第73話 VSシヴァ

 氷の弱点って炎でしたよね?

 赤玉をシヴァに当てたんですけど、全然、効いている感じがしない。

 どうすんのよコレ?

 なにかシヴァ様、華麗に回転しましたよ?

 やべぇー空から氷柱の雨が降り注いで来てる。

 俺、1人だったらどうにかできる。

 でも、これ範囲広すぎ。えっ、もしかして逃げた5人にも当たるんじゃねぇ?

 俺は氷柱が落ちてくるよりも先に5人の元に行く。

 完全防御カマクラを出そうと思ったけど、そんな時間が無い。

 5人の上空で羽も広げて、パラシュートのように氷柱を体で受け止めた。

 体のあちこちに氷柱が突き刺さった。


『攻撃スキル、氷河が使えるように成長しました』


 羽に攻撃されても覚えなかったけど、肉体に攻撃されたから、さすがにシヴァの攻撃スキルは覚えた。

 氷河というのは氷の上位互換だろうか?

 5人を庇ったつもりなのに、全ての氷柱を防ぎきれずに中年女性とミチコが怪我をしていた。

 田中のヒールで何とかはなる。だけどココから回復するまで動けないっぽい。

「完全防御カマクラ」

 5人を土のスキルで囲む。

 その上で氷河のスキルで2重に強度を上げておく。

 初めての氷河。

 ちょっと魔力を込めただけなのに岩のような氷が完全防御カマクラの土の上から覆っていった。

 


 シヴァを見るとコチラに巨大な氷の岩を発射させていた。

 本能でわかる。炎じゃ溶かしきれない。

 そっちが、その気なら俺だって岩を砕く攻撃をするだけ。

 青玉。

 氷河を尖らして、とんがりコーンのように氷を発射させる。あのシリーズの氷河バージョンである。

 岩のような氷を、俺の青玉が砕く。……いや、砕かない。

 俺の青玉が砕かれていく。 

 熟練度足らず。

 それじゃあ茶玉だ。

 茶玉も砕かれる。

 それじゃあ赤玉。

 赤玉も氷の岩に穴を開けただけだった。

 クソ。

 俺は上空で岩にぶつかった。

 避けてしまったら、みんなにぶつかる。

 完全防御カマクラスペシャルだって、こんなのぶつかったら壊れる。

 でも俺だって、こんなのにぶつかったら壊れてしまう。

 ヤバい。氷の岩を思いっきり押しても、押される。

 このままじゃあ、みんなで死んじゃう。

 おりゃぁあああああああ、と俺は氷の岩の軌道を必死に逸らす。

 どうじゃ。俺の本気。

 どうにかこうにか軌道を逸らすことに成功した。

 氷の岩が処女雪の上に落ちる。

 埃が舞うように雪が舞う。

 どうやってシヴァを倒そう?

 今の俺より強い。



 ここにいたらみんなに危害が行く。

 だから行きたくないけどシヴァのところに向かった。

 シヴァ様の目の前。

 見惚れるぐらいに美しい顔。

 こうなったら打撃だね。

 パンチをシヴァに喰らわそう。

 避けられもしなかった。

 俺のパンチが顔面に当たる。

 だけど効きもしなかった。

 顔面に当たった俺のパンチ。

 氷が庇うように出現して、防いだ。

 ナ◯トにもこんな奴いたよな。ナ◯トの場合は砂だったけど。

 これ、どうしたらええの? 絶対に勝たれへんやん、と俺は思う。もう絶望しすぎて関西弁になってしまった。

 パンチをしたことで俺に隙ができる。

 シヴァ様に殴られそうになった。

 だけど俺にはカンフーの軌道、というスキルがある。

 相手の打撃系の攻撃の軌道が見えるのだ。

 俺はシヴァのパンチを避ける。

 余裕だぜ。

 そう思っていたら尖った大きな氷柱が出現。

 慌てて上空に逃げる。

 氷柱が飛んで来る。

 鳥のように逃げる。

 狩人のようにシヴァが狙って来た。

 これどうしたらいいのよ?

 一旦、セーブポイントからやり直してレベル上げして、また来ようか?

 だけど、そんな事は現実の世界では出来ない。

 出来ないから相手より弱い俺は必死に逃げているだけ。

 飛んで逃げていたら目の前に大きな氷の壁が現れた。

 急に止まれませんぜ。

 ドリフよろしく俺が顔から壁にぶつかった。

 地上に落下していく。下からシヴァが大きな氷柱で攻撃してきた。

 俺のお腹に氷柱が貫通する。

 一本だけじゃない。

 何百本の氷柱が飛んで来る。

 急所だけは庇った。

 身体中、穴だらけ。

 白い雪が血まみれになる。

 雪の上に倒れた。

 どうやったら攻撃を食らわすことができる?

 氷だから炎と相性がいいはずなのに、シヴァは氷の上位互換である氷河である。

 俺の炎が効かない。

 それじゃあ俺だって氷河を使おう。

 熟練度が足りないのなら、別のモノで補えばいい。



 手に金属バットのような氷河を作り出す。

 そして、それを土のスキルで覆う。

 漫☆◯太郎先生の野球漫画に登場するような釘バットをイメージ。

 ワイの本気の野球を見せたる。これがワイの本気の野球じゃ。

 お手製、釘バッドでシヴァに攻撃。

 そんなんじゃ私にダメージを食らわすことができないですわよオホホと呑気な顔をしている。詳しく言うならシヴァに表情なんて無い。

 シヴァは攻撃を避けなかった。

 俺の攻撃が効かないと思っているのだ。

 攻撃されているのに、シヴァを次の攻撃を出そうとしている。今まで自分より強い奴と戦って来たことがないから、そんな怠慢な戦闘をしているんだろう。攻撃されたら防御。あるいは避ける。これ基本よ。シヴァさん。

 俺のお手製釘バッドの攻撃。

 打撃・強のスキルも重複している。

 たしか五倍の力になるんだっけ?

 シヴァを守るために現れた氷がバリン、と割れた。

 オリャアアアアアアアー。

 全力で振り切った。

 シヴァの顔面に当たる。

 無表情のシヴァが「えっ?」と驚いていたような気がした。

 シヴァが吹っ飛ぶ。

 大精霊って打撃でも効くんだ。

 倒れているシヴァのところに行く。

 顔面を潰すように何度も何度も釘バッドを振り下ろす。

 おりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ。

 気絶したっぽい。

 慌てて俺は別のスキルを使った。

「バク呑み」

 入れぇぇーーー。

 俺の左手にシヴァが吸い込まれて行く。


『シヴァを使役しました。召喚が可能になります』


 と知識の声が聞こえた。

 たしかスキルを調べた時に肉体を持たない精霊を吸収すれば召喚が可能になる、って言ってたっけ?

 シヴァ、ゲットだぜ。

『レベル84に成長しました』

『レベル85に成長しました』

 一気に2つもレベル上がったんだけど。

 どんなに経験値が多いんだよ。

 つーか気づかないうちにレベルも結構上がったな。

 俺は雪の上に倒れた。

 死ぬほど疲れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る