリっとした目で俺を見る。

「お前が俺を呼んだんだろう」と俺が叫ぶ。

「私が魔族を呼ぶわけがない」

 俺は人間バージョンに戻る。

「アナタは鬼ヶ島で出会った」

「そうだよ」と俺が言う。

「お前のスキルか何か知らねぇーけど、鬼ヶ島に入る前にココに来いってお前に言われたから来たんだよ」

 彼女が腰を抜かしたみたいに水浸しになった地面に座り込む。

「助かったのね。私達」

 女性が涙をボロボロと流す。

「あんな化け物、倒せる奴なんていないと思ってた」と彼女が言った。

 仲間達が集まり、4人が化け物を討伐したことで歓喜して抱き合っている。

 いやいや、別にいいんだけど、倒したのは俺だよ?

 感謝の言葉とか別にいらないけど、シェルターに俺を連れて行ってくれねぇーかな? そこに妹と母親がいるんだ。早く無事を確認したい。

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